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 ふぅー、やっと肩の力が抜ける。ああいうところは苦手かもしれない。


 緊張感から解放され、俺はふと空を見上げる。

 装飾品屋には思ったよりも滞在していたようで、太陽がだいぶ高い位置へと昇っていた。そろそろ昼食にしても良いかもしれない。


 と、思いながら、とりあえずワズディンチェック。


「ワズディンさんは――あ、居ました」


 下着屋を出た時同様に、ワズディンさんは背中をこちらへ向け、時折顔だけ振り返って、俺達をチラチラ見ていた。


 予想通り居たな……。


 思っていた通りの行動でなので驚きはしないけど、やっぱり着いてくる気満々なんだなー。と呆れてしまう。


「クロハさん、ワズディンさんはこのままずっと着いてくると思いますか?」

「恐らくは」


 クロハさんもそう思うか……。

 かく言う俺もそう思う。

 多分クロストにいる間はずっとああしているに違いない。


「……見上げた根性ですね。正直、私は護衛など何かの方便に思っていました」


 クロハさんは感心したようにワズディンさんへと視線を移す。

 確かに、俺も護衛など方便で「ただ暇だから着いていきたい」とでもワズディンさんは考えているのだと思っていた。(いや、実際にそうかもしれないけど)

 けど、今のところの行動を見ると、『遠巻きから護衛』しているようにも見える。

 接触もしてこないしな。そこら辺の気遣いというか……一線は守っているかのように感じる。

 よく言えば誠実。悪く言えばストーカだけど。


「アリスお嬢様。一度は突っぱねた私が具申するのも変な話になりますが、ワズディンさんを同行させてはどうでしょうか?」


 クロハさんはワズディンさんの一連の行動を『誠実』と捉えたようだな。

 悪意は感じられないし、クロハさんが文句がないなら、今となっては断る理由はない。

 それに、何かあればクロハさんが対応してくれるだろう。


「わかりました。ワズディンさんの同行を許可します」 



 ◇◇◇



 依然として、ワズディンさんは頭を輝かせながら、白い壁の前に立ち、こちらをチラチラと窺ってくる。ワズディンさんを知らない人たちから見たら、ワズディンさんはどう映っているのだろう。


「おかーさん、あの人なんで壁の前に立っているの?」

「しー! 見ちゃ駄目! ほら行くわよ!」


 目の前を見知らぬ親子が通り過ぎる。

 ……やっぱり傍から見たら不審者だよな。


 ワズディンさんは端的に言うと悪目立ちしていた。

 明らかな奇行。よく見ると赤服兵隊さん達も警戒するようにチラチラワズディンさんを見ている。(過去に掴まっていたみたいだし、普段からマークされているのかもしれないけど)


 まあ……仕方ないよな……。

 事実、俺は先程の良悪で言うならばストーカ寄りの感情をさっきまで抱いていた。

 何故だか着いてくる(ストーキングしてくる)知り合い。恐怖でしかない。

 そこに護衛をしているという意識、いや、イメージか? ともかく良い印象を持ってる今だからこそ誤解なのだろうと考えられるが、他人から見たらそうじゃない。やっぱりワズディンさんは不審者に見えているのだ。


 そんな中、今俺は、ワズディンさん(不審者)に「一緒に同行しませんか」と声を掛けないといけない。……すごく話しかけづらい。と言うより(本音)知り合いだと思われたくない。


 そんな感じに俺は揺らぎに揺らいでいた。


「……声を掛けづらいです」

「あの頭がより悪目立ちを助長していますね」


 出会った時のワズディンさんだったらここまで目立っていなかったかもしれない。

 あの時のワズディンさんはどこにでも居そうなモブ冒険者だった。

 けれども、今のワズディンさんはハゲディンだ。

 頭部が太陽の光を受けて輝きまくっている。目立ちまくっている。

 ……ギルドでも注目の的(ワズディン談)らしいし、本当に振り切っているなー。……っと、今はどうでもいい話だ。


 前みたいにふさふさ頭……アフロディン(今作った)ならここまで視線を集めなかっただろうに……。(いや、アフロも目立つか? 光を放っていないだけマシだと思うけど)



 ざわざわ ざわざわ ざわざわ 



 ざわめきが徐々に大きくなる。


<通りすがり>

「ねぇ、なんか怪しくない」

「チラチラこっちを見てるよ」

「うおっ! 眩しい!」


<クロスト兵隊>

「おい、あの男。以前見たことがあるような気がするんだよな……」

「自分もそんな気がします」

「なんであんなところで突っ立ているんだ?」

「俺が知るか。不審だし捕まえるか?」


 それを聞いて俺は気づいてしまった。


 俺達が動いてないから、ワズディンさんも立ち止まらせているのではと――。


 一点に留まり続けているから目が自然とそちらへ向く。

 歩いているのであれば、「あ、ハゲだ」程度にしか思われないはずだ。

 ……現状を増長している原因の一因は俺達だった。


「クロハさん、移動しましょうか」

「お声がけしなくてよろしいのですか?」

「移動したらまた着いてくると思うので、人気(ひとけ)の少ない所で声を掛けます」

「なるほど……。かしこまりました。それではどちらへ」


 行き先は考えてある。

 俺が行こうと思っているのは――。


「パイ屋さんです」


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