表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/396

06

 

「……クロハさん! あれですか!」

「はい、あちらがヨツバ家のお屋敷になります」

「すごい~!」


 馬車の上から外を眺めると、まさしくお屋敷と言われて遜色ない立派な洋館が建っていました。


「それにあっちの湖もすごい~!」

「あちらはルベリア湖ですね」

「美しい湖畔があるって言ってましたけど、もしかして?」

「はい、ルベリア湖の事でございます」

「綺麗~!」


 美しい景色ばかりだな~興奮を隠しきれないや~


「ルベリア湖では、アーユという魚が穫れるんですが絶品ですよ」

「へぇー食べてみたいなー!」

「おすすめですよ。機会があれば是非召し上がってみてください。」

「はい~!」


 楽しい会話をしていると馬車がお屋敷の前に着きました。

 間近で見るとさらに凄いなー! 窓なんていくつあるんだろう?


「私は馬車を置いてきますから、こちらで待っていてもらえますか?」

「独りでは不安なので一緒に居たいです……」


 少し目を潤わせてクロハさんにお願いする。


「仕方ありませんね。一緒に行きましょうか」

「はい! ありがとうございますー!」

「だ、抱き着かれると危ないです!」

「えへへ」


 俺も段々この身体の使い方を分かってきた。

 この愛らしさ。それこそが俺の唯一の武器な気がする。

 生き残る(独りにならない)ためにはこうするしかない! 

 そう自分に言い聞かせる。……だが、抵抗がないわけではない。

 ……これ以上は考えるのは止そう。今はただ現実に向き合うしかない。


「どうかなさいましたか?」

「……何でもないよ! お屋敷楽しみだなー!」

「そうですか」

「…………」

「色々と不安で考えてしまうんでしょうが、安心してください」

「きっと悪いようにはなりませんから」

「だから心配しないでくださいね?」


 クロハさんが微笑みながらそっと髪を撫でてくれる。

 こそばゆい、だけど温かくて気持ちいい。


「……ぅっ、ずっと…ずっと不安で……」

「もう大丈夫です……安心してください」

「……ぅっ…ありがとうございます」


 自然と涙が出てしまう。だって仕方ないじゃないか。

 この世界に来て初めて、本当の意味で人の温かさに触れたんだから。


「随分可愛らしい子を連れているねー!」

「シロハ! 居たんですか?」


 涙を拭いながら下を見ると、クロハさんそっくりの白髪メイドさんが居ました。


「そりゃないよークロハお姉ちゃん! さっきからずっと声を掛けてたのにー」

「本当ですか? すみません、私としたことが気が付きませんでした……」

「珍しいよね? クロハお姉ちゃんがそんな風になるの!」

「クロハさん……その方は?」

「私と同じくヨツバ家でお仕えしている妹のシロハです」

「どうもー! 妹のシロハでーす! よろしくねっ、可愛らしいお嬢ちゃん!」

「はい、よろしくお願いします/////」


 さっきまでのやり取りを見られていたのか……。恥ずかしくて思わず赤面してしまう。

 それにしても、姉妹にしてはそっくりだな? 双子か何かなのかな?


「そういえばシロハ、どうしてここに?」

「そんなことよりー、その子は誰? どこかのご令嬢?」

「いえ、私が保護したお客人です」

「ふ~ん? そうなんだー」

「そうだシロハ」

「私の代わりに荷物と馬車を置いて来て欲しいのだけれども、いいかしら?」

「えー、やだよ! シロハもその子とイチャイチャしたい!」

「私はお嬢様にこの子の事を色々話さなければならないの!」

「仕方ないなー! これは貸しだよー」

「覚えておきます。それではお願いね?」

「任せなさいー!」


 俺とクロハさんは馬車を降り、シロハさんを見送る。


「それではお屋敷の中に参りましょうか」

「はい、クロハさん!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ