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廊下をタタタと前のめりに歩きながら俺は考えていた。
―――どうすれば気絶せずに済むだろう?
「お風呂ー!」
「………………」
裸を見たら間違いなく今まで同様に気絶する自信がある(確信)
だからと言ってお風呂なわけだ。裸は避けられない。
肌色100%→目視→気絶……を我慢!→接触→ダメダッタヨ……(気絶)。
駄目だ……未来が見えてしまった。俺はどうあがいても気絶する。
なんて脳内未来視ごっこをしていると浴場の扉の前。
「さーて! 脱がせるよー!」
扉を開けて俺を押し込むやいなや、シロハさんは手をワナワナさせながらにじり寄ってくる。
だが諦めというか、悟りというか、抵抗という二文字ですっかり頭の外になっていた俺は、当然のごとく無抵抗だった。アイアムZHENRA!
「よーし! 行くよー!」
声と共にシロハさんのメイド服が某怪盗三世みたいに一瞬で脱げ落ちる。
メイド服って、そんなことが出来るんですね。知らなかったやー。
シロハさんは再び手を引き、浴場へと俺を誘う。
「ハイ、イマイキマス」
意識しない。空白。それこそ俺の答え。
見てるんだけど見ていない。
聞いているけど聞いていない。
どうでもいいことをひたすら考えることにより、目前への反応を極端に薄くする。
作戦名。校長の長話はどうでもいいこと考えていると終わってる作戦!
………長いな。あと校長は限りなく関係ないし、分かりにくい。
そうだな……浴場で欲情しないためにはどうでもいいこと考える作戦、に改名しよう!
……親父ギャグな上にさっきより長くなっているよ。救いようがないな。
―――とまで適当に思案して意識を現実に戻すと、俺はシロハさんに頭を洗ってもらっていた。
「痒いところはないー?」
「ダイジョウブデスヨ」
背中に柔らかい何かが当たっていたような気がしたので再び脳内シェルターに逃げ込む。
続きだ! 続きを考えよう!!
……浴場で欲情はやめよう。うん、事実だけど親父ギャグはさすがに無いな。
欲情阻止作戦。漢字でまとまって感じがいい!
…………………どうやら俺は親父ギャグが言いたいだけらしい。
救いようがないな。でも欲情阻止作戦は採用しよう。六文字、うん、素晴らしい短さだ。
「はいー! ぴっかぴかだよー! 湯船に入ろうかー!」
「ハイ、ソウデスネ」
「ラビも入るんだよ!」
「ラビ! 走ると危ないですよ!」
「私も……………………入る」
おおっと!!! 気づくとみんなも入って来ていた!?
肌色がー!! 肌色がーー!!
桃色パラダイス~♪ はっ! 俺はいったい……。
気づいたらボーッと魅入っていた。
見てる場合じゃない! 何か考えないと!!
後……湯気! お前仕事しろよ!!
「ふぅ~~、極楽なんだよ~~」
「ラビはおばあちゃんみたいだねー!」
「ソウデスネ」
「お似合い………………………」
「ムキー!! 全然似合っていないんだよ!!」
「浴槽で暴れちゃ駄目ですよ」
イノリお姉ちゃんにからかわれたラビが、イノリお姉ちゃんにお湯を浴びせかける。
それに「むぅ……」と言いたげな表情をしたイノリお姉ちゃんが同じく反撃。
間でクロハさんが皇帝スライム2体を揺らして窘める。
「何するんだよ!」
「お返し………………………」
「イノリお嬢様、おやめください! あとラビも!」(バインバイン)
脳内でバインバインと聞こえた気がした。
はっ! 俺は何を考えて!? それよりがっつり見てしまっている!?
俺はそっと目を閉じた。
「アリスお嬢様ー! 浴槽で寝ちゃだめだよー!」
「余程疲れていらっしゃったのですね」
「イマ、オキマシタ」
勘違いされたので目を開ける。
気絶したとは思われなかったのだろうか。
露骨に強く目を瞑っていたのかな?
仕方ないので思考の世界へ再びDA・I・BU。
じゃぶーん☆彡
顔面にお湯を掛けられた。
「バーカ! イノリのバーカ!」
「馬鹿は……………………ラビ」
「いつまで喧嘩しているんですか!!」
思わず俺は立ち上がり二人を一喝!
「……………………」
「…………………」
すると二人は黙ってこちらを見つめる。
それを見ていた俺は二人の裸を見つめる。
…………俺は何事もなかったかのように座った。
具体的にいうと体育座りをした。もっと具体的にいうとひざで顔を隠した。
ブクブクブ.。o○
「ご主人様ー!」
「アリス…………………」
シグナルレッド!
双肩に主張の少ない(けど確かにある!)球体が接敵!
俺の意識メータが見る見る内に減っていく!
意識■■■■■■□□□□
4割減少! まだだ! まだ俺はやれる(保てる)!
脳内でひたすら円周率を浮かべる―――
3.1415……ええい! 分からん! π! おπ!
意識■■■■□□□□□□
脳内「半分を切りました」
意識「このままじゃ!」
理性「π! π! おπ!」
アリス「理性さん! 死んでください!」
いや、理性が死ぬのはまずいだろう……。死んだら暴走だ。変態になってしまう。
「アリスお嬢様が困っていますよ」
「ほらほら二人とも離れてー!」
脳内「敵勢力の撤退を確認」
意識「……何とか持ちこたえたか、ふぅー」
理性「………………ちっ」
アリス「舌打ち!?」
意識■■□□□□□□□□
「そろそろ上がりましょうか」
「うん…………………」
「ご飯が待っているんだよ!」
「走ると危ないよー!」
「…………(危なかったです……)」
こうして、俺は初めて気絶することなく浴場(欲情)を乗り切ったのだった。茶番閉幕。




