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 クロハさんは宝箱の上や周りに積もったウッドランだったもの(人間大の木)をどかすため近寄る。しかし途中で何かに気づいたのか立ち止まる。


「どうしたんですか、クロハさん?」

「いえ、多分これは……」


 言いながらクロハさんは、しゃがんでウッドランの死骸に触れる。

 そして手をベトベトにしてこちらに振り返る。


「スライムの死骸ですね」

「え? 道中にスライムはいませんでしたよね?」

「確かにいなかったんだよ」


 俺は首を傾げながらクロハさんに疑問をこぼす。

 ここまではウッドランしか遭遇してないはずだ。

 なのになんでスライムの死骸が?


「……………」


 まさか宝箱の中身がスライムの死骸まみれで、ウッドランがぶつかった衝撃で中身が隙間から出てきたとかか? だとしたらここまで歩いてきた意味が…‥。

 俺は露骨にがっかりしながら半分は覆い隠されている宝箱を見つめる。

 するとシロハさんが何かを考えついたかのように声をあげる。


「あっー! もしかして入り口にたくさんあったスライムの死骸じゃないかなー!」

「ここまで押し出して来たってことなの?」

「あり得ますね」

「なるほど!」


 あり得る気がする。というよりそうであってほしい。

 草の丈的に見ただけではスライムの死骸があっても気づけないしな。

 色も同じ緑だし、風で常に飛ばし続けてきたんだ。

 ここまで気づかなかったのも納得できる。

 その確率は高そうだ。


「もしくは道中にスライムが居たがウッドランに当たって倒されたとかですかね」

「宝箱からスライムの死骸が溢れ出た可能性もあるんだよ!」


 ラビも初めに俺が考えた可能性を口に出す。

 もしそうだとしたら、ラビも怒り心頭になるだろう。


「とにかく実際にどかしてみて確認するしかないねー!」

「……そうです! 早くどかしてみましょう!」


 そう言いながら俺は宝箱に近づいて……止まる。

 本能的にスライムの死骸に触りたくないと思ったからだ。

 我ながら情けな……くない! 

 よくよく考えればあんな重たそうな物、今の俺が持てる訳ない。

 つまりスライムの死骸が付いていようがなかろうが関係ないのだ!

 ……誰に言い訳してるんだろう、俺。


「さすがに滑ってどかしにくいねー!」

「むむむ! まともに掴めないんだよ……」

「これは手作業は厳しいですね」


 そう言いながら三人は一旦宝箱から離れる。

 どうやらどかすのに時間がかかりそうだな(未作業)


「こうなったらもう一回風で吹き飛ばすんだよ!」

「それが良いかもしれませんね」

「だねー! せめて上に被さってるやつだけでもどかせれば開けられしねー!」

「ラビ! やっちゃってください!」


 俺の声にラビは目を輝かせて「任せるんだよ!」と答えて再び宝箱に向き合う。

 そして指を輝かせ風魔法を行使した。


「エアブロー!」


 ドドド!!!

 ドン! ドドドドドドドド!

 パキッパキ―――


 音を立てながら宝箱の上に積み重なったウッドランだったものが崩れ落ちる。

 途中、枝葉が折れて細かい木片が地面に落ちていったが、風によって全て壁の縁へと追いやられていった。


「隅っこが抹茶より緑色です……」


 ひたすら緑が濃縮されている。

 壁本来の緑(蔦)スライムの死骸(緑色)ウッドランの葉っぱ。

 緑ばっかり集まってもはや黒に近い。突き詰めるとああなるのかな?


「なんやかんやで全部片付いたねー!」

「宝箱も心なしか綺麗になってますね」


 二人の声に気づいて視点を隅から宝箱に移すと全て片付いていた。

 宝箱の周りのは石っころ一つ落ちていないし。

 クロハさんの言う通り、宝箱が新品みたいにつやつやしている。

 スライムがワックスみたいになったのだろうか?

 まあ、そんなことはどうでもいいか。


「掃除は完了なんだよ!」

「お疲れ様です!」


 ラビはえっへんと胸を張りながら得意げに宝箱の前に立つ。

 頑張ったので駆け寄って頭を撫でてあげるとラビの顔が真っ赤になった。

 うんなことはどうでもいい。そんなことより宝箱……うん、大丈夫そうだ。

 特に亀裂などは見られないし、中身がスライムの死骸まみれで溢れた説は無さそうだな。


「じゃあ、さっそく開けてみましょうか」

「何が入っているのかなー!」


 二人も近づいて宝箱の前に立つ。

 いつも通り俺は宝箱に手を伸ばす。

 あれだけ積み重なっていたしミミックの心配はないだろう。

 さて、何が入っているかなー。

 俺は宝箱に手を掛ける。

 微妙に滑るな…‥。ベトベトした感じは全くないから別にけど。

 手こずりながらも宝箱は無事開かれる。中身は……。


「……本です」

「本だねー!」

「本なんだよ」

「本ですね」


 各々、『本』という感想を漏らして宝箱の中身を見つめる。

 タイトルはついてない。緑色の革のシンプルな本だ。

 とりあえず手に取って持って見る。


「ラビ? これは魔具ですか?」

「ちょっと貸して欲しんだよ」


 俺はラビに緑色の本を手渡す。

 何となく雰囲気がある。どうなんだろう?

 本を受け取ったラビはページをパラパラとめくりだす。

 そして少し頭を悩まして結論を出した。


「これ……多分魔具なんだよ!」

「ほ、本当ですか!」

「うん、ただ使い方がわかんないだよ」


 そう言ってラビは本をバタンと閉じる。

 使い方がわからない? けど、魔具ではあるってこと?

 つまり………!


「まあ、見た感じ魔具には間違いないと思うんだよ」


 一瞬、静寂。けどすぐに笑顔で―――


「ついに魔具ゲットです!!」


 ひたすら喜ぶ!!

 ついに魔具を手に入れた!!

 これでやっとイノリお姉ちゃんに報いることが出来る!


「おめでとうございます。アリスお嬢様」

「おめでとうー! アリスお嬢様ー!」

「お、おめでとうなんだよ!」

「ありがとうございます!」


 使い方がわからないのが気になるが、魔具屋のおじいさんに見てもらえばきっと解決だろう。よかった……。本当によかった……。



 ひとしきり喜んで―――数分後。


「目的のものも手に入りましたし、後は遺跡を出るだけですね」

「はい!」

「よーし! 次は青い地面探しだー!」

「戻るんだよ!」


 こうして無事魔具を手に入れられた俺たちは隠し路を引き返して青い地面を探し始めるのだった。


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