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 歩こう。

 そう思って踏み出した足に、短くなった草の先端がチクリとくすぐる。

 切れ味が良すぎだ。よく見ると綺麗に斬り揃えられた草むらがブラシみたいになっている。

 歩きづらいな……。


 テクテクテク


「……こそばゆい」


 歩くたびに擦れ、足が痒みに襲われる。

 草も先程までと比べ、だいぶ短くなったのは事実だ。

 けれども根元からバッサリと斬られている訳ではないので中途半端に残っている。

 長さで言うとくるぶしちょい上。

 視界も開けているし……問題は無いのだけど……。


「どうしたのー? アリスお嬢様ー!」

「くすぐったくて、歩きにくいです!」


 そう訴えながらクロハさんとラビの方を見る。

 風で草をなぎ倒しているのでチクチクが無くて快適そうだ。

 俺もあっちを歩きたい。


「あははー! 確かにねー! 多分その内慣れるよー!」

「本当にそうだといいんですけど……」


 そう言われるとごもっともなので、もう一歩踏み出す。むず痒い。

 何とも言えない中途半端なくすぐり。

 我慢できなくはない。確かにシロハさんの言う通り慣れれば大丈夫だとは思う。

 けど……現状は変わって無いんです! 死活問題なんです!

 女の子の身体なので変な声を出したくなくても出ちゃんです!

「ひゃあ!」「あっ…」「んぅ」 等々。

 自分の身体でもないのに複雑極まりない。

 俺はあの子の身体でこんな声を出したくなーい!!


「……っん」


 精神的攻撃を草むらから受けていると、1時方向に位置する草の壁が、もぞもぞ近づいてるのが見える。


「シロハさん! あそこに何かいますよ!」

「本当だー! ちょっと待っててねー!」


 指をさして場所を伝えると、シロハさんは草をかき分けて、もぞもぞに近づいていく。

 何かいるのだろうか? モンスターかな? 

 そう思いながらどんなモンスターがいるか頭に思い浮かべてみる。


「………………」


 俺が知っている限りではこの草むらより小さいのはリスコウモリぐらいだな。

 でもあれ飛んでるし違うか?

 見知らぬモンスターかな?


「終わったよー!」


 気づくとシロハさんがこちらへ向かって来ていた。

 あのもぞもぞはなんだったのだろう。


「シロハさん、あのもぞもぞは何だったんですか?」

「んー、アジーンリスだったよー!」

「アジーンリス?」

「うんー! アジーン遺跡にいるリスー! 略してアジーンリスー!」


 どうやらリスがいたらしい。

 リスコウモリの羽が無いバージョンかな?

 それにしてもアジーンリスとは安直なネーミングだな。


「そのリスはどうしたんですか?」

「もちろん倒したよー! だから安心してねー!」


 あっ……。

 気にするのは止そう。

 普通のリスを頭に浮かべた俺が悪い。


「進みましょうか!」

「そうだねー!」



 ◇◇◇



 進むこと30分(体感)。

 スライムの群れが吹き飛ばされるのを目撃した。


「飛んでるねー!」

「飛んでます……」


 緑色のスライムが次々に宙を飛び回っている。

 周りが緑ばかりで見にくいはずなのに凄く目立っている。

 なんだろう……。思わず見入ってしまう。


「……あっ!」


 飛んで行ったスライムを追うよう見ていると―――。

 ―――壁に叩きつけられてグチャグチャになった。

 ひどい光景だ。壁がねちょんねちょん。樹液みたい……。


「ラビはすごいねー!」

「そうですね……」


 スライムを飛ばしていたのはラビだった。

 草を倒すのに使っていた魔具をスライムを吹き飛ばすのに使っているようだ。

 ウッドランも吹き飛ばしていたし……今更だけどホントすごい。


「また飛んでったねー!」


 傍から見ると楽しそうだがスライムから見たら恐怖でしかないだろう。

 本当に凄いなあの指輪。あっ、また飛んでった。


「あー! アリスお嬢様ー! あの壁、道があるよー!」


 シロハさんの声に釣られてスライムが飛ばされまくっている壁を見ると、


「本当です! 道があります!」


 スライムぶつかった衝撃でだろうか? 道が出来ていた。

 正確には、隠されていた道が露わになったと言ったところだろうか。


「行こー!」

「はい!」


 隠された道と言えば、やっぱり宝箱。

 ……期待大だ!



 ◇◇◇



 スライムが飛ばなくなるのを見計らって俺とシロハさんは壁に近寄る。

 クロハさん達にはあえて隠し路のことを言わなかった。

(近づくのが怖かった。俺まで飛ばされかねない!)

 なのでシロハさんと俺だけで向かった。


「アリスお嬢様ー! 本当に言わなくてよかったのー?」

「はい! パパっとお宝回収です!」


 そう言いながら俺は壁の少し離れたところで立ち止まる。

 うわぁ……。これは無理だ。


「どうしたのー? 急に立ち止まってー?」

「やっぱり二人を呼びましょう! 離れすぎるのもよくないですからね!」


 そう言いながら俺は来た道へ踵を返す。


「そうだねー! そうしようー!」


 俺の前に出てシロハさんもクロハさんの見える方へ進む。

 ……あれはさすがに通りたくないからな! 素直に従ってくれて助かる!


 壁によると当然のごとくスライムまみれだった。

 考えれば当たり前だった。宝箱に目がくらんで行こうとした俺が馬鹿だった。

 あんなところへ足を踏み入れたくない。

 服だって汚れるし、何よりスライムに触れたくない。

 ラビに吹き飛ばしてもらわないと!


「クロハお姉ちゃんー! 隠し路を見つけたよー!」


 ついでに言うと、近寄らないでも呼びかければよかったんだな……。

 考え無し過ぎだ俺……。

 そう思いながら俺達は、クロハさん達と合流するのだった。


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