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~第18階層~
『はずれ』に苛立ちながら来た道を戻り赤い地面に入って俺たちは第18階層へと足早に飛んだ。
地面に足が付く感触がすると足が少しくすぐったい。
疑問に思いながら足元を見ると、ひざ下まで地面の草が伸びていた。
むず痒さに目を細めるながら壁も見ると蔦がぎっしり。ほとんど壁の素の部分が見えないほどだった。
「軽く草むらです……」
「アリスお嬢様、この階層からは草トラップがありますのでお気をつけくださいね」
「草トラップ? ですか?」
俺は頭の上にはてなを浮かべる。
草トラップ? 確かトラップは無いって言ってなかったっけ?
「はい。草を結って輪っか状にしたものです」
「そんなものがあるんですか……」
小学生のいたずらか!
あれって足を引っかけて転ぶと結構痛いんだよなー。
「はい。そこらかしこにありますよ。ですので先程までの階層以上に足元を気を付けてくださいね」
「はい! 気をつけます!」
足元に注意しながら遺跡内を進んでいく。
先行するシロハさん達も移動するペースが落ちている。
自然のトラップ……恐るべし。
「こっちに草トラップがあるから気を付けるんだよ!」
「こっちにもあるよー! 気を付けてねー!」
「はい!」
本当にそこらかしこにあるんだ……。
そう思いながら歩いていると俺も一つ見つけた。
危ない危ない。転ぶところだった。
そう安堵していると前方からカサカサする音が聞こえてくる。
「モンスター! なんだよ!」
「ウッドランが3体ー! こっちに向かってきてるよー!」
振り向いてラビとシロハさんの方を見ると、草むらをかき分けてウッドランがこちらに走って来ている。
「クロハさん! ウッドランは転ばないんですか!? 勢いが落ちてないですよ!」
「移動しながら草トラップを引きちぎりますからね。多分転ばないと思いますよ」
俺が驚きながらに質問するとクロハさんは平然と答えた。
「なら大丈夫なんですか!? シロハさん達は動けないじゃないですか!?」
「落ち着いてください、アリスお嬢様。大丈夫ですよ」
心配する俺を安心させるように、クロハさんの声音は落ち着いていた。
ほ、本当に大丈夫なのかな?
そう思いながらシロハさん達を見るが、ウッドランと向き合っているため表情はわからない。二人は迫りくるウッドランをただただ見据えて立ち止まっている。
「………………そろそろなんだよ!」
「やるよー!」
二人に向かってウッドランがぶつかった! と思ったら二人ともジャンプをしてウッドランの体当たりを躱していた。
「よかった~。って、クロハさん! 今度はこっちに来てますよ!」
ウッドランたちはシロハさん達に躱されたことを気にすることなく、後方に居た俺たちの方へとツッコんでくる。このままじゃ俺がぶつかる!
「安心してください。すぐに片付けます」
声に振り向くとクロハさんはウッドラン達に向かって手を向けていた。
「アイシクルレイン!」
クロハさんが唱えると、ウッドランの群れに向かって氷の礫が降り注ぐ。
それを受けてウッドランは体中に穴をあけ、跡形もなく消えて行った。
「もう大丈夫ですよ。アリスお嬢様」
「魔法を使うなら使うと言ってください! ひやひやしました……」
「クロハお姉ちゃん流石だねー!」
「跡形もなくとは驚いたんだよ!」
ラビとシロハさんはわかっていたのか声だけであんまり驚いていなかった。
冒険者同士だけが通じていたと言ったところだろうか?
心臓に悪い……。
ウッドランが迫りくると思ったらすごく怖かった。
もう弱そうとかは思えない……。
「申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
「はい……。大丈夫です、ってあわわ!」
答えながらクロハさんに近寄ろうとして足元の草トラップに躓く。
そう言えばあったな!
そう思いながら地面にザバーン。
「痛たた……」
「アリスお嬢様!」
転んだ俺を見て、急いでクロハさんが駆け寄ってくる。
少し恥ずかしい。俺は服に着いた草を払いながら立ち上がる。
「あはは……こけちゃいました」
笑って誤魔化す俺を見てクロハさんは胸を撫で下ろす。
「安心しました。申し訳ありません、私が不注意なばかりに」
「い、いえ! 私の不注意です! むしろ恥ずかしいので忘れてください!」
「ご主人様ー! 大丈夫なの?」
「大丈夫ー? アリスお嬢様ー!」
俺に気づいた二人もわざわざ駆け寄ってくる。
なんか大事みたいになっちゃった。
「だ、大丈夫です! それより先に行きましょう!」
これ以上心配されるのも居たたまれないので足を前へと進める。
「あ、ラビが先に行くんだよ」
「先頭はシロハだよー!」
そう言いながら走って二人は俺を追い越す。
というより謎の競争を始めた。
「なんで競争ですか……、というより転ばないのが不思議です」
「ウッドランが草トラップを粗方片付けてくれましたからね。多分、もうほとんど草トラップは無いと思いますよ」
あっ! だからシロハさん達は限界まで引き付けていたんだ。納得だ!
「私達も行きましょうか?」
「そうですね」
走りゆくシロハさんとラビをゆっくりと追いかけながら、俺とクロハさんは先に進んだ。




