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~第16階層~
第16階層に飛ばされると第15階層と同じように緑が目につく。
ただ少しだけ違うところがある。緑の量だ。
壁にまとわりつく蔦の量も増えているし、足元の芝も先程までと踏み心地が違う。
なんとなく沈む踏むと感じ。柔らかい草のクッション?
「クロハさん! なんだか緑が増えてませんか?」
「増えていますよ。階層が増すにつれどんどん増えていきますね」
どうやら勘違いではないらしい。
一階層増えただけでこれなのだ。次はどうなっているのだろう。
まあ、この階層で魔具を見つけてしまえば関係ないか。
「アリスお嬢様ー! 行くよー!」
「進むんだよ!」
声に振り向くと二人は既に歩き始めていた。
俺も急いでついて行こうと一歩踏み出すが足元が柔らかいのでおぼつか無い。
「歩きにくいですね」
「ゆっくりでいいですよ。足元に気を付けてください」
先行く二人の背中を見ると俺を配慮してなのか歩みが遅かった。
多分俺に合わせてくれているのだろう。申し訳ない。
無理してペースを上げても転ぶだけなので一歩一歩を踏みしめるように歩く。
「モンスターなんだよ! ウッドラン3!」
前方を見ると小さくウッドランが近づいているのがわかる。
細かく芝が舞って音を立てながらだ。
なんでこの足場で走れるのだろう……。
モンスターだからか? そう思うとシロハさんがウッドランより早く走り出した。
「片付けるよー!」
ウッドランと同じように芝を舞わせる。
すごい速度だ。そう思うのも束の間、シロハさんは跳躍した。
高さにして3メートルほどだろうか?
走った勢いのまま飛んだので身体が前のめりだ。
「いっくよー!」
シロハさんは声と共に空中で一回転。
そのまま先頭を走るウッドランに勢いのまま飛び蹴りした。
「シロハキックー!」
ウッドランが吹き飛んだ。
「…………」
他のウッドランの動きが止まった。
止まることが出来るんだ。
てっきりマグロ的な何かだと思った。止まると死ぬみたいな。
ウッドマンに動揺が走る。よくわからないが走るしか能がないのだろう。
止まってしまったのでどうしようか迷っている。
「カモだねー!」
隙だらけのウッドランにシロハさんはナイフで一閃。
ウッドランは倒れた。
取り残された残り一体ウッドランと目が合う。
ウッドマンに目なんてものはないが何となく合った気がした。
こちらに向かって来――来る前にシロハさんが倒した。
「よーし! 終わったよー!」
なんか可哀そうだった。
まあ気にしてもしょうがない。
「先に進みましょうか」
「はい!」
「こっちに道があるんだよ」
ラビの声に振り向くと確かに蔦壁に空洞があった。
隠されている感じがするし、宝箱とかありそうだ。
「お手柄です! ラビ!」
「照れるんだよ~!」
「そちらに向かいましょうか」
「ちょっと待っててねー!」
シロハさんは蔦を切り裂き道を作る。
道幅は2メートルほどだろうか。だいぶ狭いな。
モンスターが出てきたら戦闘しにくそうだ。
「行こうかー!」
「GOー! なんだよ!」
けれどもシロハさん達は躊躇わない。
先に進んでいった。
「クロハさん、後ろからモンスターが押し寄せたりとかしないですよね?」
「その時は吹き飛ばしますのでご安心ください」
なら安心だ。色んな意味でぶっ飛んでるけど……。
ともかく俺は躊躇わずに細道へと入っていった。
◇◇◇
細道に入ると若干薄暗かった。
けれども前方を歩くシロハさんやラビが見えないということはない。
「少し暗いですね……」
「光石が苔に埋もれていますね」
壁周りを見ると苔がべっとりと張り付いていた。
これが光石に張り付いて阻害しているんだろう。
ちなみに光石はその名の通り光る石だ。
遺跡内でもそこらかしこに落ちている。一応……魔具らしい。
らしいと言うのも初めて遺跡を訪れた時にクロハさんが言っていたからだ。
冒険者が暗い遺跡内を明るく照らすために置いて行った松明みたいなもの。
個人的には魔具とは認めていない。だってこれを魔具と認めたくないし……。
道端に落ちている冒険者の便利アイテム。そんなところだ。
「アリスお嬢様ー! 宝箱があるよー!」
進むこと五分(体感)シロハさんが宝箱を見つけたようだ。
「行き止まりなんだよ」
「どうやら宝箱だけおいてあるようですね」
細道は真っ直ぐな一本道だった。
進み切ると行き止まりに宝箱がポツリと置いてある。
苔が僅かに絡まりついて誰も開けたことがないみたいな雰囲気を感じさせる。
「期待できますね!」
シロハさんは道端に小石が無いか探す。しかし無いようで変わりにナイフを投擲した。
「大丈夫みたいだねー!」
言いながらシロハさんはナイフを拾う。
反応はない。ミミックでは無いようだ。
「ご主人様! 開けていいんだよ!」
「任せてください!」
苔に手を滑らせながら宝箱を開ける。
さて! 中身は何かなー!
「……石?」
薄暗くてよくわからないが石が入っていた。
手に持って見ると赤色の石だった。
手のひらサイズ。丸石。
半透明で光に当てると赤が映る。
「もしかして魔具!」
「う~ん、判断が難しんだよ」
俺が魔具を見つけたと思って喜んでいるとラビは難しい顔で赤い石を見る。
それを真似するようにクロハさんとシロハさんも見てくる。
「普通の宝石かもしれませんね」
「かもねー!」
見分けがつかない。そんなところだろうか?
まあ、遺跡から出た時に魔具屋のおじいさんに見てもらえばいいか。
俺はポケットに丸石をしまった。
「行き止まりだし戻ろうかー!」
「そうですね」
俺達は来た道を引き返した。




