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 傾く太陽と黄昏色の空を眺めながら馬車に乗ってお屋敷に向かっていたが、到着するころにはすっかり辺りは暗くなっていた。


「ただいまなんだよ!」

「あっ! おかえりー!」


 ラビが屋敷の扉を勢いよく開けると、たまたま居たシロハさんにお出迎えしてもらえる。


「ただいまです」

「ただいま…………………………」

「二人もおかえりー!」


 ちなみにイロハさんは馬車を片付けに言っている。

 なので先に俺達だけで屋敷に入っていった。


「買い物はどうだったー?」

「ちゃんとできたんだよ!」


 ラビはそれだけ告げると厨房の方へ走っていく。

 どうやら早く料理が作りたいらしい。


「ラビット様は元気だねー!」

「つかれた……………………」

「私も少しだけ……」


 イノリお姉ちゃんと俺はゆっくりと歩いて厨房に向かっていく。

 ラビは本当に元気だなー。


「ご主人様! 早く早く!」

「そんなに急がなくても……」

「ラビ…………………速い」


 ゾンビみたいに歩くイノリお姉ちゃんに気づいて俺は立ち止まる。けれどもラビは一度急かして振り向いただけで厨房へと先に向かって行ってしまった。


「体力馬鹿……………………」

「ははは……」


 イノリお姉ちゃんが体力なさすぎ、とは言えないので愛想笑いでかわす。

 ラビは普段から遺跡探索をしてんだし、あの体力は当然なんだろう。

 そんなことを考えながらイノリお姉ちゃんとよちよち歩いていると厨房に着いた。



 ~厨房~


「おかえりなさいませ、イノリお嬢様、アリスお嬢様」


 厨房に入るとクロハさんが包丁を手に料理をしていた。

 ラビはというとクロハの調理を見学しているようだ。


「クロハは何を作ってるの?」

「本日の夕食のチキンソテーです。ラビット様はお好きですか?」

「うん! 私は大好きなんだよ!」


 ラビはまな板の上の鶏肉を眺めながら、嬉々として喜ぶ。

 それを聞いて「おいしく作りますね」とクロハさんは微笑む。


「お待たせしました」


 声のほうに振り向くと紙袋を抱えたイロハさんが部屋に入ってくる。

 揃ったことだしこっちも調理開始かな。


「こっちも美味しいのを作るんだよ!」



 ◇◇◇



 クロハさんの邪魔をしないように別の一角の方へ移り、ラビが買ってきた食材を広げる。キャベツ2個。じゃがいも6個。玉ねぎ3個。ブロッコリー2個。ニンジン2個。ソーセージ12本。ちゃんと買えていたみたいだ。


「まずは手を洗いましょうか」


 ラビは石鹸で手を洗う。俺たちも調理するわけではないが、帰って来てから洗っていなかったので一緒に洗おう。


「つぎは野菜を洗ってもらいます」

「任せるんだよ!」


 ラビはじゃがいもを手に取り、石鹸で――「ストップです! 石鹸では洗いません!」

 もしかしたら洗うのかもしれないが反射的に止める。


「? そうなの?」

「アリスお嬢様の言う通りです」


 寸でのところで何とか止めることに成功する。

 危なっかしいなー。


「水洗いでお願いします」

「わ、わかったんだよ!」


 じゃがいも。ニンジン。玉ねぎ。ブロッコリー。キャベツと順番に水洗いを終わらせていく。

 言われたことはちゃんと出来るけど、ちゃんと教えないと駄目っぽいな。


「終わったんだよ!」

「つぎは野菜の皮をむいてもらいます。お手本を見せますので隣で真似をしてください」

「わ、わかったんだよ!」


 ラビはイロハさんの隣に並んで包丁を手にする。

 なんだか怖いな……。指とか切らないといいけど。


「ラビ……………………危なげ」

「ですね……、大丈夫でしょうか」


 ラビはイロハさんの真似をするように野菜の皮をむいていく。

 しかしその手つきはイロハさんと比べるとやっぱり拙くて遅い。

 だが、何とか仕事はこなせているようだ。


「む、難しんだよ」

「じゃがいもはこうして持った方がいいですよ」


 イロハさんの指示のもと何とか全ての野菜の皮をむき終える。

 指も切ることも無かった。よかったよかった。


「終わりましたね。次はカットしていきます」

「い、意外と大変なんだよ……」


 フレンチトーストの時と比べているのだろう。

 あの時はそもそも包丁を使わなかったもんな。


「ニンジンは乱切りに――」

「乱切り?」

「真似してもらうほうが早いですね」


 皮むき同様、イロハさんは隣でお手本を披露する。

 それを見てさっきまでの皮むきと比べて簡単そうに思ったのだろう。目にやる気が戻る。


「やってみるんだよ!」


 トントントン


 軽快な包丁の音と共に綺麗に野菜が切られていく。

 ラビの顔を見ると楽しそうだ。

 途中鼻歌まじりになっている。


「終わったんだよ!」

「では、次はこの鍋にソーセージとブロッコリー以外を入れていってください」


 イロハさんは琥珀色のスープが入った鍋を持ってくる。

 どうやらクロハさんが準備をしていたようだ。


「どんどん入れるんだよ!」

「跳ねないように気を付けてください」


 ラビは野菜たちを鍋にゆっくりと入れていく。

 掃除の時みたいに慎重にだ。

 正直もう少し早く入れてもいいと思う。


「ラビ! そんなにゆっくりじゃなくてもいいんだよ!」

「わ、わかったんだよ!」


 俺の言葉を聞いてラビは投入するペースを上げる。


「入れ終わったんだよ!」

「ではこのまま少し煮込んでから残りの食材を入れましょうか」

「また暇になりますね」

「クロハの方…………………見る」


 ~15分経過~


「そろそろですね。入れていってください」

「どんどん入れるんだよ」


 ぐつぐつと煮立つ鍋に残りのソーセージとブロッコリーを投入していく。

 もう少しで完成かな。良い匂いだしお腹がすいてきた。

 この後も少し煮込んで味を染み込ませて3分ほど待つ。


「そろそろですね」


 イロハさんが味見をしてOKサインが出る。

 どうやら完成のようだ。


「美味しく出来てますよ。ラビット様も味見しますか?」

「うん!」


 お玉で小皿に掬い、ラビに手渡す。

 それをラビは口に含むと目を輝かせる。


「美味しいんだよ!」

「それでは更に盛り付けましょうか」


 ラビ達は皿にポトフをよそう。

 早く食べたいし、先に座って待つとするか。


「イノリお姉ちゃん、私たちは座って待ってましょう」

「うん……………………」

「すぐにお持ちしますね」


 厨房に漂う良い匂いに胸を膨らませながら俺たちはダイニングルームで待機する。

 そしてしばらくするとラビたちがやってくる。


「お待たせなんだよ!」


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