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第1回ラビをどうするか会議を終え、イロハさんはラビを連れて何処かへ去っていた。早速メイドの体験させるのだろうか? 実際どんなことをするのか気になるなー。そんなことを思いながら、イノリお姉ちゃん達とゆっくりお喋りしていると二人が戻ってくる。
「ご主人様ー! 見て欲しんだよー!」
扉を乱暴に開けて部屋に入ってきたラビがこちらへ駆け寄り、目の前でくるりと回る。
恰好をみるとメイド姿だった。
なるほど着替えに行っていたのか。
「ご主人様! メイド服なんだよ! すごいんだよ!」
「おお…似合ってます」
「やったー! 褒められたんだよ!」
馬子にも衣裳と言ったところだろうか。
サイズもぴったしだし、見た目だけなら遜色ないメイドだ。
それにしても……よくそのサイズのメイド服があったな。
「ラビ………………………似合ってる」
「そうですね。とてもお似合いですよ」
「かわいいねー!」
見た目だけなら全員べた褒め。
イロハさんもゆっくりこちらに歩きながら柔らかく微笑んでいる。
だが、重要なのは仕事が出来るかどうかだ。見た目ではない!
「私も…………………………」
「え? どうしてんですかイノリお姉ちゃん?」
「メイド服……………………………着る」
ラビへの対抗心だろうか?
イノリお姉ちゃんもメイド服をご所望のようだ。
「いけませんイノリお嬢様。主にメイドの真似事をさせるなど」
イロハさんは当然と言わんばかりに止める。
しかしイノリお姉ちゃんは諦めない。
「着るだけ………………………仕事はしない」
「……かしこまりました。それではこちらへ」
これ以上止めても無駄だと悟ったのか、イロハさんは困った顔をしつつもイノリお姉ちゃんを連れて部屋を出ていく。ラビ同様に着替えさせるためだろう。
「ねえねえー! アリスお嬢様はメイド服を着ないのー!」
「私もご主人様のメイド服姿を見たいんだよー!」
「シロハ! それにラビット様も、アリスお嬢様が困ってしまいますよ」
流れで俺にまでメイド服を着ないのかと勧めてくる。
クロハさんは一応言葉では止めてくれているが、少しばかり期待するようにこちらを見てくる。本心では着て欲しいんですね。物凄く伝わります。
「わかりました……私も着替えます」
「それではご案内しますね!」
やっぱり期待していたのだろう。クロハさんがいち早く俺をイロハさん達の居る部屋に連れて行く。そのあまりの行動力に「「えっ? クロハ(お姉ちゃん)は反対じゃ……」」と二人とも驚いていたほどだ。何はともあれ、俺はメイド服姿に着替えさせられるのだった。
◇◇◇
「ご主人様も似合っているんだよ! (自分と比較して)」
「イノリお嬢様も負けてないよー! (アリスと比較して)」
「あはは……ありがとうございます」
「メイド服………………………悪くない」
部屋で待っていた二人に俺とイノリお姉ちゃんはメイド服姿をお披露目。どうやら好評のようだ。
実際、着替えるときに鏡で自分の姿を見たが、かなり似合っていたし、横でクロハさんも「可愛らしくて素敵です」とべた褒めしてくれてた。中身は男なので複雑な気分ではあったけど……まあ、いいだろう。
それにしても部屋にメイドしか居ないのも変な感じだ。普段から過半数以上がメイド服姿なわけだけれども、メイドしか居ない空間というのも違和感しかないな。みんなの姿を見渡しながら、しみじみ思う。
「お嬢様方も満足していただけようですし、早速ラビット様にメイドの体験をしてもらいましょうか」
「頑張るんだよー!」
イロハさんは「まずは皿洗いからです」とラビを連れて厨房のほうへ向かっていく。はたしてラビがちゃんと皿洗いできるのだろうか? 気になるな。
「クロハさん! 私、ラビのメイドのお仕事見学がしたいです!」
「見学ですか?」
「はい! もちろん見るだけです! 邪魔はしませんので!」
さっき主に働かせるわけにはいかない的なことを言っていたからな。
見るだけだったら大丈夫だろう。
「アリス…………………ナイスアイデア」
「面白そうだねー!」
二人も賛同してくれる。
するとクロハさんは「構いませんよ」とOKをくれた。
~厨房~
厨房の扉を開けるとガッシャーン! と明らかに皿が割れる音が聞こえた。
「ラビット様! 大丈夫ですか!?」
「て、手がすべちゃったんだよ!」
音の方へ向かってみると、おろおろしながら割れた皿を拾っているラビが居た。
開始早々、皿を落として割っていたようだ。
「危ないですよ! 私が拾いますので!」
「わ、私が落としたから私が拾うんだよ!」
イロハさんとラビはこちらに気づかず割れた皿を拾い続ける。
「あの……大丈夫ですか?」
「ご主人様! 危ないから近づいちゃ駄目なんだよ!」
「アリスお嬢様! 危ないので近づいてはいけません!」
声を掛けると二人はこちらに気づき、ほぼ同時に俺に注意を呼びかける。
「わ、わかりました!」
大人しく見守ろう。
そう思っているとクロハさんが箒と塵取りのようなものを持ってきていた。
「ラビット様、お下がりください」
「で、でも!」
「危ないからねー! ここは任せてー!」
シロハさんが塵取りを携え、クロハさんが箒でまとめる。
イロハさんは厚手の布で床の細かい破片を集める。
「あまりお気になさらないでくださいね」
「そうだよー! シロハもたまに割るからねー!」
「ご、ごめんなさいなんだよ……」
しょんぼりした顔のラビを見かねたのか「皿洗いはクロハに任せますので別の仕事を致しましょうか」とイロハさんがラビの手を引き移動する。
「大丈夫なのかな……」
「心配………………………」
そう思いながらイノリお姉ちゃんと一緒に後ろを着いて行くのだった。




