02
『…………っぅ…お兄ちゃん……』
「……大丈夫だよ?ここにいるよ」
あれから少女は泣き疲れて眠ってしまった。
聞きたいことは山ほどあるが、わざわざ起こすのも野暮というものだろう。
「さて……どうしよう」
目の前は相変わらず見知らぬ空間。右も左も分からない。
だが、興味がないわけではない。探索してみたい。
けれども、この子を置いていく訳にはいかないしな……
「……そうだ!」
眠っている少女を起こさないように背負う。
「軽いな……それに柔らかい」
『……っぅ………』
「イカン!イカン!こんな幼気な子に俺は一体何を考えているだ!」
煩悩を払拭しようと、とにかく足を進める。
動くたびにむしろ背中に身体が密着するが気にしてはいけない。
『……っぅ………』
「……なんだろう?」
遠目に明らかに目立つ赤色の扉が見える。
気になるので近づいてみる。きっと何かあるに違いない。
「やっぱり扉だ……なんでこんな所に」
高さは2m程、片開式でドアノブに鍵穴などもない。
どこにでもある、赤色のシンプルな扉だ。
「気になるな……少しだけ覗いてみようかな?」
中を見るぐらいなら大丈夫だろう。
軽い気持ちで扉を開ける。
すると次の瞬間、吸い込められるように眩い光に包まれる。
「……なんだこれはっ!?」
眩しさの余り思わず片手で目を遮る。
その時にバランスを崩し、少女の身体が大きく揺れてしまう
『……っぅ……う?』
だが、不測の事態にどうしていいか分からない。
ただ、片手で顔を遮りながら固まる。
『……っ!…お兄ちゃん!扉から離れて!』
少女が背中から飛び降り、必死に俺を後ろに引っ張ろうとする。
しかし、扉の吸い込む力が強すぎて、まともに動くことが出来ない。
『…お兄ちゃん……頑張って…っ』
「ごめん!でも身体が……」
このままどうなってしまうのだろう?
軽い気持ちで扉を開けなければよかったと後悔する。
『ごめんなさいお兄ちゃん!…もう……駄目みたい…』
後ろから引っ張られる感覚がなくなる。
代わりに腰当たりに強く抱きしめられる感触が伝わる。
『お兄ちゃんは……私が必ず守るから…だから…待っててね』
掠れて聞こえる少女の声と共に、俺は扉の中へ吸い込まれてしまった。