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~魔具屋~
チャリ~ン
「ふぉふぉふぉ、いらっしゃい」
「こんにちは! おじいさん!」
あの後クロハさんとシロハさんに事情を話してクロストに連れてきてもらった。目的はもちろん遺跡で手に入れた王冠について聞くためだ。
「相変わらずスゴイ数の魔具だねー!」
「先日と比べて新しい魔具も増えていますね」
ついて来てもらった二人は店内で魔具を眺めている。
待たせるのも悪いしさっさと要件を済ませよう。
「おじいさん! 今日はお願いがあって来ました!」
「ふぉふぉふぉ、どんなお願いかのう?」
「この王冠がどんな魔法が使えるのか教えて欲しいです!」
王冠をおじいさんに手渡す。
するとおじいさんは、「少し待ってておくれ」と王冠を一旦俺に返し、店の奥へと行ってしまう。何かあったのだろうか?
「待たせたのう」
「いえ、全然」
「それでのう……残念ながらそれは魔法を使えん」
「え!?」
俺が驚いていると王冠を見せられる。
おそらく店の奥に行ったのはこれを取ってきたからだろう。
それにしてもどういうことだ? この王冠、俺の持ってきた王冠と瓜二つだ!
「この王冠は皇帝スライムのドロップアイテムじゃろう?」
「先日買い取ったからのう、魔法が使えんことは確認しとる」
「つまり……」
「これは魔具ではないのう」
衝撃の事実が発覚!
どうやらこの王冠は魔具ではないそうです!!
ってことは……どうなる?
「で、でも買い取ったってことは魔法が使える可能性も!」
「残念ながらないのう」
「この王冠の売り主が複数の魔具とまとめてに売りに来てのう、その時に押し付けられたのじゃ」
「装飾品屋で売ればそこそこの金になるのにのう、人の話も聞かず店を出ていきおったわい」
どうやらこの王冠はどうあがいても魔具ではないらしい。
ただのレアアイテム。魔法は使えない。それが結論だ。
「一般的な装飾品としての価値はあるがのう、魔具としての価値はないのが結論じゃ」
「そうですか……」
「あららー、魔具じゃなかったのかー」
「申し訳ありません。私が期待させるようなことを言ってしまったばっかりに、アリスお嬢様をがっかりさせてしまいました」
「いえ、仕方ないですよ!」
勝手に魔具だと思い込んでいたのはこちらだ。
あの時クロハさんはあくまで可能性があると言っていたのだ。
それを鵜呑みにしていたこっちの落ち度だ。むしろ謝らせてしまって申し訳ない。
「それにしてもイノリお嬢様にどう説明しようかー?」
「相当期待しておられましたからね……」
「やっぱり……知ったらがっかりしますよね」
不測の事態に頭を悩ませる。
いっそこの王冠を売ってしまい、魔具を買う!
そんなことが思いついたが、それでは意味がないだろう。
この王冠はいわば遺跡での思い出の品。
簡単に売り渡そうと考えてしまった自分を恥じる。
こうなったらお屋敷に戻って正直に言うしかない。そうしよう。
「私、正直に話します!」
「まあ、結局それが一番かもねー!」
「そうですね。こうなってしまっては仕方ありません」
「ふぉふぉふぉ、若いのう~」
少し恥ずかしいやり取りを見られてしまった。
それにしても同じ王冠を売りに来る人がいたなんて意外だ。
その人も皇帝スライムを倒したのだろうか?
だとしたら相当の腕利きな気がする。
「店主。いくつかお尋ねしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ふぉふぉふぉ、かまわん。儂にわかることならのう」
「その王冠と魔具を買い取られたのは先日とおっしゃられておりましたが、具体的にはどのぐらい前ですか?」
「昨日の夕方くらいかのう」
「なるほど。その王冠を売りに来ていた者の特徴を教えてくださいませんか?」
「どうしてそんなことを聞くのー?」
シロハさんの言う通り、どうしてそんなことを聞くのだろうか?
その売りに来た人と知り合いなのかな?
「いえ、遺跡での『はずれ』は明らかにおかしかったので、タイミング的にその者が関わっているかと思いまして」
「なるほどねー!」
「どういうことですか?」
クロハさん曰く、複数の魔具に王冠。それが昨日売られたというのが気になるらしい。
魔具は希少なものなので、遺跡内を余程探索しないと複数なんてとても見つからないこと。
皇帝スライムのドロップアイテムの王冠があることから、それらの魔具がノーリ遺跡で集められたと考えられること。
俺たちが遺跡探索をした日付と被っていること。
以上の事柄から、その売り主が『はずれ』を入れていた可能性があるとのことだ。
「なるほど……確かに怪しいですね」
王冠を手に入れた喜びですっかり忘れていたが、宝箱に『はずれ』をぶち込んだ不届きものに報復してやろうと思っていたな。
「お嬢様方を不快にさせたのもありますが、元冒険者としてお灸をすえさせたいです」
「ワズディンさんなんか、あれだけのトラップを駆け抜けて『はずれ』だったからねー」
「ふぉふぉふぉ、事情はわかったが客の情報をベラベラしゃべるのものう」
やはり客商売なのでみだりには喋れないのだろう。
おじいさんは困ったように口ごもる。
だが、だからと言って引くわけにはいかない!
俺の既に報復してやりたいモードなのだ!
こうなったら必殺技を使うしかあるまい!
「おじいさん、お願い♡ 誰にも言わないから♡」
抱き着きながらの上目づかい+涙目!
果たしてこのお願い……断れるかな!
「仕方ないのう~」
簡単に堕ちた。やはりこの可愛さの前には敵なしだな!
おじいさんは年甲斐もなくニヤケ顔になっている。
正直そんなおじいさんは見たくなかった……が、これも報復のためだ。
「それでどんな人だったんですか?」
「フードを被っておったからのう、身なりまでは分からんかったが女じゃった」
「背丈はお嬢ちゃんぐらいだったのう。後は……指輪の魔具を両手にびっしりつけておった」
「私ぐらいの背丈の女で両手に指輪がびっしり……」
「覚えておるのはそれぐらいじゃのう」
「なるほど、それでしたらすぐに見つかりそうですね」
「アリスお嬢様と同じぐらいの背丈の冒険者なんて中々いないだろうしねー!」
どうやら探せばすぐに見つかりそうだ。
それにしても俺と同じくらいの背丈という事は子供なのだろうか?
まあ、単に身長が低いだけかもしれないが
「とりあえずお屋敷に一度戻りましょうか、王冠の件もお話しないといけませんし」
「ふぉふぉふぉ、また魔具で何かあれば来ておくれ」
「はい! その時はよろしくお願いします!」
こうして俺たちは魔具屋を後にし、一旦お屋敷に戻った。




