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~第20階層~
「最終階層だー!」
ついに来てしまった第20階層。ここまで来たらもう後が無い。
この階層で見つけられなければ完全に無駄骨になってしまう。
「ここまで来たら意地でも倒すぞ!」
ワズディンさんがやる気で満ち溢れている。
先程までのトラップ三昧でボロボロだったのが嘘のようだ。
それにしても倒すってなんだ? 宝箱を探すのを頑張って欲しい。
「とにかく頑張ります!」
「頑張る………………」
必ず見つけてみせる! と、二人して意気込む。
するとクロハさんとイロハさんが気まずそうな顔をしている。
何かあったのだろうか?
「クロハさん、何かあったのですか?」
「いえ、ここまで来た以上お話しなければならない事がありまして」
非常に言いにくそうにしている。
余程のことなのだろうか?
「実は、この階層には宝箱が置いて無いんです」
「……へ?」
思わず変な声が出てしまった。
宝箱が置いて無い? そんな馬鹿な!
「嘘ですよね?」
信じたくなくて、思わず聞いてしまう。
クロハさんが嘘を言うような人じゃないと分かっているのにだ。
「いえ、残念ながら本当です」
申し訳なさそうな顔で答える。
「じゃ、じゃあ、もう魔具は手に入らないんですか」
「いえ、まだ可能性はあります」
宝箱も無いのにどうやって? 他に手段があるのかな。
黄色の地面に入ってランダムな階層に飛んでやり直す?
俺にはそんなことしか思いつかない。
だが、クロハさんの口から告げられたものは、想像の斜め上だった。
「この階層の主、皇帝スライムを倒した後のドロップ品」
「それが魔具の可能性があります」
「皇帝スライム?」
クロハさん曰く、この第20階層には、階層主と呼ばれる特殊なモンスターがいるらしい。
そのモンスターを倒すと、アイテムが何か一つドロップする。
ドロップアイテムは一定ではなく毎回ランダムなわけだが、
中には魔具が出る可能性もあるとのことだ。
「じゃあその、皇帝スライムを倒せば!」
「恐らくは手に入るかと」
なるほど! だからワズディンさんも見つけるじゃなくて倒すと言っていたのか!
納得だ。だが、そういうことはもっと早く言って欲しかった。
そうすれば気落ちする必要もなかったのに。
横を見るとイロハさんもイノリお姉ちゃんに同じような説明をしている。
「必ずや倒してみせます」
「うん…………………」
どうやら向こうも話が終わったようだ。
打倒皇帝スライム! と言わんばかりの顔をしている。
俺たちは戦えないから見ているだけになるけどね。
「おいおい、嬢ちゃん達! 早く来てくれ!」
「先に倒しちゃうよー!」
気づくと大きな両開きの扉の前で二人が待っている。
恐らくはあそこが階層主の部屋だろう。
「今行きます!」
◇◇◇
部屋に入ると大きな王冠をつけた全長10メートルほどのスライムが待ち受けていた。
で、でかい! 本当にこんな大きなスライムに勝てるのだろうか。
「久しぶりに見たけど大きいねー!」
「いざ目にすると震えてくるぜ……」
余裕そうなシロハさんと対照的に、ワズディンさんは身体を震わせる。
無理もない、あれだけ巨大なのだから気持ちはわかる。
「大きい………………」
「イノリお姉ちゃん近づいちゃだめです!」
興味を持ったのか皇帝スライムに近づこうとするイノリお姉ちゃんを止める。
あんなのに近づいたりしたら踏みつぶされて死んじゃうぞ!
「うおおお!!!」
一番最初に攻撃を仕掛けたのは意外にもワズディンさんだった。
震える身体を押さえながら巨大な敵に立ち向かう!
シチュエーション的には最高にカッコイイ!
だが、すぐに皇帝スライムの体内に取り込まれてしまった。カッコ悪い。
「タ、タズゲテグレ~」
「あららー! 大丈夫?」
そう言って次にシロハさんが攻撃を仕掛ける。
皇帝スライムの頭上に大きく跳躍し、王冠の上にスタンプ!
皇帝スライムは押しつぶされるように変形し、ワズディンさんが押し出される。
「はぁはぁ~、助かったぜ!」
「無事に何よりだよー!」
今の攻撃で皇帝スライムが怒ったのだろう。
こちらに向かって跳ねながら向かってくる!
「揺れる………………」
「立ってられないです」
皇帝スライムが跳ねる度に地面が大きく揺れる。
まるで地震みたいだ!
俺達は尻もちをついて動けなくなる。
このままじゃまずい!
バシュ、バシュ
クロスボウの発射音と共に皇帝スライムの動きが止まる。
見上げると両目玉にクロスボウの矢が刺さってた。
あんなに足元が揺れるなかで当てたのか! 凄すぎる!
「こちらへお下がりください」
「はい!」
「うん………………」
皇帝スライムからだいぶ離れた所へ案内される。
俺たちは必死に走って、イロハさんについて行った。
「ここまで離れれば大丈夫ですね」
「はぁはぁ…」
「走るの苦手…………………」
二人して息を切らしながら皇帝スライムを眺める。
目玉こそ潰したもの、その大きな身体は健在だ。
「そう言えばクロハさんは?」
「クロハ………………」
皇帝スライムの周りを見渡すとクロハさんの姿が見えない。
まさか押しつぶされてしまったんじゃ……
「心配しなくても大丈夫ですよ、クロハなら上に居ますよ」
「上?」
見上げると黒く光る翼で飛んでいるクロハさんが見える。
と、飛んでいる! なんなんだあれは!?
「クロウウイング。クロハの飛行魔法です」
「飛行魔法!? そんな魔法まであるんだ……」
「クロハ……………鳥みたい」
皇帝スライムそっちのけでクロハさんに視線が釘付けになってしまう。
なんていうか……綺麗だ。その一言に尽きる。
見惚れていると稲妻がクロハさんの元に集まり始める。
「シロハ! ワズディンさん! 下がってください!」
「りょうかいー!」
「下がる? って! 飛んでる!?」
クロハさんの姿に気づいて二人は一目散で逃げ出す。
やっぱり飛んでいるのは驚きだよな……。
再び視線をクロハさんに戻すと稲妻は収束して槍のようになっていた。
「雷の槍?」
「そうだよー!」
気づいたらシロハさんが隣に!
ワズディンさんはまだ走っているよ!
「ライトニングランス!」
クロハさんがそう唱えると、巨大な雷の槍が皇帝スライムに向かって飛んでいく。
「終わりましたね」
「終わったねー!」
二人がそう言うと同時に、皇帝スライムの巨大な躰は眩い光とともに消し飛んだ。
一瞬。一瞬だった。瞬きをしていたら終わっていた。
「今のは一体……」
「見えなかった……………」
二人して惚けていると、クロハさんが皇帝スライムの居た場所へと飛んでいく。
「私達も行きましょうか」
「何があるかなー!」
唖然としながらも二人に着いて行く。
って、そうだ! ドロップアイテム! 何がドロップしたのだろう。
そんなことを思いながらもクロハさん達の元に合流する。
「イノリお嬢様、アリスお嬢様、こちらがドロップアイテムでございます」
「へへへ、やったな嬢ちゃん達!」
「これは……」
「王冠…………………」
色とりどりの宝石が埋め込まれた王冠を渡される。
なんだかとても希少そうだ!
「やりましたね! イノリお姉ちゃん!」
「うん………………嬉しい」
遺跡に来てからやっと魔具を手に入れられた!
それにしてもこの王冠、どんな魔法が使えるのだろう!
「おめでとうございます」
「やったねー!」
「無事手に入れられて何よりです」
それを聞いてやっと終わったのだと実感する。
「ありがとうございます!」
「みんなのお陰…………………」
王冠を手にした喜びに浸っていると、離れたところから声が聞こえてくる。
「おーい!」
声の方に振り向くと、青く光る地面の前にワズディンさんは立っていた。
「無事念願の物も手に入れられたし、帰るぞー!」
「はい!」
こうして俺たちはノーリ遺跡探索を無事に終え、帰還したのだった。




