01
目を開けるとそこは見知らぬ空間だった。
「ここは一体……」
先程まで会社で書類の山に追われていたはず?
俺は夢でも見ているのだろうか? それにしてはリアルだ……
『ようこそお兄ちゃん!会いたかったよ』
「君は……」
長い金髪に青い瞳。整った顔立ちで身長は140cm程かな?
フリルのドレスが凄く似合っていて可愛らしい少女がそこに立っていた。
「もしかして君……が?」
『そうだよ!私がお兄ちゃんを呼んだんよっ!』
嬉しそうに駆け寄り、俺を抱きしめてくる。
すると控えめな柔らかい2つの物体が当たり何とも言えなくなる。
『どうしたの?お兄ちゃん?』
「いや……どうしたらいいのか分からなくて」
上目遣いでこちらを必死に見上げる姿が可愛い。
いや、そんなことを考えている場合ではない。
とりあえず離れよう。これ以上はなんか……いけない気がする。
『お兄ちゃん?』
「とりあえず一旦離れて。聞きたいことがあるんだ。」
『もうちょっとだけ……駄目?』
「じゃあ、もう少しだけだよ?」
『うん!ありがとう!お兄ちゃん!』
口に指を当て、うるうるとお願いされて断れる奴がいるだろうか?
俺は少なくとも断れなかった。
『このままで聞いてね、お兄ちゃん……』
「うん、いいよ」
胸の当たりに埋められた頭を優しく撫でる。
どうしてだろう? 自然とそうしていた。
『お兄ちゃんはね……死んじゃったの』
「……え?」
『だから、元の世界には戻れないの……ごめんね』
「……いいよ。むしろありがとう」
『え?』
瞳に涙を浮かべながら、不思議そうにこちらを見上げる。
「頑張らなくていいと言ってくれて……嬉しかった」
「俺……あの一言で救われたんだ」
「今まであんなに優しい言葉を掛けられたことがなかったから……」
「だから…っ…嬉しくて……っ」
気づけば俺も泣いていた。どうしてだろう? 涙が止まらない……
『お兄ちゃん……?』
「だから……本当に……本当に…っ……ありがとう」
『……っ…お兄ちゃん!』
細い腕で、より一層強く抱きしめてくれる。
気づいたら俺の方からも抱きしめていて、二人して泣いていた。