15
「ただいま戻りました!」
「うん……………おかえり」
俺は、お屋敷に帰ってから真っ先に、イノリお姉ちゃんの部屋を訪れた。
理由はもちろん、クロストでの土産話をしたかったからだ。
「見てください! これ!」
「指輪のネックレス………………?」
自慢げに貰ったばかりの指輪を見せつける。
我ながらやっていることが子供だなと思う。
でも仕方ないよね。それだけ衝撃的だったんだから!
「はい! 魔具屋のおじいさんから貰いました!」
「魔具…………………?」
「はい! 魔法が使える道具です!」
俺は得意げにクロストで会ったおじいさんの話やそこでの出来事を話した。
特に姿が消えるマントの話などは、力が入り過ぎだったと思うほど話していた。
「楽しそう……………」
「楽しかったですよ!」
実際楽しかった! 自分の知りえない体験はドキドキするしワクワクした。
そんな風に目を輝かせながら話しているとイノリお姉ちゃんも興味を持ってくれたようだ。
「遺跡…………………行ってみたい」
「私も行ってみたいです!」
「なら…………………行こう」
「本当ですか!!」
「決定…………………」
やったー! と、この時はイノリお姉ちゃんと絶対に行こうね! と話していたけど……。
~夕食、皆が集まるダイニングルーム~
「遺跡に行く…………………」
「駄目です。お考え直しください」
イロハさんに止められてしまいました。
助けを求めようと、クロハさんとシロハさんの方を見ると二人とも頭を抱えながら、こちらを見向きもしません。
「どうして駄目…………………」
「遺跡が危険だからです」
イロハさんが言うには、遺跡にはモンスターや魔物が住み着いているらしい。
だから、そんな危険なところには行かせられないとのことだ。
それにしてもモンスターや魔物! そんなものがこの世界には居たのか!?
俺は遺跡に行く行かないよりそっちの方が気になってしまう。
「モンスターや魔物が出るんですか!」
「はい、ですから危険ですのでお考え直し下さい」
「………………………」
「イノリお姉ちゃん……」
俺はイノリお姉ちゃんに諦めるよう目で訴えかける。
危険を冒してまで行くのは、悪いと思ったからだ。
だが、そんな俺の気持ちとは裏腹にイノリお姉ちゃんは決心したような顔をする。
「冒険者を………………雇う」
「冒険者?」
冒険者ってなんだろう。遺跡の中を探検しているひとかな。
そう考えながら首を傾げていたが、二人ともお互いを見つめあい、答えは返ってこなかった。
「お嬢様は、そこまでして行きたいのですか?」
「うん………………行きたい」
仕方がないのでクロハさんにこっそり聞くと、冒険者ギルドというものがあるらしい。
何でも、そこに依頼金を払ってクエスト依頼を出すと、冒険者を雇うことが出来るようだ。
何だかゲームの世界の話みたいだな。魔具を見た後なので驚きは少ないが。
「……分かりました。私の方でギルドに依頼を出しておきます」
「うん……………任せる」
どうやら遺跡行きは決定したようだ。
モンスター、魔物、つまり危険がいっぱい。
俺……、大丈夫かな……。
そんなことを考えていると、クロハさんとシロハさんは食事を手早く済ませて部屋を出て行ってしまう。
「あららー、決まっちゃったかー」
「仕方ありませんね、シロハ準備しましょう」
「準備?」
◇◇◇
~3日後、クロストの冒険者ギルド前~
「アンタらが今回の依頼主か! 俺はワズディンだ、よろしく頼む!」
「ヨツバ家のイロハと申します、本日はよろしくお願いします」
如何にも冒険者といった感じの、剣をぶら下げた男が現れる。
それにしてもあの男の人、どこかで見た事あるような気がする。
「それにしても助かったぜ! この前、うっかりゴミを落としちまってよ、罰金をたんまり払わされて金欠だったんだ。ホントいいタイミングで依頼が来たぜ」
「シロハ、あの男」
「うん、あの時兵隊に追われてた人だねー!」
そうか! あの時の兵隊さんに追われていた可哀そうな人だ。
なるほど、通りで見覚えがあるわけだ。
「依頼内容は、遺跡内での護衛との事だが、間違いないか」
「はい、間違いありません」
「それにしても、俺は本当に必要なのか? 見た限りアンタたち相当の手練れだろう」
この男の言う事は、的を得ているかもしれません。
だって3人の姿を見ると……。
黒いローブに杖を携え、いかにも魔法使いな雰囲気を醸し出しているクロハさん。
たくさんの短剣を携えて、いかにも身軽なシーフの恰好をしたシロハさん。
姿こそメイド姿のままだが、クロスボウを携えているイロハさん。
傍から見た物凄く強そうだ……。男の人も僅かに萎縮している。
もしかしてあの時の準備って、このことだったのか。
「皆さん強そうですね」
「うん………………初めて見た」
どうやらイノリお姉ちゃんも知らなかったらしく驚いた顔をしている。
まさかあんな一面があっただなんて……。格好に違和感がない。
何だろう、こちらが普段通りの恰好なのが、むしろ恥ずかしくなってきた。
「護衛対象が2人いますからね。念のためにです」
「それに前衛職がシロハ独りだけでは不安でしたから」
「そんなことないよー! 余裕だよー!」
「なるほど、そういうわけか、了解した」
護衛対象、つまり俺とイノリお姉ちゃんのことだろう。
行きたいと言い出したきっかけを作った手前、もう後に引くことが出来ないが、こちら側としては恐らく何もせずにただ守られるだけだろうから、何だか申し訳ない。
「それで、どこの遺跡に行くんだい、8つ全て行くとかは勘弁してくれよ」
まあ、行ける訳ないけどな、と冗談混じりに笑う。
聞きながらルベリアには8つも遺跡があることを知る。
有名とは聞いていたけど、そんなにあるなんてビックリだ!
「一番安全なノーリ遺跡でお願いします」
「あいよ、じゃあそろそろ向かおう」
そう言うとワズディンさんは、待たせていた馬車に乗り込む。
どうやら行き先はノーリ遺跡と言うらしい。
一番安全と言っているし、何もないと良いが……。
あっ! でも、魔具とかは見つかるといいなー!
そんなことを考えていると早く馬車に乗るように急かされる。
「私達も乗りましょうか」
「うん………………」
「はい!」
こうして、俺たちは馬車に乗り、初の遺跡探索へと赴いていった。




