プロローグ
「いくらなんでもこの仕事の量は無理ですよ!」
社畜生活も今思えば3年目。
現在時刻は深夜2時を回っている。
総社員数たったの5人。しかし残って仕事をしているのは俺ただ1人。
働き始めの頃は優しかった先輩も、今では俺に仕事を押しつけてご帰宅だ。
「せめて自分の仕事だけはきっちりやってくれよ……」
愚痴りながらも手を動かす、どれだけやっても終わらない。
終わりは見えない、希望もない、あるのは書類の山。
「もう駄目だ……いっそのこと」
諦めかけたその時だった。その声が聞こえてきたのは
『もう頑張らなくていいんだよ』
『君は充分に頑張ったね!えらいよ!』
きっと幻聴だろう……だけど、『頑張らなくていい』なんて言われたのは初めてだ。
「あぁ……そうか俺もう頑張らなくていいのか」
心が少し楽になる。俺もこんな風に誰か励ます側の人間になりたかったなぁ……
『お兄ちゃんならなれるよ!』
『だから……行こう!一緒に!』
「一緒に……?でもどこへ?……もう俺には逃げ場なんて……」
この仕事が終わらなければきっと俺はクビだ。
社宅のボロアパートからも追い出されて行く当ても無くなる。
『ならおいでよ!私の世界に!』
「いいのか……?」
『いいよ。お兄ちゃんは頑張ったもん!』
『だから……おいで!』
「ありがとう……、ありがとう……」
そう呟きながら俺の視界はブラックアウトするのだった。