愛されなかった悲しみは海の色
愛されることはないと分かっていた。
一方的な片思いだった。
一緒に育った幼馴染は、姉を愛した。
痛いほどそれは分かっていた。
姉を見つめる視線、言葉、行動、どれを取っても私には与えられないもの。
姉にだけ与えられるものだった。
私の恋心は知った瞬間に叶わないと知ったのだ。
悲しみが心を満たし、同時に諦めも心を満たした。
姉は私から見ても最高の女だ。
美しく、優しく、聡明。
誰もが憧れる存在。
そんな姉に敵うわけがない。
幼馴染が想いを寄せるように、姉も幼馴染に想いを寄せていた。
「おめでとう、お姉ちゃん」
二人が一緒になると分かったとき、私は笑った。
幸せそうに笑う姉。
悲しみに暮れる私。
なんて対照的なのだろう。
私は二人の前で泣くことは許されない。
この気持ちは知られてはならないものだから。
私は一生懸命微笑み、祝福した。
幸せになりますように、と。
純白に輝く姉を羨み、目を閉じた。
もうこれ以上は絶える事は出来なかった。
私は一人式場を抜け出し、泣いた。
愛されなかった悲しみに震えた。
ああ、人魚姫のように泡になってしまえたら、どんなに楽だろうか…!
唇をかみ締め、声を殺し、自分を掻き抱いた。
そうしてこの悲しみが心から流れてしまうまで、泣いた。




