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多種族ばかりの傭兵団  作者: 竹永
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ジャハーヌと出会った後

「うぅ……」

「あ、起きた?」

「……うん?」


俺が目を覚ました時、目の前に胸があった。

何だか頭がズキズキする。体勢を変えて横を向くと、ここがホームのリビングであることが分かった。

俺はどうやらソファの上で横になっているらしい。誰かにひざまくらをしてもらった状態で。


「……ジャハーヌか」

「そうよ」


大きな胸で顔が見えないが、逆に言えばそれのおかげでひざまくらの相手がわかった。


「……なんで俺はひざまくらをされてるんだ?」

「あら、覚えてないの? ペンテがあんたを階段から引きずってきたのよ」

「……ああ、思い出した」


そうだ、俺は朝飯を早く食べたいにペンテに叩き起こされ、そのまま足を引っ張られて階段を下されたのだ。


俺が気を失ったのは、果たして何段目に頭をぶつけてからだろうか。頭がズキズキするのはそのせいだろう。


「ペンテは?」

「いま、トモエが中庭でお説教中、あの様子だとあと2時間はいくわね」


ということは、おそらく朝飯は抜きだな。ペンテにはそれくらいがいい薬かもしれない。アイツは時々加減を忘れるからな。


俺はソファから降りて立ち上がる。

頭はまだ鈍く痛むが、我慢できない程じゃない。


「……そうだ、ジャハーヌ、ちょうど前の事を思い出してた」

「前の事?」

「お前と初めて会った時のことだ」

「ああ、あの時の……そんな前でもないじゃない」


確かに一か月も前のことじゃない。しかし、この世界にきて一日一日がとても濃く感じている俺にとって、あの時のことはすでにかなり昔の事のように思えてくる。


「そういえば、結局あの時の報酬は払ってなかったな」

「もういいわよ別に、今さらだし」

「意外だな、こういうのはきっちりするタイプだと思ったが」

「私、他人には厳しいけど身内には甘いタイプなの、あんたじゃなかったらちゃんと取り立ててるわ」


そういうことをはっきり宣言するのもどうかと思うが、だた、あまり悪い気はしない。


「それよりもちゃんと今夜のこと忘れるんじゃないわよ」

「分かってる、もう忘れないから」


昨日はジャハーヌとの約束をすっぽかしてしまった。


『仕事終わりに一緒に飲む』

ジャハーヌがうちの団に入ってからずっと続けてきたことだ。

時々トモエも交えて三人で飲むこともあるが、基本的には俺とジャハーヌのサシ飲みである。


ジャハーヌは器量もいいし、気の良いやつなので、一緒に飲むこと自体は良いのだけど、ただちょっとばかし酒癖……これはあまり適当な表現ではないけど……が悪い。


いい具合にほろ酔いになってくると、俺に『自分の事を口説くことを強要してくる』のだ。


最初は誘ってるのか? とも思ったが、どうもそういう感じでもないらしく、単純に「褒められること」や「チヤホヤされること」が好きなだけらしい。こいつがもし現代日本に来たら、きっとホストクラブに大ハマりするだろう。


「そういえば、そろそろ一か月経つんだよな」

「ええ」

「ギルドの制裁処分も解けるんじゃないか?」

「そうかもね」

「どうする?」

「どうするって何よ?」

「今なら一人傭兵団も作れるぞ、制裁期間から抜けたのならある程度の好きな団にも行けるだろうしな」


うちの団が弱小傭兵団であるのはジャハーヌも認めているところだ。こいつの暗殺者としての才能を活かすのならば、うちにいるよりも他所に行った方が良いだろう。


「はっ」


ジャハーヌは俺の言葉を鼻で笑った。


「バカにしないでくれる? あんたに言われなくても、出て行くときは勝手に出て行くわ」

「それは失敬」

「私の事をバカにした罰として今日の飲みは全部があんたが持つのよ、あと私の機嫌がよくなるようにきちんともてなしなさい」


どうやらこの様子だとしばらくは俺の団から離れるつもりはないらしい。


「アップルパイでも買っておけばいいか?」

「それプラス何かね、私の機嫌が直るまであんたは寝れないと思いなさい」


女から寝かさないと言われる事ほど男にとって光栄なことはないが、こいつの場合は酒を延々飲ませてくるからたちが悪い。

さて、今日も安眠する為に、今からジャハーヌが満足しそうなおもてなしを考えるか。


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[一言] うんうん。 読んで良かった満足。
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