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多種族ばかりの傭兵団  作者: 竹永
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ペンテシレイアと出会った後

ドンッ!


俺は身体を強く打つ衝撃で目を覚ました。


「……!? な、なんだ……」


何事かと状況を確認する。

どうやら俺はベッドから落ちたらしい。その落ちた時の衝撃で目を覚ましたようだ。しかし、ベッドから落ちる程、俺の寝相は悪くなかったはずだが……


「起きたか、アヤト」


ペンテが俺の足を持ちながら話しかけてきた。

どうやら、こいつが俺の足を持ってベッドから引きずり落としたらしい。


「何するんだ、怪我したらどうする」

「この程度で怪我するのか? 人間種は脆いな」


ペンテが見下すように笑う。

こいつと出会って一か月。少しは社会性や一般常識を身に着けてはきたが、こういうところは、出会ってからそのままだ。


「起こすのなら普通に起こせ」

「面倒くせえからこうした、トモエが飯作って待ってるんだ早く行くぞ」


家事は……特に料理に関してはトモエの領分だ。

どんな相手にも不遜な態度を崩さないペンテだが、胃袋を握られているトモエの言うことには比較的従順である。もちろん、飯関係の事に限るが。

おそらく、トモエに俺を起こしてこい、と命令されたのだろう。


「分かった、行くから足を……」


ペンテは俺の言うことを聞かずに俺の足を持ったまま歩き出した。


「待て、ペンテ、足だ、足を持ったままだぞ!」

「ああ」

「ああ、じゃない! 放せ!」

「嫌だよ、俺は腹が減ってるんだ、お前がもたもたする間に俺の飯を食うのが遅れる」


トモエは俺が本拠地にいる時は、俺が食卓の席に着かない限り絶対に飯を食べることを許可しない。ペンテが強引に俺を連れて行こうとするのはそのためだ。


「わかった! すぐに食卓に行くから! だから足を放せ!」

「ダメだ、お前はこのまま運ぶ」


ペンテがニヤリと笑う。

最近知ったのだが、オークが笑う……口角を上げて己の犬歯を見せる表情というのは、一般的に威嚇の意味があるそうだ。この特徴的な犬歯はオーク種の証であり、大抵の種族はオークとやり合うのを嫌うので、この表情を見せると逃げ出す。


しかし、こいつのこの笑顔(?)はそんな威嚇の意味合いがまるでない。


俺は、先ほどまで見ていた夢の事を……この世界に来て、コイツと初めて出会った時の事を……思い出していた。


「なあペンテ」

「何だ?」

「お前、俺の傭兵団に入って良かったか?」

「あん? なんだその質問」


ペンテの足が止まった。


「どうなんだ?」

「……飯がたくさん食えるようになった」

「ああ」

「……それくらいだな」


良かったのはそれくらい、と言いたいのだろう。


「ジャハーヌやトモエやココと一緒の傭兵団になってどうだ? 楽しくないか?」

「……さあな、ジャハーヌはうるせえし、トモエは何考えてるかわからねえし、ココはゴブリンの癖に俺をビビらねえし、何よりもアイツらみんな俺より弱えから話にならねえ」


ペンテは嫌いな奴は嫌い、とはっきり言う少女だ。逆に(飯を除く)好きなものに対しては、あえてぶっきら棒の態度を取ることが多い。

まあつまりは、傭兵団の仲間は嫌いじゃない、ということだろう。


「お前より弱いのならお前が守ってやらないとな」

「面倒くせえけど仕方ねえ、俺が一番強いからな」


ふふん、とペンテは得意げな顔をする。


「ちなみ、俺の事はどう思ってる?」

「……」


ペンテは得意げだった顔を崩し、渋面を作ると、歩き出した。もちろん、俺を引きずったまま。


「お、おい、手を放せって!」

「……」

「ペンテ、おい!」

「うるせえうるせえ、お前と無駄話してるから余計に腹が減っちまったじゃねえか」


八つ当たり気味につぶやくペンテ。これはペンテなりの照れ隠しと判断して良いのだろうか。


いや、それよりも今は間近に迫っている下り階段から俺の頭をどう守るかについて考えなくては……


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