買い物とツンデレ? 1
5月――
冬の厳しい寒さはどこへやら、ポカポカと暖かい陽気の続く月。
俺、真城 健は部屋の窓からこのポカポカした日射しを浴びながら、のんびりしていた。
「平和だなぁ……」
思ったことが口に出てしまうほど、平和だった。
「こんな日は読書してるのもいいが、たまには外に出掛けるかな」
「兄さあ~ん!」
「……どうした?」
「今すごーく暇なんですけど~」
「なら暇に遊んでもらえ」
「酷くないですか!? ……うぅ~……構って構って構って構って!!」
「わかったわかったわかったわかった」
ピロッピロリーン♪
「あ、私の携帯です……はい、はい……あぁ、夏希ちゃんですか? ええ……これから一緒に買い物? でも兄さんが……」
「俺はいいから、行っておいで」
「……わかりました! 行きましょう!」
梨香はどうやら、友達に買い物に誘われたようだ。
「というわけで、すみません兄さん」
「いや、別にいいよ、楽しんでおいで~」
「では兄さんは夜の方で遊んでもらいましょう」
「なにさせんだよ……っと」
ルルル~ララ~
俺の携帯も鳴った。一体誰からだろう。
「もしもし」
『あ、た、健? わわ私加那なんだけどっ!』
「あぁ、加那か、どうした?」
「……加那?」
何故か梨香が怖い目をしながらにじり寄ってきた……
「兄さん、加那とは誰ですか!?」
「学校の友達だよ。隣の席のやつ」
「あぁ、あの娘ですか……」
「……んで、どうした?加那」
『あ、ああのね! 今日天気いいじゃない?だから、多分家で友達とも遊ばずゴロゴロしてる健を買い物誘ってあげようかな~なんて!!』
「え、でもいいのか? 女子の友達とかと行った方が絶対楽しいだろ?」
『う、ううん! 私は健と出掛けたい……ち、違うから!!別に健が好きな訳じゃないんだから!! 健が暇してそうだったから、仕方なく誘ってあげたんだからね!!』
「おお、丁度暇になったとこなんだ。いいよ、行こう」
『ほ、本当!? じゃあ駅前の通りで待ち合わせね!』
「わかった。じゃあ」
ピッ
「というわけで、俺も出掛けるから」
「兄さん、私のことは飽きてしまったんですか?」
「何でそうなるんだ」
「行かないで下さい兄さん! 私も出掛けません!!」
「いや、友達に会うだけだから」
「兄さん、行かないで……」
「帰ったらいっぱい遊んでやるからな」
俺はそう言って家を出た。梨香が少し可哀想な気もするが、俺とばかりいないで友達との関係も大事にしてもらいたい。
そして俺は、加那と買い物に出掛けたのだった。