悪魔の罠
「どうしてこうなった……」
俺は今、ショッピングモールの2階にある、とある店にいた。
「にぃさ~ん、水色と黄色、どっちがいいですか?」
確かに梨香の買い物に付き合うとは言ったが……
「ちょっと梨香……恥ずかしいし気まずいから出てていいか……?」
「ええ~何でですか?それでは兄さんを連れてきた意味がないじゃないですか」
「いや、だってここ男が来るようなところじゃないだろ……」
「あっれぇ~兄さん、もしかして妹の下着に欲情しちゃいますか?」
「お前、俺の反応見て楽しんでないか!?」
そう、俺は今、梨香に連れられて女物のランジェリーショップに来ていた。
すぐ隣には、水色と黄色の下着を1着ずつ持った梨香がニヤニヤしながら立っている。
要するに、妹の策略にはめられたのだ。
「はめる!? ……兄さん、こんな公共の場でハメプレイはちょっと私も恥ずかしいです……」
「うん、お前が何言ってんのか全然わかんないや」
「良いですよ……いつか兄さんに虐められるシチュエーションも考えてましたから!」
「止めろ! それ以上は何も言うな!!」
「それより兄さん、どっちの下着がいいですか?」
「あぁーじゃあ黄色」
「ちゃんと選んでほしいです!」
「どうせ着ちまえばどれも一緒だろ?」
「いや、これで今夜兄さんを襲撃しようかと」
「するな!!」
「でも、やっぱり兄さん黄色が好きでしたね」
「……は?」
「だって兄さん秘蔵のパソコンの画像ファイルの中、下着と水着は全部黄色ですもんね!」
「え、ちょっ!?」
「大丈夫ですよ兄さん、私は怒ってません」
……目がマジなんですけど……
「これからは私が着て迫ってあげるんで、要らないと思って画像全部消しましたけどねっ!!」
「やっぱ怒ってんじゃねえか!!」
「あんなものに頼らなくても、私がいつでもしてあげますよ!」
「俺達兄妹っ!! やっちゃダメだろ!!」
「愛があれば壁なんて発泡スチロールと同義です」
「言ってることも例えもよくわからんわぁぁ!!」
逃げるように店を出た俺を追いかけるように、梨香も会計を済ませて付いてきた。
……あぁ、疲れた……