にぎやかな仲間たち
学校に着いた俺は梨香と別れて自分の教室へと向かった。
俺と梨香の通う高校――雛山高校は、家から20分もかからないので、多少時間が遅いくらいならはや歩きでも何とかなる。
梨香は1年生なので、階が違うのだが、梨香の性格なら友達もたくさんいそうだし大丈夫だろう。
「おお健、おはよう!」
「おはよう。今日はプロレスごっこか?」
相変わらずクラスの男子は朝から暴れている。全く、元気なやつらだ。
俺は自分の席に向かい、荷物を片付け始めた。
「あら健、おはよう」
「おはよう、加那」
俺の隣の席に座る、浅野 加那(あさの かな)が話しかけてきた。
梨香が肩まであるロングが似合うのに対して、加那は若干癖の入ったショートカットが良く似合っている……のだが。
「あれ、お前髪型変えた?」
「え?あ、う、うん……その、変かな?」
今日はいつもと違い、後ろ髪をポニーテールにまとめていた。
「全然変じゃないぞ。その髪型もすごいいいと思うよ」
「っ!べ、別に健に誉めてもらったのが嬉しいとかじゃないから!!」
何故か頬を赤らめた加那は、そっぽを向いてしまった。
「わかってるよ。別に俺に誉められても嬉しくないもんな」
「え、ちょ」
「俺も自分自身に誉められても別に……って感じがするからな」
「そ、そうじゃなくて……」
加那は、捨てられた子犬のような目をして、酷く落ち込んでしまった。
「ご、ごめん、何か悪いこと言ったか?」
「言ったわ!健に誉められて嬉しくないとか言わないで!!」
「……は?」
「あ、ああの、その……あう、べ、別に健に誉められて嬉しくない訳じゃ……」
「え、さっきと言ってることが矛盾してるけど」
「と、とにかく!健は自分のこと下手に考えすぎ!もっと胸を張っていてもいいと思うって話よ!!」
何か説教された……
「まぁ、健のそんなところが好きなんだけど……」
「?……何か言ったか?」
「ななななんでもないわ!!」
「ならいいんだけど……」
いつもこんな感じだ。加那はいつも俺にだけ強く当たって来るのだが、しばらく同じクラスにいるうちに、これが加那の性格なんだ、と慣れてしまった。
まぁこのツンツンしたところがないと加那じゃない感じがするんだけど。
そんなこんなでにぎやかに過ごすクラスが、俺は好きなのだった。