梨香×夏希のダブルアタック! 7 ――終戦。
「ふふっ。今日は楽しかったよ~」
「夏希ちゃん、また来て下さいね」
「今度は健全な遊びをするようにな」
「そんなこと言って~お兄さんも楽しんでた癖に~」
「楽しんどらんわ!」
そんなこんなで、嵐のように夏希は帰っていった。
「ああぁぁぁ、疲れた……」
一日中梨香が二人いたようなものだ。かなり疲れた……
「じゃあ兄さん、私は晩ごはんの用意をしますね」
「あぁ、よろしく頼むよ」
「今日は兄さんの嫌いなアジの酢漬けと椎茸ですが、冷蔵庫にそれしかありませんから仕方ないですよね」
「え、さっき見たときはカレーの材料がはいって――」
「それしかありませんから仕 方 な い ですよねっ」
「じゃあ今から何か他のもの買ってくるか――」
「し か た な い ですよね♪」
「……あの、梨香さん何か怒ってらっしゃる……?」
「別に怒ってないですよ、兄さん。でも兄さんが先にお風呂に入ることを仮定してお湯の温度を80度位にしたり兄さんがお風呂に入ってる間に兄さんの着てたシャツくんくんしたり寝静まった兄さんの顔をべとべとになるまで舐め回しますから」
「やっぱ怒ってるだろ!?」
て言うか最後のほうは梨香の願望だろ!?
「――兄さんが」
「え?」
「……兄さんが、夏希ちゃんと楽しそうなのがいけないんです……」
――あぁ。
忘れてた。学校では完璧超人の梨香だけど、その面が強すぎて弱い面に気づけていなかったんだ……
「梨香……」
「兄さんなんて、豆腐の角で頭ぶつけて死……ぬのは私が堪えられないから、たんこぶ作っちゃえばいいんです!」
なんじゃそりゃ。
「その後そのたんこぶを私がなでなでしながら『もう……ドジな兄さんですね、私が一生ついてなくちゃ』って言って、兄さんと幸せな家庭を築いて――」
おーい梨香さん帰ってこーい。
「まぁ、なんだ……梨香」
「ふぁ?……ふ、ふん!」
「今晩は一緒に寝よ――」
「本当ですか!?」
「――うか、って早っ!!」
「ふふふっ♪ そうと決まれば今夜は念入りに体を洗わなくては!」
「いやなにもしないからな!?」
「ついでに兄さんの体も洗って差し上げます!! 隅々まで……そう!隅々までっ!!」
「息荒らげるのやめろっ!!」
……まぁ、何はともあれ梨香の機嫌が治ってよか――
「あ、晩ごはんと熱湯は免除しますけど兄さんのパソコンの秘蔵のデータは全消去で」
――った……うん、悲しむのが俺だけでよかった……
「シャツの臭い嗅ぐのは?」
「決行します」
――前言撤回。やっぱり梨香さんは完璧でも何でもない、ただの変態だ。
「兄さんの前では、ですよ」
「心の声って人に気づかれないものじゃないのかな……」
なんだかんだ平常運転な梨香さんだった。