真城家の朝
部屋に無機質な目覚ましの電子音が鳴り響く。
「……んん、もう朝か……?」
まだ目も開けられないまま、俺は目覚ましを探す。
と、
「……あれ?止まった?」
まだ俺の右腕は目覚まし時計を探しているというのにその音は急に止んだ。
……なんだ、夢か……。
「…………」
いや、待て待て!危うく夢で済ませるところだったが、勝手に目覚ましが止まるなんておかしい!
眠い目を擦って周りを見渡した俺は、自分の左隣を見てびっくりした。
「な、なななな何でこいつがいるんだ!?」
「すぅ……すぅ……」
俺の隣では、可愛らしい寝息をたてて梨香が眠っていたのだ。
「おい、起きろ梨香、朝だぞ。て言うか何でお前がここにいんだよ」
「すぅ……すぅ……」
駄目だ……起きないなぁこれ……
仕方がない、と俺は梨香を起こさないように自分のベッドを降りなが――
ガシッ!
グイ
ボフン
「すぅ……すぅ……」
「…………」
ベッドに戻されたな……
もう一度ベッドから降り――
ガシッ!
グイ
ボフン!
ギュウッ
戻されて抱きつかれた……
「すぅ……すぅ……」
「…………」
「すぅ……すぅ……」
「……梨香、起きてんだろ」
ビクッ!!
「……何でわかったんですか?」
「いや、今のはわからない方がおかしい。あと何で俺のベッドにいるんだよ」
「妹が兄と一緒に寝たいと思うのはどこの妹も同じです」
「うん、答えになってないしそんな願い持ってるの全世界の妹の1%にも満たないと思うぞ?」
「まぁまぁ、じゃあその1%にはいる妹を持てて兄さんは幸せですね」
「いや、全然全くこれっぽっちも嬉しくな――すいません嬉しいです嬉しいのでパジャマの上脱ごうとするの止めて下さいお願いします」
「うふふ、やっぱり嬉しいですか兄さん」
「あぁ、そういうことにしておくから朝は止めてくれ」
「『朝は』?『朝は』ということは時間をわきまえればやってもいいと?」
「間違えました『朝も』止めて下さい」
「ええ~?」
「ほら、早くしないと学校遅れるぞ?」
「……わかりました。急いでご飯作りますね?」
「あぁ、よろしく頼む」
と言ってから俺は、着替えを済ませるため自分のクローゼットへと向かう。
…………ジィーー
「……梨香?部屋から出てくれないと着替えられないんだが」
「え、別に妹だから良いじゃないですか」
「いや、高校生の妹の前で着替えて恥ずかしくない兄はいないと思うんだ」
「というと、兄さんは私を一人の女として見てくれていると言うことですね」
「いやそれとこれとは……」
「嬉しいです兄さん、私頑張って兄さんにふさわしいお嫁さんになれるよう頑張りますね!」
「だから兄妹で結婚出来ないって何度言ったらわかんだよ!」
「兄さんもう我慢出来ません、早く既成事実を作ってしまいましょう」
……聞いちゃいねえ。
その後、何とか妹を説得して部屋から出すことが出来たが……
――あぁ、月曜の朝から疲れた……