買い物とツンデレ? 4
「やっぱりいつ来ても広~いっ!!」
子供みたいにはしゃぐ加那。
いつも学校では口数が少ない方だが、うん、こういう加那も悪くないなぁ。
「ねぇねぇ健、最初はどこに行こっか♪」
「ん? 加那が行きたいところに行こうか」
「ほ、本当に?」
「ああ、洋服でも本でも何でもいいぞ」
「…………」
「どうしたんだ?」
「……えっと……じゃあ……その、本当にどこでもいいのね!?」
――そして加那が選んだ店は……
「……うん、加那さん、確かにどこでもいいって言ったけどさ……」
「健がいいって言ったんだからね! 似合うやつ選んでくれるまで行かないでよ!」
加那が選んだのは、ランジェリーショップだった。
いや! 確かにどこでもいいって言ったけどさ!?
俺クラスの男子だぞ!?
「マジで恥ずかしいんだけど……男が来ちゃいけないゾーンだぞ……」
梨香との前例がある故に、本当にヤバいと思っていた。
「た、健、怒ってる……?」
う、上目遣い……だと……?
加那は潤んだ目でこちらを見て、申し訳なさそうにうつむいた。
「い、いや、全然怒ってないぞ!? でも、男には居づらいところかな~なんて」
「じゃあ、これならどう?」
ギュッ、
と、加那が俺の腕に抱きついて来た。
控えめな胸でも、十分女の子の柔らかさがあり、恥ずかしそうな加那の顔も肩の近くにあって……
「べ、別に、健がここに居づらいって言ったから女の私が一緒にいてあげようと思っただけだから! 健と腕組めて嬉しいとか、これっぽっちもないんだからっ!!」
「お、おお、そうか、ありがとな」
「全然ニヤニヤなんかしてないんだからね!! 」
いや、自分の顔見てみろよ……
メチャクチャニヤけてるよ、加那さん。
「わかったよ、加那さん」
「健がさん付けする時ってだいたいろくなこと考えてないよね……」
「う、いいから、早く選ぼうぜ!」
「た、健が望むのなら……こ、このまま20分くらい居ても……いいのよ?」
「加那さん……」
「た、健……?」
「加那さんには黒はまだ早いよ」
「胸で判断しないでっていうか私の恥ずかしさを返して!!」
「え、なんか恥ずかしいこと言ったのか? てっきり俺を逃がさないようにする嫌がらせかと……」
「するわけないじゃない! 健のことが好……きじゃない、ぜぜぜ全然好きじゃないけど、そんなことしないわ!!」
「なんか好きじゃないって言われるとすげぇ傷付くな……」
「え? ち、違っ……本当は大好――きなんかじゃないわ! ふんっ!!」
「励まそうとするのかと思ったじゃんか!!」
「女の子の本当の気持ちに気付かないのが悪いの! ……ずっと前から変わらないのに……」
「……変わらない?」
「早く気付いてよ……」
「……ああ、そういうことか!」
「……わ、わかったの!?」
「そんなに顔真っ赤にして……何で素直に言わなかったんだ……」
「だって……」
「トイレなら店出て真っ直ぐだ」
「……へ?」
「……トイレじゃないのか?」
「違うわ! ……もう……」
「……すまん……」
「いつか気付いてよ……?」
女の子の事情は複雑だなぁと思う俺だった。