自殺の公認された世界
単なる思考実験を小説化したものです。
実現の意思はありません
~~~~~よって本案は可決する事と決定しました。
20xx年、国会で一つの法案が可決され成立する事が決定した、法案名は『人材活用法』、未来への閉塞感や世代間格差の為、増加の傾向をみせる若手の自殺に歯止めを掛けるためとの触れ込みで成立した法案だがその別称は『臓器売買促進法』という穏やかではないものだった。
この法案の名称は人材活用となっているがその内実は高齢化で増加する国庫への負担を緩和するため自殺する人間の臓器を活用し医療費を抑えようあわよくば儲けも出そうと狙った法案である。
内容としては精神科医及びセラピスト、医師による精神面、肉体面でのサポート、弁護士や税理士のような経済面でのサポート、ハローワークを中心とした就業支援の三位一体運用を基本とした一括サポートを基本とし、一ヶ所での全面サポートを行う事としている。
しかしそのような手厚い全面的なサポートを受けられるのは一部の専門技術を持つ人間や肉体的な問題を持たない特に若い世代に限られていた(ここで扱う職業は単純労働でワークシェアリング的に被支援者の庇護に重点を置かれている)。
なぜならばこのような実績作りを行う理由はこの法の本来の目的と言われる、臓器の収集を円滑に行う為のお題目とされている(臓器提供者には臓器供給を受ける人間の支払う金額の一部の受取先や寄付先の選択権が与えられる)。
この法律が議論する過程では「老人は年金や箱物建設に使った国債による借金で若者から金を搾取するにとどまらず肉体まで奪うのか」、「現代の身売り」、「科学研究の可能性の放棄」等の様々な非難を受けた一方で「捨てられる命を有効利用するのは素晴らしい」、「金銭負担の減少は若者にも有用である」、「海外で現地マフィアから違法な臓器を買うより安全で健全」と肯定的な意見も散見された。
世論としては自殺を公認するような気味の悪さから肯定的な意見は少数派であったが施行後の施行後の自殺者による社会的な混乱(列車への飛込み等)の減少、医療費の抑制、移植を受けた人間が開始した各種社会貢献活動やソーシャルビジネスの増加、労働人口の増加等の効果があり社会に浸透していきやがて誰もが当たり前のものとして認識し意識することも無くなった。
今日も一人の自殺志願者が受付を訪れた「臓器を提供したいのですが」と。
臓器を受け取る人間は対価を現金や社会奉仕活動で支払います(分割支払い可)。
臓器提供者は現金を受け取る相手を指定する権利が与えられますがこの法律に元ずく臓器提供は主要な臓器を一括で摘出するため本人は受け取れません、また提供者に多額の借金等があった場合に相続放棄と合わせて遺族に現金を残すためこの様な形式となっています。
政府は医療費の抑制のほかに自殺を取りやめた若者を派遣会社が行うように各企業に派遣し運営資金を確保します。民業圧迫の批判は公共の福祉、弱者保護で押し通しました。
自殺中断者を受け入れる企業は労働時間や内容に制限を受ける代わりに一人あたりの時間給が相場より安く抑えられCSR活動として認められます。
自殺中断者は自由になるお金は少なくなりますが最低限の衣食住が保障されます。
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思考実験ですので実現の意思はありません。
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