第2話 マッド・ドクター天王寺秀光
「・・・・・・・う」
強い光に目が焼かれる。瞼を閉じていてもそうなのだから、開けばなお凄いことだろう。光には目を少しずつ慣らしていく事にして、今の自分の状況を考える。どうやら外ではないようだ。ベッドに寝かされているし、風の音もしないし・・・いや、空調設備の音がするし、独特な匂いがする。この匂いは・・・病院だ。消毒液の匂いや薬品の匂いが混ざったあの匂いだ。しかし、しかしおかしい。ここが病院だったとしたら・・・何故俺は拘束されている?
「おや?おやおやおや?気がついたようだね?っとそうだ、私の名前は天王寺 秀光よろしくね」
「はぁ、あ、愛宕 慎司っていいます」
「うんうん。アタゴくんね。覚えとくよ」
しゃがれた男性の声が右手の方から聞こえる。もしやこの男性が俺の・・・命の恩人なのだろうか。
「おっとっとっと、まだだ。まだ動くんじゃないよ?まだ馴染んでないはずだからね」
馴染む?馴染むとは何だ?いや、それよりもここはどこだ?俺はあれからどうなった?生きてるのか?数え切れないクエスチョンマークが頭の中を飛び回り処理落ちしそうなレベルだ。
その時、電話の音が鳴った。
「ちょっとすまんね。・・・はいはいもしもし・・・うん・・・・うん・・・・そうだね。・・・あ、彼が目を覚ましたよ・・・・うん・・・うん・・・待ってるよ。・・・お待たせお待たせ、来るって、って言っても分からないね。うん、端的に言うと君の命の恩人がここに来るよ。ちょっと待っててね、その時に諸々説明するからね」
そうだ。情報が欲しい。この状況も、あれからどうなったのかも、情報がなければ判断できない。どうやら、命の恩人がここに来るまで幾らか時間があるようなので、それまでに目を光に慣らしておくことにする。
少しずつ瞼を開いていき目に入る光の量を調節し目を慣らしていく。初めに目に飛び込んできたのは病院の手術室にあるようなあのライト。目線を下にずらすと手や足を拘束する為のベルト。ベルト・・・などと軽く言ったが、部分的に金属部品を使った頑丈そうな物だ。人一人の力ではどうこう出来そうにない。実際、手を動かしてみても音が鳴るだけでビクともしない。首を横に向けるとベッドが数個並んでいる。タイヤがついていて、移動出来るタイプのあれだ。恐らく、自分が今寝ているベッドもそうなのだろう。足の方に目線を向けると大きな扉があった。その扉が開き、人が入ってきた。
「来たね。お早う御座います総統閣下」
「おはよう博士。お疲れ様、徹夜で疲れたでしょう、休んでいいわよ」
「では、お言葉に甘えて」
そう言うと博士?・・・確かに見た目はそれっぽいが・・・は出て行った。博士を見送った総統閣下はこちらに向き直りこう言った。
「ようこそ、我がダークフィストへ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」