第1話 切り裂き怪人リッパー現る!!
いきなりですが、グロ注意。
「なんで・・・なんで俺がこんな目に・・・」
腹から止めど無く溢れる血を止めようと傷に手を押し当てるが、その手には何やらプリプリとした感覚がある。少しでも動いたらこぼれ落ちそうになるソレを押さえながら呟く。俺は何も悪いことはしていないじゃないか。どうして、どうして?答えの出ない問いが頭の中をグルグルと回る。
「くそっ、圧迫止血法ってこうじゃないのか?」
見当違いな答えが漏れ出るのも脳に血が行き届いていないからか。どうやら本格的にヤバイらしい。しかしなぜだろう?死にかけの人間は過去がフラッシュバックするらしいが、俺には一つの記憶しか出てこない。それもずいぶん昔の、誰に言ったのかも分からないセリフだ。
「ヒーローか・・・なれなかったなぁ」
ヒーローになる、という約束。結局、それは守れなかった。
「ヒーローになれる機会なんか・・・いっぱいあっただろうに」
何も映画やアニメのようなヒーローでなくても良かったはずだ。自分にはそれなりに才能があったのだ。それを使えばいくらでも、とは言わずとも少なからずヒーローになれたはずだ。事実、居たではないかたくさんのヒーローが。剣道の大会で優勝した者、サッカー全国大会ベスト4進出メンバー、インターハイ出場の短距離走の選手、絵画コンテスト金賞のあいつ。流石に優勝等とは行かなくても、彼らのサポートをするなりすれば、全国も夢じゃなかった筈だ。
「・・・筈か。もう、遅いな」
あぁ、遠くで女性の悲鳴が上がった。続けて、大きな光が立ち上ったのも見えた。
「そう・・・か」
これは俺に対する報いなのだ。今まで努力することのなかった俺に対する。ヒーローは弱い者の味方・・・いや違う、ヒーローは強い者の味方だ。ヒーローに助けられるものは、すべからく努力している。今さっきの女性だってそうだ、生きるために理不尽に抗おうとしている。その点俺は声ひとつ上げなかった。いや、少なからず呻いただけだ。そこからはビルの壁を背もたれにズルズルと座り込み、腹の傷を押さえ、いつ来るかも分からない助けをただ待つだけだ。自分からのアクションは何ひとつしていない。ただただ、理不尽を受け入れただけだ。
「あぁ、ホントに眠くなるのな」
昔、あの有名なアニメで見たセリフを思い出す。あれとこれとで状況は全く違うが、あながち間違いでもないだろう。多分。
「は、随分余裕じゃねぇか、俺」
しかし、実際は全く余裕などない。自分の血で溺れそうなほどに、周りには血が溜まっている。
「・・・ヒーローに、なりたかったなぁ」
しかしその声は最後まで続くことなく、代わりにドシャリと水溜りに重いものが落ちる音が路地裏に響き渡った。
一話このくらいの長さでやっていこうと思います。