表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第1章 第6話 "黒師団"

「つ、疲れたぁ・・・」


あれからミーアを探して町中を走り回って・・・さすがにちょっと疲れたや

ミーアは昔からこの町にお気に入りポイントをいくつも持っていて、追いかけっこの最後に彼女はこの中のどれかにたどり着くとそこから動かなくなる。

言ってみれば、範囲が町中なだけのかくれんぼのようなものだ。


「ホント・・・ミーアって足早いよねぇ・・・あんな短い時間でどこまで行っちゃったんだろう・・・」


幼いころは、怖がりだった私は二階の窓から飛び降りるなんて真似は出来なかったから、窓から飛び降りられるミーアと私の間には大きな差ができてしまっていた。

しかし、私だって成長したのだ。

今となっては、窓から飛び降りるくらい造作もないのだ(ミーアのお父さんにはすっごく怒られたけど・・・!)。

でも、今でも私はミーアには追いつけない。


「はぁ・・・でも、次で最後・・・だ・・・!」


あの子がよく行くお気に入りの場所・・・町はずれの教会の塔の上とか、その反対側の森の中とか、とにかくめちゃくちゃなところが好きなんだけど、とにかくそこらじゅうは全部回った。

あと残っているのは、港の先端にある船の停留用の柱の上だけだ。


「もう日が暮れちゃうなぁ・・・お父さんとお母さん、心配してないといいけど・・・」


今までミーアのかくれんぼに付き合った回数は、はや30回。

そのたびお父さんとお母さんには怒られてきたけど、そろそろ慣れてきてくれたかなぁ。

次怒られたら、たぶんお小遣いゼロにされちゃうよぉ


もうすぐ、目的の港だ

次の角を右に曲がって、もう一回右に曲がれば・・・!


「みーつけた!・・・・・・・・・・あれ?」


ミーアが・・・いない?

ウソ、だってこれで全部回ったはずだよ?

ミーアがそれ以外の場所にいるなんてありえない・・・


「お嬢さん 誰をお探しかな?」


ゾクリ、と

例えようもない、寒気が背筋を走り抜けた気がした。

たぶん、これは冗談とかそういう類のものじゃない。

ホンモノなんて知らないけど、これはたぶんホンモノってやつかもしれない・・・!


「友達です ここにいるって言ってたんですけど・・・みませんでしたか?」

「さっきまでここにいたんだけど・・・ついさっき、あっちに行っちゃったよ?」


カツ、カツ、と甲高い靴音だけが響き渡る。

手に汗がにじむ、喉がカラカラだ・・・でも。


「僕が案内してあげるよ さあ・・・ッ!?」


右手をサッと振りぬいたのに、その剣は残念ながら前髪をかすることしかできなかった。

でも、なんとか距離をとることはできた。


「嘘、ですよね ミーアは、絶対にここから動かないはずです」

「・・・・・・チェッ 楽できると思ったのにな」


スッと、相手の顔に浮かんでいた笑顔が消える。

今までは隠れ気味だったさっきも、今では肌がピリピリするくらいに強く感じられる。

・・・・・・怖い・・・!


「お前が無駄口ばかり叩いているからだ 一発で気絶させていれば楽だろう?」

「いや、でもあの娘気づいてるぜ さっきから体固いもん 確実に警戒してるよ」


軽口ばかり叩いているほうはグローブ・・・もう一人は杖?っていうより棒か

正直、剣よりもリーチが長いものと短いもの・・・戦いにくいなぁ


剣を中段に構え、相手を真っすぐ見据える。

正直、パワー以外じゃ勝ち目はないかもしれないけど・・・でも、だからって素直に負けるのも嫌だ!


「ミーアをどうしたんですか? 答え次第では、容赦しませんよ!?」

「連れ去った・・・って言ったら、どうする?」


地面を大きく蹴って前に飛ぶ。

両手で握った剣を真っすぐ相手めがけて突き出す・・・ッ!!!


最速かつ最短、そして殺傷能力も高い突き・・・!

昨日の夜、ネロが話していたことの受け売りだけど、本当にその通りだと思った。

これなら・・・っ!!!


「おっと! 早いね、なかなか」


ひらりと身をかわされてしまった。

この人、軽口叩く余裕があるだけあって、なかなか強い・・・


「それじゃあこっちも容赦なく・・・!」


油断してるのか、一人しか突っ込んでこない。

ヴァンさんが言っていたことを思い出せ!


『突っ込んでくる人相手に、力比べをしても 勝てるでしょうが厳しい戦いになります・・・』

「うまく受け流して・・・!」


相手の拳を、剣を持っていない左手で右にそらす。

そして、空いた右手に握った剣の柄を、そのまま相手めがけて突き出す!


「ごおっ・・・!!?」


やった!

うまくみぞおちに入ったみたいで、相手がお腹を押さえてふらふらと後ずさる。

今のうちに・・・!!!


「バカが」

「えっ?」


がつん、という鈍い音と共に視界が真っ白になった。


「・・・あ、がぁっ・・・!!?」


そして、あとから焼けつくような痛みが追いついてくる。

痛い・・・痛い、痛い痛い・・・!!!


「自業自得だ それなりにできるやつ相手に余裕こいて一人で突っ込むからだ フォローすら間に合わん」

「ってぇ・・・油断したぜ 結構、いいのもらっちまった」


いつの間にか後ろに回り込んでいたもう一人に、頭を思いっきり殴られたんだ・・・!

まだ眼がチカチカしてる・・・それに、痛すぎて声も出ない・・・!


「んじゃまあ・・・連れて行くとするか しかし、こんな背格好のやついるって情報あったか?」

「昨晩遅くに届いた情報によれば、隣町の鍛冶屋の娘らしいな」


・・・・・え?

昨晩、遅く?

それって・・・もしかして・・・アレ・・・?


「ヴァン・・・・・・さん・・・・が・・・?」

「おっ、今コイツしゃべったぞ?」

「無防備なところを狙ったつもりだったが・・・案外、タフだったようだな」


やっと痛みが引いてきたのに、誰かが髪の毛を引っ張ってくる


「いた・・・い・・・やめ・・・・・・髪、は・・・・」

「ダーメ 俺、結構頭にキてるんだー 俺も痛かったんだから、君にもお返しだ」



・・・幼いころは、髪なんて興味なかった。

でも、かっこいいミーアの姿を見て、あれにあこがれてしまって

だから頑張って伸ばしていた髪なのに・・・

痛い・・・それに、悔しい。


「や・・・ぁ・・・・・・助け、て・・・!」

「誰も助けになんて来ないだろうさ こんな夕暮れ時の港になんて」


せめて、その手だけでも振りほどいてやろうと思ったのに。

私の手足は、全然言うことを聞いてくれなくて。

だらんと垂れ下がったままの手が、よけいに悔しくて。


「・・・・・・ネロ・・・・・!」


無意識に、出会ったばかりの少年の名前を呼んでいた。








「その子を、離せ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ