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HYDRA CHRYSALIS  作者: Nao9999
3/5

エピソード3 母体覚醒

エピソード3になります。


この章では、これまで断片的だった「母体」の存在に少し触れていきます。

戦闘だけではなく、この世界の裏側にあるものが、ゆっくりと姿を見せ始めます。


まだ全ては明かされませんが、物語の核心へと近づく最初の一歩です。

少しでもその空気を感じてもらえたら嬉しいです。

海戦から二時間後。

ボートは湾の奥にある港へ入った。

港は静かだった。

戦争中とは思えないほど、何も動いていない。

クレーンは止まり、倉庫は閉ざされている。

都市の人間は、この海域に近づかない。

理由は簡単だ。

ここが「母体搬送ルート」だからだ。

ボートが岸へ寄る。

兵士たちがすぐに周囲を警戒する。

水城は船から降りた。

足元のコンクリートが少し濡れている。

海の匂いがする。

AQUA-1はその後ろを歩いていた。

彼女はまだ世界を観察している。

子供が初めて街を見るように。

倉庫のシャッターがゆっくり開いた。

中には武装した部隊が待っていた。

その中央に、白衣の男がいる。

年齢は六十ほど。

深い皺が刻まれた顔。

彼は水城を見ると、ゆっくり頭を下げた。

「帰還を確認しました」

水城は短く答える。

「被害は?」

「軽微です」

白衣の男の視線が、AQUA-1へ移る。

その目には恐怖と興奮が混ざっていた。

「……成功しましたか」

AQUA-1が首をかしげる。

「成功?」

男は言葉を選ぶ。

「あなたの誕生です」

AQUA-1は水城を見る。

「私は生まれたの?」

水城は少し考えて答えた。

「そうだ」

沈黙。

その空気を、兵士の声が破った。

「レーダー更新!」

「敵部隊、再接近!」

倉庫の中の空気が一瞬で変わる。

白衣の男が小さく呟く。

「もう見つけたのか……」

AQUA-1が聞く。

「誰が?」

男は答えた。

「あなた達を殺す者です」

彼は壁のモニターを指さす。

そこには都市の地図が映っていた。

赤い点が無数に動いている。

敵勢力。

だがその動きは普通の軍隊とは違った。

一直線。

迷いがない。

まるで――

匂いを追う獣のように。

AQUA-1が静かに言う。

「私を追ってる」

男がうなずく。

「正確には違います」

彼は水城を見る。

「追われているのは、あなたです」

倉庫の中が静かになる。

AQUA-1が水城を見る。

「母体」

水城は黙っている。

白衣の男が説明を続ける。

「あなた達は兵器ではありません」

「正確には」

「兵器を生む存在です」

彼はモニターを切り替える。

画面に古い映像が映る。

研究施設。

水槽。

中に浮かぶ人間。

その映像の人物は――

水城だった。

だが、若い。

二十代ほど。

AQUA-1が呟く。

「母体……」

男は言う。

「二十年前、あなたは死にました」

倉庫の空気が凍る。

「しかし細胞が変化しました」

「人類が作った最初の生体兵器」

彼はゆっくり言った。

「HYDRA」

AQUA-1が聞く。

「ヒドラ?」

男は説明する。

「神話の怪物です」

「首を切ると、増える」

彼は水城を見る。

「あなたの体は死なない」

「そして兵器を生む」

「それが――」

「CHRYSALIS」

AQUA-1が呟く。

「羽化」

男がうなずく。

「あなたは兵器ではない」

「兵器の幼虫」

「そして」

「次の兵器を生む存在」

水城は静かに言った。

「だから敵は俺を殺したい」

男は答える。

「ええ」

「あなたが生きている限り」

「兵器は無限に生まれる」

その時だった。

倉庫の外で爆発が起きた。

警報が鳴る。

兵士が叫ぶ。

「敵侵入!」

AQUA-1が空を見る。

倉庫の天井が溶けていた。

火球。

敵だ。

空から降りてくる。

数十。

いや――

百。

白衣の男が震える声で言う。

「早すぎる……」

AQUA-1が静かに言った。

「母体」

水城が見る。

「何だ」

彼女は小さく微笑んだ。

「また生まれる」

水城の胸の奥が、再び熱くなる。

体の奥で何かが動き始める。

男が絶望した声を出す。

「まさか……」

AQUA-1が言う。

「第二世代」

その瞬間。

水城の体から光があふれた。

そして――

第二の羽化が始まった。

エピソード3を読んでいただきありがとうございます。


ここから物語は、戦闘だけではなく「母体」とHYDRAの関係へと進んでいきます。

書いている自分自身も、この世界の秘密を少しずつ掘り下げている感覚があります。


夢の中で見た断片から始まった物語ですが、これから先は作者として想像を広げながら進んでいきます。


次の章では、さらに状況が動き始めます。

引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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