エピソード2 海上戦域
エピソード2になります。
この物語は、ある日見た夢の断片から生まれました。
頭の中に残っていたのは、戦闘の光景と「母体を守る兵器」という不思議なイメージです。
エピソード2では、HYDRAの戦闘能力と世界の状況が少しずつ見えてきます。
楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
夜明け前の海は、灰色だった。
波は静かだ。
だが静けさは長く続かなかった。
エンジン音が海面を震わせる。
高速ボートが四隻、一直線に走っていた。
その中央のボートに、水城は座っている。
海風が髪を揺らす。
周囲には完全武装の兵士たち。
誰も会話をしない。
ただ警戒している。
水城の向かい側に、AQUA-1が立っていた。
彼女は海を見ている。
まるで初めて見る景色のように。
「これが海?」
水城はうなずいた。
「そうだ」
AQUA-1は少し考えたあと、指先を水面に向ける。
その瞬間。
海水がわずかに浮いた。
小さな水の球。
ぽよん。
空中で揺れる。
兵士の一人が小さく息をのむ。
「……制御している」
その時だった。
レーダー担当が叫ぶ。
「接近!」
兵士が振り向く。
遠くの空に光が見えた。
青白い噴射光。
空中ユニット。
敵だ。
数は十以上。
水城は静かに言う。
「来たか」
敵兵の腕が光る。
次の瞬間。
火の弾が海を裂いた。
着弾。
水柱が上がる。
二発、三発。
連続で落ちる。
兵士が叫ぶ。
「回避!」
ボートが急旋回する。
火球がすぐ横の海面を貫く。
触れた海水が一瞬で蒸発する。
敵の火兵器。
濃縮された熱エネルギー弾。
直撃すれば、装甲でも溶ける。
兵士たちが撃ち返す。
アサルトライフル。
だが空中の敵には届きにくい。
その時だった。
AQUA-1が静かに前へ出た。
「わかった」
水城が見る。
「何が?」
彼女は空を見る。
「この世界の戦い方」
AQUA-1の周囲の空気が揺れる。
海面が震える。
次の瞬間。
海水が持ち上がった。
球体。
一つ。
二つ。
三つ。
いや。
数十。
巨大な水球が空中に浮かぶ。
兵士が息をのむ。
「でかい……」
AQUA-1が手を振る。
水球が飛ぶ。
ぽよん。
ぽよん。
まるでスライムのように空中を跳ねる。
敵兵が火球を撃つ。
水球に命中。
破裂。
だがそれが罠だった。
水球が霧になる。
空中に広がる。
敵兵の装甲に触れる。
ジュッ。
白煙。
装甲が溶ける。
一人。
二人。
三人。
空中から敵が落ちていく。
海へ。
水城がつぶやく。
「……殲滅兵器」
だが次の瞬間。
空が赤く光った。
新しい敵だ。
大型ユニット。
背中に巨大な燃焼炉のような装置。
兵士が叫ぶ。
「指揮官クラス!」
敵が腕を上げる。
巨大な火球が生成される。
それは人間の大きさだった。
発射。
火球が一直線に飛ぶ。
水城のボートへ。
その時。
AQUA-1が静かに言う。
「母体」
水城が振り向く。
「何だ」
彼女は少し微笑む。
「守る」
その瞬間。
海が割れた。
巨大な水柱が立つ。
そして圧縮される。
巨大な水球。
それはまるで
小さな月のようだった。
火球と衝突する。
閃光。
爆発。
蒸気が空を覆う。
敵ユニットが揺れる。
その瞬間。
遠くから銃声が響いた。
一発。
敵のヘルメットが砕ける。
また一発。
敵の燃焼炉が撃ち抜かれる。
水城の視界がまた変わる。
十字線。
スコープ。
ショッピングモールの屋上。
狙撃手が次の弾を装填している。
その狙撃手はつぶやく。
「母体は守る」
トリガー。
発砲。
空中の敵が次々落ちていく。
海面に波紋が広がる。
戦闘は、わずか数分で終わった。
海に残ったのは、
燃える残骸と、
静かな波だけだった。
AQUA-1が海を見る。
そして小さく言った。
「まだ来る」
水城が聞く。
「誰が」
彼女は空を見た。
「私を殺す者」
少し沈黙。
「そして」
「あなたを」
海の向こうで、太陽が昇り始めていた。
戦争はまだ始まったばかりだった。
エピソード2を読んでいただきありがとうございます。
HYDRAの戦闘シーンは、映像として頭に浮かんだイメージをできるだけそのまま表現してみました。
これから物語は、母体とHYDRAの秘密に少しずつ近づいていきます。
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次のエピソードもよろしくお願いします。




