【歪み】
2025年4月30日 -事件当日-
吉田「留美が考えてくれた俺の誕生日デート。まだ始まってないのに緊張ばやいぃ~」
指定の待ち合わせの場所で待っていると 留美さんがきた。
留美「ごめん 秋くん 待たせちゃったかな?」
少し小柄で成人したばかりであろう女性が申し訳なさそうに声をかける。
その立ち振る舞いの可愛さに口角が自然に上がってしまう吉田君
吉田「全然待ってないよ。むしろ俺のために誕生日デートを企画してくれて
待ち時間ももうご褒美みたいなものだからね。」
居酒屋とは打って変わって、落ち着いた喋り口調を見せる。
留美「そんな可愛いこと言われちゃったら張り切っちゃうよ。
今日は思いっきり幸せにしてあげるね。これ以上の幸せがないくらい。」
そういって 2人はデートを始めた。
軽い食事をした後は遊園地に行って、まさにカップルらしい時間を過ごしていた。
吉田「成人して遊園地なんて初めて来たよ。」
留美「デートの定番。ここはしっかり抑えなきゃだよね。
大切な秋君との時間なんだもん。後悔のないように過ごさなきゃもったいないでしょ?」
微笑みながら、吉田君との身長差もあって、自然に上目遣いになる留美
吉田「そんな角度でその言葉は反則だよ~。幸せすぎて
人生の運をすべて使っているような気になるよ。」
留美「なに言っているの?今日は誕生日なんだから
ちゃんと秋くんにとって至福の時間にしなくちゃもったいないでしょ?
それに、私からの最高のプレゼントはお願いしたホテルで渡すから、最高潮はまだきてないよ。」
そんなことを言いつつ、遊園地を精一杯楽しんで、気づけば空は夕暮れに染まり、
観覧車の灯りが目立ち始めていた。
2人はそのまま予約していたホテルへ向かった。悲劇の入口とも知らずに…。
吉田「留美ちゃんがホテルを予約してって言ったから、
しといたけど…ここでよかった。」
留美「うん。秋くんと2人きりになれる所がよかったから、嬉しい~」
留美の言葉に吉田君は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
そして、留美は吉田君をベッドの上に押し倒し、その上に乗る。
留美「今までこういうことしてなかったよね。 誕生日まで待っていたんだよ?
やっと、思いっきり2人で楽しめるよ。」
そう言いながら服を脱ぎ、キスをしながら、優しく抱きつく。
吉田「そんなに俺のことを思ってくれてたんだ…俺すごくうれしいよ。」
留美を強く抱きしめ返す。その時…。
{グサっ}
吉田「えっ! 留美ちゃん。 なんで…?」
背中に今まで感じたことのない痛みを覚える…。
背中から滴り落ちる血液。 そして、すぐさま命を絶つように、首の頸動脈を断ち切る一撃…。
{スパッ…!}
その一撃はすごく優しく断ち切られた。
留美「これがプ・レ・ゼ・ン・トだよ♡」
その質問の答えを聞くことのないまま、息絶える。
留美「なんで?それは…あなたが、○○○○○を奪った罰です♡
吉田さん幸せでしたよ。あなたを見つけることができて、
最高に濡れちゃいました。 私からのプレゼント
気に入ってくれましたか?
生まれた日に土に返る最高の片道切符のプレゼントです。
ただ最後はもう少し怯えて絶望した顔をみたかったな~。ふふふふ…。」
遺体を確認した後、ウィッグと服装を替え、
何事もなかったかのように自然の形でホテルを後にした。
時は戻り。 5月3日 物語の視点は修の自宅へと変わる。
修も土曜日ということもあり、仕事はなく、リビングでテレビを見ていると、
あのニュースが流れてくる。そう吉田秋に関するニュースだ。
その衝撃的な真実に持っていたリモコンを落とし、表情が固まる。
修「秋が…亡くなった?嘘だよな。
あいつがどうして!? この間まで幸せそうに笑っていたのにしていたのに…。」
起きている現実に理解できぬままでいると…
「お兄ちゃん ママがご飯だってさ~。ん? どうしたの?固まっちゃって」
咲が不思議そうに修の顔を覗き込む。
咲「おーい お兄ちゃーん? とりあえず私先って待ってるからね?」
そう言って 咲はその場を離れた。
修は、気にはしつつも、同僚以上の関係というわけでもなかったため、
特別何かできることもなく、唯々、週末が過ぎていった。
週明け月曜日
予想はできていたことだけど、修が会社につくとそこには警察が数名来ていた。
警察「お仕事の手を止めて申し訳ありません。ご存じかと思いますが、こちらの部署の【吉田 秋氏】が
亡くなられた件で、皆さんにいろいろとお伺いしたいと思います。」
そして、仕事を全体的に止めるわけにもいかないので、同部署の担当者を数名ずつ
声をかけ、社内会議室で事情聴取を行うことになった。
部長/課長/係長と役職人から始まり、平社員へと事情聴取が行われていく中、修にも声がかかった。
指定されたの会議室で様々な質問を受ける。
警察「こちらの調べで、一番関係が近い人があなたであることが、わかっています。
生前の彼の様子だったり、その際、感じた違和感などあればお伺いしたいのですが…」
修は警察の質問に対し、普段の仕事の様子。たまにご飯を共にした時の様子
彼の人柄など、事細かに警察へ情報提供をした。あの日の居酒屋の事も…
修「直近のことだと、4月20日に秋にばったり会って、そのまま居酒屋に行ったことがあります。
ただ、もともと予定していたわけではなく、彼が自分からついてきたって状態でしたが…。」
警察「つまり…プライベートで吉田さんに会った方は、家族間を除いくと風間さんということに
なりますね…。その際、吉田さんからなにか聞いたこと等はないですか?」
そう質問されあることを思い出した。それは吉田さんの彼女の存在
修「そういえば、秋 4月30日が自分の誕生日で、彼女が祝ってくれると
すごく喜んでいました。なので、その日秋は彼女と過ごしているはずですが…」
そう話すと、警察間で目配せをし、真剣な面持ちで話し始める。
警察「はい。こちらでも防犯カメラの情報や私物から出てきたチケット
ホテルの予約状況から一人ではないこと、女性がいたことは確認しています。
ちなみにその女性の顔写真など見たことはありませんか?」
修「はい。俺もその居酒屋で聞いてみたんですが、彼女が【写真嫌い】ってことで
俺も顔写真を見ることはできなかったんです。ただ、3か月前に彼女ができたと…。」
警察「やはりそうですか。一部防犯カメラからそれらしき女性を確認できたのですが…
それ以外の情報が一切なく、足取りが負えない状況でして…。
ただ、【3か月前からの繋がり】これは、新たな情報です。
長い時間ご協力いただき、ありがとうございました。
また、何かわかりましたご連絡ください。」
そう言って、2時間近い事情聴取は無事終えた。
会議室から部署に戻ると、部長から本日については、軽い仕事に留めるよう知らせがあった。
{不慣れな事情聴取で疲れただろうと部長なりの配慮だろう。}
修は事情聴取を受けたことで、吉田秋の死が現実だったことを改めて痛感した。
帰宅後、自室で一人過ごしていると…
{コンッ コンッ}と扉を叩く音
自室にやってきたのは咲だった。
咲「お兄ちゃん いつもならリビングに居る時間なのにどうしたの?」
咲は、そのまま修の自室に入り、傍に座る。
修「実は、俺の会社の人が亡くなって、今日警察からいろいろ聞かれたんだ。
それと仕事が重なっていつも以上に疲れていてな。」
咲「もう…。それならもっと早く言ってよ。私がマッサージでも何でもして
癒してあげるんだから、甘えてくれていいんだからね。」
修「咲はいつも俺の事を気にかけてくれるな。ありがとう。」
そんなやり取りをしてると咲の携帯が鳴る。
咲「友達から電話だから。ちょっと話してくるね。」
そう言って部屋を後にする。
咲「大丈夫。うん。今?お兄ちゃんの会社の人?が亡くなったみたいで、
今日 警察から事情聴取を受けたみたいなの。
それで、疲れ切っちゃってて 癒してあげようと思うんだよね。」
友達とすごく楽しそうな声で会話する咲の声は修にも聞こえていた。
咲「うん。さすが私の親友。わかってんじゃん。じゃぁその流れでよろしくね?
そうそう そっちの様子はどう? うまく教育系に進学できそう?
ならよかった。頑張ってね。じゃまたね。」
そう言って電話を切った後、笑顔で咲は兄の自室に戻っていった。
修「偉く楽しそうに喋っていたな。」
咲「大好きな親友とのお話だからね。お兄ちゃんも雄太君と喋るの好きでしょ?
それより、マッサージしてあげる。」
よいしょ。ぐい…ぐい…。よいしょ…。
咲「お兄ちゃんは私がいつでも癒してあげるからね。」




