6 友人《ゆうじん》に会《あ》いたかっただけ
私はふとんをかぶったままスマホをとる。
ジビエ 肉 明治 思いつく単語をうって、手当たりしだい検索にかける。
いのしし、しか、くま、かも、しゃも
「……ううーん。ジビエってイノシシとシカだけじゃないのかぁ……」
肉をきんしされた時代でも、みんなひそかに肉を食べていた。
さくら、もみじ、ぼたんなどなどべつの名をつけて。
法のぬけ道をさがす昔の日本人、ガッツある。
雪路は私の背にのって、スマホをのぞきこんでくる。
もふもふのシッポとヒゲが当たってくすぐったい。
「マコトよ。おぬしのもっているその板は何なのだ? ここに来るとちゅう、いろんな人間がおなじようなものをもっていた」
「これ? スマホ……スマートフォンっていって、とおくにいる人と会話ができるものだよ。あと、インターネットっていうのにつないで、いろんなじょうほうをえられる」
「おんみょうじゅつか?」
「そんなすごいなものじゃないよ。だれでも持っているもの」
「いいや、たいそうなしろものだ。前にきたときには、そのようなものはなかった。それに、なぜみな、その板を見ている?」
「うーん、明治なら、そりゃないよね。電気すらないもの」
「電気というのはなんだ?」
「家の中、あと夜だけど道も明るかったでしょ? あのあかりのことだよ。はつでんしょで作られた電気がとどけられて、町が明るい」
「ううむ、いまの人間はみながおかしなじゅつをおぼえたのか」
「だから、トクベツなじゅつじゃないんだよー」
「いや、おかしいぞ。しかも、馬よりもはやい鉄のはこがまちをはしりまわっている」
「それは車っていってねー」
私は今の日本に生まれたから当たり前と思っているけど、雪路から見たらおんみょうじゅつよりすごいもの。
森だった所には電車や車が走ってるし、たてものはコンクリートせいだし。
夜だって明るい。
私も私で、ご先祖さまと雪路があやかしとたたかっていた時代のそうぞうがつかない。
人をおそうあやかしなんて見かけないし、おんみょうじもサムライもいない。
私は天井をみあげる。
「ねえ雪路。雪路はどうして草凪が……私たちがここにいるとわかったの? 最後に会ってから百年はたっているけど」
「ニオイをたどった。わしは少しのあいだ山でねむっていた。目をさまして、草凪に会いたいと思った。時代がうつろっても、おぬしのニオイはかわらん。とくべつなニオイはわかる。草凪は、ほかの人とちがうニオイがする」
「…………そう」
ああ、雪路はただ友人に会いたかっただけなんだ。
友人が作ってくれた料理を「昨日のあれおいしかったよ。また作ってよ」と言っているだけなのだ。
あやかしと人間では、生きる時間がちがいすぎた。
私と父さんは友人の草凪さんの子孫だけど、草凪さんじゃない。
大切な友人の草凪ではないことに、きっと雪路は気づいていない。
なんだかちょっと目のおくがあつい。
「あなたの友人は、もうこの世にいないんだよ」なんて、本当のことを言えないよ。




