25 むかしむかしのとうふ料理(りょうり)
「これが百年以上つづくお店のみそなのね。いい香り。味も深いわ」
キッチンでみそのふくろを開けて、母さんが味見している。
父さんは冷ぞう庫からきぬごしどうふを出してきて、きいてくる。
「マコト。みそやのおばあちゃんは、「さかえやはみそ汁に入れるとうふをすりつぶしていた」と言っていたんだな?」
「うん。とうふ料理が人気のお店だったんだって。ほかに具が入ってたとは言ってないから、とうふのみそ汁でまちがいないと思うんだけど…………でもとうふのみそ汁って、わざわざとうふをつぶさないよね?」
「なるほどな」
父さんはすりこぎにとうふを入れて、ゴリゴリとつぶしはじめた。
とうふは、だんだんとクリームみたいになめらかになる。
「これでみそ汁に入れるなんてことはないな。何か工程が足りていない。とうふを入れるだけなら、つぶす必要なんてないんだから」
「他にもここに入れる?」
おばあちゃんにもっとくわしく聞いておけばよかったな。
あ、でもひでんレシピってやつで、おばあちゃんも知らないかもしれないけど。
ユカリちゃんがぴょこぴょこはねて、すりこぎをのぞきたそうにする。
父さんがそっとかかえあげて、見せてあげる。
「まっしろ」
「なあ。ユカリが食べたおつゆは、どんなかんじだった? これがそのまま入ってたんじゃないよな」
ユカリちゃんは首をかしげて、うーん。と考える。
「しろいかたまりが、いくつかはいってた。くさなぎは、このとうふはやわらかめのおもちみたいだって、いってた。ユカリはおもちをたべたことないから、わからない」
「モチ……ここに何かまぜて、とうふをすいとんみたいにしていたってことか。もち粉あたりか?」
雪路がシッポをふりふり、声をあげる。
「すいとんというのはなんだ」
「小麦粉を水でこねて、ゆでたものだよ。一口の大きさになったうどんみたいなかんじかな?」
「ふむう? うまいのか」
「おいしいよ。私は好き」
「わがはい、見てみたいのう」
雪路と小町がじっと見てくる。
これぜったいあとで作らないといけないやつ。
母さんがノートパソコンをたちあげてなにかけんさくした。
「ねえ、そのみそ汁、この本にのってるかもしれないわよ。豆腐百珍。江戸時代に出版された本で、とうふ料理が百しゅるいのっているんですって。これを参考にしていたかもしれないわよ」
「百……とうふだけでそんなにたくさんレシピがあるんだ。江戸時代って今よりも食材少なそうなのに」
「読んでみる価値はあるかもしれない。現代向けにほん訳されたものが電子しょせきにもなってるから、買ってみましょ」
母さんはサッとスマホをそうさして、本をダウンロードした。
そのまま私にスマホをパスしてきた。
「二百年前はまえの本をかえるなんてすごいね」
「ハッハッハ。なにをいうんだマコト。枕草子だって千年くらいむかしだろ」
「そりゃそうか」
訳して販売してくれた作家さまにかんしゃしないといけないね。
※豆腐百珍
1782年初版 実在する本。
とうふ料理を百しゅるい記した本で、庶民のあいだで大人気になった。




