表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電書化】元侯爵令嬢の辺境使用人ライフ  作者: ユタニ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/52

47.ブリザードの夜


翌朝、今朝も朝からばっちり吹雪いている。

完全にブリザードの来襲だ。


シーラは癖で、早くに起きてしまって大部屋に行ってみると、まだ誰もいなかった。

しょうがないから、食堂でお湯だけ貰って引き返し、自室でゆっくりとパンとチーズの朝食にする。


窓の外は猛吹雪だ。完全に日は上がりきっている筈なのに薄暗く、時折、風でガタガタと窓が震え、雪がガラスに叩きつける。


これは、確かに仕事にならないわね。

納得して、のんびり朝を過ごしてから大部屋に行ってみると、ちらほら人が居た。暖炉に火も付いていて暖かい。


昼前には、ほとんどのメイド達が集合して、分厚いカーペットを重ねた上に座り込んで手仕事に励む。

特にノルマはない。

メイド達の目的は暖かい部屋と、おしゃべりで、おしゃべりのついでの手仕事だ。


シーラもせっせと、ナターシャとリリー、サニーと共に刺繍や、サラマンダーの端切れを使った中敷きの作成に励んだ。


おやつ時には、ラム酒入りのコーヒーをウェストンが持ってきてくれる。甘くて美味しい。シナモンのたっぷり入った薄いクッキーが添えてあって、これも美味しかった。


夕食は、ウェストンがスープを作ってくれたので、スープとパン、干し肉、を皆で食べた。

夕食後、再び大部屋に戻る。ブリザードの日は、夕食後も大部屋に残る者がほとんどらしい。

リリーによると、自室に帰っても寒いから、寝る直前まで皆でここでダラダラ過ごして、部屋に戻ったら、さっと体を清めてベッドに入るのが基本だという。「明日も休みだし、夜は長いですよ」とリリーは楽しそうだ。


ナターシャは早めに引き揚げたけれど、シーラは基本に従ってリリーとサニーと何となく夜更かしをしてから部屋へと引き上げた。

大部屋では、最後はゴロゴロしながら、皆の恋の話なんかを聞き、ご満悦のシーラだ。


楽しかった。

ふふふ、と上機嫌で戻ってきたシーラだったが、その上機嫌は部屋に入ってしぼむ。


え、さむ。

自室が思っていたよりずっと寒い。夜更けまで留守にしてたので、部屋はすっかり冷えきっていた。

少し早めに戻って、暖炉に火を入れれば良かった、と後悔するが、もう寝るだけなので暖炉は諦める事にする。


うーん、でも、この寒さの中、寝れるかなあ、嫌な予感だわ。

そう思いながらも、シーラは体を清めて、寝巻きに着替え、ベッドに入ってみる。

布団は氷のように冷たかった。


ひゃあっ。


あまりの冷たさに悲鳴が出そうだ。


しばらく布団にくるまってみたけれど、シーラの体が冷えてしまった。

寝巻きが綿の薄い物のせいもあるだろう。


ガウンを羽織ってみたが、ガウンとて、綿の薄いもので、あまり暖かくはない。

実家から持ってきた寝巻きとガウンは、冬仕様に出来ていないのだ。


困ったな、、、。

手足が完全に冷えてしまって、このままでは眠れないだろう。


暖炉に火を付けて、部屋を暖めてからじゃないと寝るのは無理ね。

シーラはそう決めると、そっと部屋を出て1階まで薪を取りに行った。


城の廊下は最低限のランプだけ灯されていて薄暗く、寒いし、外の風の音が、ひゅー、ひゅー、と聞こえて何だか心細い。

薄い寝巻きとガウンでは、部屋よりも寒さがしみて、ますます体は冷えていく、歯がカチカチして鼻の頭がひんやりしてきた。


食堂でお湯を貰って帰った方がいいかしら?

でも、薪を持って、ポットも持てるかな、、、難しいわね。お湯は諦めよう。


シーラは、パタパタと小走りで薪を積んでいる玄関ホールまで行き、ひと束掴んで引き返す。


暗い廊下を食堂まで来た所で、食堂の暗がりから声を掛けられた。

「シーラ?」

「きゃあっ」

びっくりして、身を竦めると、暗がりから出て来たのはディランだった。


「ディラン様」

何だ、良かった、ディランだった。

心細い上に、びっくりしたので、ディランが出てきた事でシーラの顔は、へにょりと綻ぶ。

こんな夜更けに会うのは初めてで、変な感じがする。


「すまない、驚かせたな。何してるんだ」

「薪を取りに来てました」

「こんな時間に薪なんて、寒いのか?」

ディランは、シーラの持つ薪の束をひょいと掴んだ。持ってくれるみたいだ。


「はい。1日中、大部屋に居たので、部屋がすっかり冷えていて、このままでは寒くて眠れないので暖炉を使おうと」

「そうか」

すたすたと歩き出すディランの横をシーラは歩く。


「ディラン様は?眠れないんですか?」

「今朝はゆっくり寝たからな。もう少し起きてようかと思って。何か飲もうとお湯を貰いに来た」

「何か淹れましょうか?」

自然にそう提案すると、少しぎょっとされた。


「いや、こんな夜更けだし、いい」

「あ、、、そうか、そうですね」

時間が時間だけに、馴れ馴れしかったとシーラは反省する。

執務室に紅茶を持って行く訳ではないのだ。

変な提案をしてしまったな、と思いながら2階へと上がり、2階に着いた所でディランが言った。


「俺の部屋に来るか?」


「へっ?」

思わぬ申し出にシーラは変な声が出た。


「唇が紫色だ。俺の部屋なら1日中、籠っていたから暖かい」

「いえ、あの、でも、」

「凍えるあなたを置いていくのは心苦しいし、あなたは俺と2人でも、どうせ気にしないんだろう?」

少し、じと目で睨みながら言われた。


“何か淹れましょうか”発言が良くなかったみたいだ、やっぱり馴れ馴れしすぎたんだわ、とシーラは思う。


「心配しなくても、好きな女を傷付けるような事はしないし、嫌われるような事もしない」

「すっ、、、」

“好きな女”にシーラは、ぼっと赤くなった。


「いいから、来い」

ディランはすたすたと3階へと上り出した。

手にはシーラの薪ひと束を持ったままだ。


私の薪、、、、。


シーラは一瞬、逡巡したが、結局、廊下の寒さに負けてディランの後を追った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
きゃー好意を持ってからの強引はアリです!
[一言] おお!さらっと自然な行動ができるように(泣)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ