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遺跡研修?! 後編

半球陣の中で、フルッカさんが持つ魔本のページが全てハードカバーから外れて乱舞を始め、それに合わせてフルッカさんの全ての装備の輪郭があやふやな物となりだした!


「フルッカさんっ?」


マシンボンガンのカートリッジを交換しつつ、俺はかなり動揺した。

形を失ったバンド付き縁眼鏡がページの乱舞の中に消え遠くを見る目のフルッカさんは静かに唱えた。


「魔本・・黒頭巾(くろずきん)さん。2章。・・狼狩(おおかみが)り」


閃光と共に魔本は消え、形を失って逆巻くフルッカさんの装備は一瞬で変化した。それは、黒い頭巾、丈の短い古風な村娘の衣服、やや大き過ぎる黒い布の掛けられたバスケットっ。

眼鏡の無いフルッカさんの顔はそれまでのナチュラルメイクからバッチリメイクに変わり、表情も野性的な笑みを浮かべた物に変わっていた!


「変身する能力??」


「・・お婆さんに届け物があるから」


バスケットから鎖鎌(くさりがま)を5本を取り出し呟く黒頭巾フルッカさんっ。


「狼みはぁあっっ、(さば)くッ!!!!」


凄まじい殺気っ!! いや闇の力っ?!! 圧倒的な魔力を噴出させた黒頭巾フルッカさんは5本の鎖鎌を神速で放ち、下級アンデッドの大群を八つ裂きにして殲滅した!!!


「えーっ??!!!」


「エヘヘヘヘッッッ!!!! ザックザックぅううっ、エヘヘヘヘッッッ!!!!」


痙攣して悦ぶ黒頭巾フルッカさんっ。


「お、お婆さんに、お婆さんにっ、あっ、あっ! ・・うっ!!!」


どんな角度? というくらい仰け反って痙攣していた黒頭巾フルッカさんは絶頂に達し、そのまま白眼を剥いて気絶してしまった。

変化が解け、元の装備に戻り、虚空から黒頭巾さんというタイトルの魔本が出現し、スッとフルッカさんの胸の上に落ちた。


「・・・これが、魔本師っ!!」


召喚? 憑依? 妄想具現化??


「ケンスケっ! フルッカにポーション飲ませてやって! 魔本は体力を消耗するし、脱水状態にもなるからっ」


飛行魔法でアイスギガース2体の近くを飛んでいるノーザンロードさんが叫んできた。


「うッス」


確かに大汗もかいてるが、まぁ、うん。俺はポーションを取り出し、飲んでくれるかな? と思いつつ、フルッカさんの身体を起こして瓶の口を口元に持ってゆくと、


「っ!」


突如、白眼を剥いたまま俺の腕を取ると瓶の口に吸い付いてガブ飲みするフルッカさんっ!


「ぷはっ! 死ぬかと思ったっ。はぁはぁ・・ありがとうございます。毎回なんですコレ」


意識を取り戻し、自分でポーチから取り出した魔本石の欠片を使って魔力も回復させるフルッカさん。


「なんか、大変だね・・自分で動ける?」


「すいません、回復させても暫くは腰が抜けてしまうのと、魔力のコントロールができなくなるので。私のことは無益な、血の詰まった革袋(かわぶくろ)だと思って下さい」


「例えが怖いけど?! この状況で1人で離脱もさせられないか。ボックスっ、アンメイル!」


武装解除魔法で盾と剣を宙に出した魔方陣にしまい、ついでにマシンボンガンもしまい、俺はへたり込んでいるフルッカさんにしゃがんだまま背を向けた。


「どうぞ!」


「すいません」


フルッカさんは素直に背負わせてくれた。介助役がいることありきの能力なんだな。ポーチから取り戻した縄を調節して背負ったフルッカさんを固定する。

一旦鎧越しの胸の厚み云々といった邪心はシャットアウトする。言ってられんっ!


「さてと」


初介助でまごついちまった。状況を確認する。

ミックスホーントゴーレムは残9体! ドラドッジさんはかなり消耗している様子だっ。

めちゃデカいレイスジャイアントは残2体! ノーザンロードさんはノーダメに見えたが、アイスギガース1体はほぼ半壊っ。

ドラドッジさんだな! 俺ははポーチから魔法石の欠片を1つ取り出しで使い魔力を回復させ、結構距離がある上に激しく動いているドラドッジさんに左手を添えた右腕を差し向けた。集中する。


「・・ヒール! ヒール!! ヒール!!!」


初歩回復魔法しか使えないからガッツリ回復させようと思ったら連打するしかないっ。装備の損耗はともかくドラドッジさんの体力は全快させたっ!


「悪いの! ついでに何体か牽制してくれんか?!」


「了解っ!!」


俺は単発式の汎用グレネードガンを抜いた。

閃光弾は巻き込むか。ここは広いし、天井に穴も空いてる。俺は炎熱弾を装填した。


「しっかり狙って下さいね」


耳元で囁いてくるフルッカさん。


「了解・・じゃ、こっから動きながらになるんで、舌、気を付けてね」


「はい」


これ仕事ですから? 的な風に平静を装い、俺はドラドッジさんから離れた個体に炎熱弾を射ち、素早く再装填をし、さらに射つことを繰り返しだした。

グレネードガンは初速も精度イマイチで弾がデカいから風の影響も受け易いが、的は大きくどっかしら着弾すればよし、くらいの達成難度だ。

派手に燃やして数体を牽制すること自体は雑作もない。問題は、


「ウバァッ!!!」


「オォンッ!!!」


燃されて激昂したミックスホーントゴーレム達が、遺跡の瓦礫を投擲してきたり、大口を開けて負の衝撃波を放って反撃してくること!

俺はフルッカさんを背負ったまま逃げの一手だっ。すぐに射撃どころじゃなくなったっ。だが取り敢えず3体引き付けられた。

ドラドッジさんは9体1から6体1になった!


「スキル・ダブルフルゴングっ!!」


ミスリルウォーハンマーの大振りの一撃でミックスホーントゴーレムを1体粉砕するドラドッジさん! 両ハンマーに少しヒビが入ったが、


「ダブルメタルストームっ!!」


ウォーハンマーも砕けてしまったが、投擲技でさらに2体粉砕するドラドッジさん!! 残り6体だっ。

ドラドッジさんはすぐに宙に出した魔法陣からミスリルモールとポーションを取り出し、回避しながら器用にポーションを飲み干すと、俺達に遠距離に攻撃していた3体にも旋回しながら攻撃を始めた。


「ケンスケ! こっちはもういいぞいっ。おチビリーダーの方へっ!」


「了解っ!」


「おチビだって?!」


カチンと来たノーザンロードさんは半壊の1体で相討ちの形でもう1体レイスジャイアントを倒し、ほぼ無傷の1体で最後の1体と対峙していたが、よく見ると魔力をかなり消耗しているようだった。

魔法石の欠片を使う間が無いか。


「魔力減ってるみたいだけど、遠い」


ノーザンロードさんは飛行しながらアイスギガースを操ってる。近くの方が精度もパワーも上がるんだろう。


「ケンスケ君はマナフローは使えますか?」


「一応、でもヒールより苦手。直接触れられたら問題無いんだが・・」


「私も今はままならないですが、精度のフォローをします」


「助かる!」


俺は魔法石の欠片をまた1つ使ってから、ヒール連打の時と同じ要領で飛び回るノーザンロードさんに右腕を差し向ける。その腕にフルッカさんが後ろから右手をそっと重ねてきた。

魔力が伝わってくるっ。やれそうだ!


「ふぅ~・・マナフローっ!!」


ノーザンロードさんにっ、魔力命中っ!


「っ?! ふぉーっ! 来たぁっ!! オッラぁーーっっっ!!!!」


力を取り戻したノーザンロードさんはアイスギガースと魔力を呼応させ、猛烈なラッシュを浴びせ、アイスギガースの右腕が砕けながらも最後のレイスジャイアントを打ち倒した!!


「っしゃーっ!!! ナイスフォローだよケンスケ! 敬語はキープだけどファーストネーム呼びを許可してやんよっ?! アマネちゃんって呼びなっ!!」


「あ~、アマネ、さん。で大丈夫です」


「あーん?」


「アマネ! こっちも頼むぞいっ」


ドラドッジさんは2体倒していたのでミックスホーントゴーレムは残り4体になっていた。


「よっしっ! 任せなっ」


アマネさんは左腕1本になったアイスギガースでミックスホーントゴーレムを1体叩き潰し、あとはアマネさんとドラドッジさんで一方的にトドメを刺していった。


「近接戦の研修はまた今度ですね?」


「うッス」


囁やくフルッカさんの声がこそばゆい中、俺の遺跡研修はどうにか終わった・・

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