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遺跡研修?! 前編

お茶会から小一時間後、俺とアマネ・ノーザンロードさん、フルッカ・ストーンフルートさん、ドラドッジ・ムシュシューさんの4人は1枚の飛行絨毯(ひこうじゅうたん)に乗って上空を飛んでいた。

全員、日傘を差してる。絨毯はノーザンロードさんが操縦していた。


「飛行絨毯の大気コントロールのフォローはバッチリだが紫外線はヤバい。教練所とかの訓練では、慣れろ耐えろ忘れろ、って感じだったろうけど、普通に毎日の仕事だからな」


伸ばしていないが塗ってはいる自分のネイルを見ているノーザンロードさん。


「遊撃班は飛行移動が多いんです。ヒポグリフに乗る時は日傘は無理なんで日焼け止めと後でヒールかポーションを小まめに使用するのが大事です」


これから行く先の資料を開いてるストーンフルートさん。


「ワシはあんまり気にしとらんが、アマネとフルッカがワーワー言うからの」


「ワーワー言ってねーしっ」


「歳を取ってからが大変なんですよっ?」


不用意なことを言って詰められるムシュシューさん。


「・・日傘、キープするッス」


「そう堅苦しくしなくていいぞい? タメ語にファーストネームで話すといい」


おっ、フランクなスタンス! ありがたい。


「マジっすか? じゃあ、ドラドッジさん」


「うむ」


「私もフルッカでいいです。私の話し方はこれが楽だからなんで、気にしなくていいです」


「フルッカさん! 一人称は、我、じゃないん、だね?」


「それはもう忘れて!」


赤面するフルッカさん。


「あたしはまだ認めてないから敬語で。ファーストネーム呼びも禁止なっ! 縦ラインをキッチリさせてやんよっ?」


体育会なノーザンロードさん。

とにかく俺達はブラウンモルト村から1番近い遺跡、アルター遺跡へと飛行を続けた。

そこで新人研修、ってワケだ。



遺跡はほんとにすぐ近くだった。周辺はフェンスといくつもの魔除けの石像で囲われていた。


「思ったより大きいな・・」


普通の古代建築の残骸じゃない。幾何学的な紋様の奇妙な建築物の残骸が、地面から隆起したようにして崩れ、延々と敷地を埋めていた。

特に端の方はかなり風化が進んでいる。


「昔は採掘ラッシュで賑わったそうです。ブラウンモルト村もその時の宿場町が原形だとか」


「へぇ」


今じゃ完全に農村だが、分室がサラッと定着してる感じなのも村の成り立ちによるところもあるのかもな。

俺達は出入り口近くの番所の発着場に降りた。

番所は無人で、管理と警備する旧式の魔工ゴーレムが5体いるだけだった。

内部状況をゴーレム達に確認すると、俺達はすぐに番所を出た。


「よーしっ! ケンスケ! 手持ち装備はポーチに入れとく分とボックスに入れる分っ。厳選しとけよ? ボックス! メイル!」


ノーザンロードさんは収納魔法で宙に作った魔方陣に脱いだ制帽を持った左手を突っ込み、そのまま瞬間装備魔法を使って制服の上からローブ型の防護服と魔女風のキャノチエ帽子と短い杖を一瞬で身に纏った。カッコイイ。


「うッス。メイル、と」


俺も同じ手順で中量鎧とヘッドギアを身に付け、ミスリルブロードソードの鞘を背に、ミスリルシールドも留め具で背に背負い、腰裏のホルスターに汎用グレネードガンも装備した。


「メイルじゃっ。この遺跡の、アルターあの世横丁、とワシらが呼んどるルートは新人研修の定番での」


重量鎧とオープンヘルムを身に纏い、ミスリルウォーハンマーを左右に1本ずつ双手もろて持ちするドラドッジさん。


「これ、実は苦手なんです。ふぅ~・・メイルっ! わぁっ?!」


収納魔法の亜空間から飛び出してきたローブ型防護服に絡まってもがくフルッカさん。

防御特性の髪止めと、ミスリルレイピアの鞘は左の腰のベルトの留め具に問題無く固定できていた。布状の物の扱いが苦手らしい。

俺達はフルッカさんが自分の装備から脱出するのを待って、アルターあの世横丁のルートに入った。のだが・・


「ん~、おっかしいな?」


困惑してるノーザンロードさん。照明魔法でいくつか明かりを灯して遺跡内に入ったのだが、モンスターの気配がまるでなかった。

遺跡内はよく焚かれるらしい香の臭いが強かった。


「ここは既に綺麗に掃討はされておるんじゃが、遺跡の残骸の力で定期的アンデッドモンスターや原始的なゴーレム系モンスターが涌くはずなんじゃがの?」


「持ち回りで定期討伐している個人活動冒険者の方々が前回討伐した時は、このルートは除けてもらったはずですが?」


「番所のゴーレム達からもなんも情報無かったよね?」


何か起きてるのか?


「・・予定変更っ! 今日はケンスケの腕試しのはずだったけど、戦闘は普通に4人で全力でいくっ。撤退判断は早めに! 全員、脱出の鏡(だっしゅつのかがみ)はポーチとボックス、両方にキープしてるの確認!」


今回組まれた隊のリーダーでもあるノーザンロードさんは切り替えたようだ。


「了解っ!!」


俺達はリーダーに従い、テレポートで指定ポイントまで離脱できる魔法道具、脱出の鏡を1枚ずつポーチとボックスに仕込んでいるのを再確認した。



さらに進むと、かなり広いホールに出た。崩れた天井からいくらか日が差し、その下にたまった土や水溜まりから草や低い木が生えたりしている。

しかしその日の差さないホールの大部分に負の気配がいくつも集まり、そこからスケルトンやゴースト、といった低級のアンデッドモンスターや小型のストーンゴーレム等が発生してきた。


「なんだ。たぶん迷い込んだ強めの思念の死霊かたまたま発生した強個体に引き寄せられて、負の集約化(ふのしゅうやくか)で1ヵ所に集まっただけだね、どーってことないじゃん! これなら」


ノーザンロードさんが余裕を見せた途端、負の気配がさらに強く逆巻き低級アンデッドやゴーレムの集合体ミックスホーントゴーレムが11体も発生した!


「おおっ?! ま、まぁ大丈夫っ! ケンスケ! あたしら先輩トリオの実力は」


言い終わらせず、さらにさらに負の気配が強く逆巻き! 巨大なアンデッドの集合体巨人、レイスジャイアントが3体発生したっ!!!


「いやおかしいだろっ?! ・・そこかっ! アイスシュートっ!!」


凍結魔法をホールの天井近くの中途で崩れた梁の上に放つノーザンロードさん! そこには冥王信奉者のフード付きマントを着込んだ女が1人いたっ。

女は素早く飛び退いて凍結魔法を回避し、ニッと嗤ってテレポートの魔法で飛び去っていってしまった。


「クソッ、冥王信奉者が入り込んでやがったっ!」


「アマネっ、放置するには凶悪過ぎる! やるしかないぞいっ!」


魔本(まほん)、用意します!」


「ケンスケ! ジョブ、守護兵だよな? 補助頼む! 済んだらフルッカと組みな!」


研修どころじゃないなっ!


「了解! プロテクト! ブレッシングっ!!」


俺は物理防御魔法と祝福魔法を全員に掛けた。祝福魔法は闇耐性も付くが運気も上がる! 乱戦なら特に効果的なはずっ。


「よっしゃ! あたしがレイスジャイアントを! ドラドッジはミックスホーントゴーレムを! フルッカは魔本で雑魚掃討! ケンスケはフルッカをアレしろっ!」


「?!」


アレしろ??


「来いっ! アイスギガースっ!! うらぁーっ!!!」


ノーザンロードさんは氷の巨人を2体召喚し、レイスジャイアント3体に突撃させたっ。


「スキル・ミンチメーカーっ!! ふんふんふんっっ!!!」


ドラドッジさんは鈍器による単純連打突進技を発動させて雑魚を蹴散らしながらミックスホーントゴーレム群へと切り込みだしたっ。


「じゃあ、ケンスケ君、アレして下さいね。信じてます!」


フルッカさんはそう言ってポーチからだした1冊の魔本を開いて半球状の魔法式を周囲に展開させたっ。


「いやアレして、って何っ?!」


そうこうしているウチに、


「ウバァアァーーッッッ!!!」


「ネェエエエーーーッッッ!!!」


「モバゥウウーーーッッッ!!!」


ドラドッジさんの取り零しの雑魚の大群が喚き散らしながら迫ってくる!


「ああもうっ、盾と剣じゃ間に合わねぇヤツだっ!! ボックス!」


スゲェ近接戦の訓練してきたけど、俺は収納魔法で宙の魔方陣からマシンボンガンを取り出し、装填済みの銀の矢を低級アンデッドの大群に向かって掃射し始めた。

効くことは効く! 次々粉砕できてる! だが敵が多過ぎるっ!!


「フルッカさん! よくわかんないけどっ、アレするから! 手早く頼むよっ?!」


俺は射ちまくりつ尽きればカートリッジを交換し、フルッカさんは半球陣の中で開いた魔本に強烈に魔力を集中させていた。

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