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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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続ファジーネーブル

風吹く海が近いこともあって、空が抜けるよう青い。

ローミ州、冒険者ギルド本部の簡易な飛行船発着場に来ていた。

小型護送船は中々頑強そうだった。

転送門で飛ばすにしても、どこへ? というのがまず揉めているらしく、暫くは近くの上空で待機している大型船に勾留されるらしい。

俺以外の見送りはローミ州ギルドの人達と、ゼンミン3係長、それから決着後一時目覚めなくなったレイミと、後遺症が残った俺の左腕の手当ての為に3係長に同行してくれたザルビオさんだ。


「フハハハッ! ついに捕まえてやったぞっ?! 鳥女めっ!!」


軍の護送担当はなぜか、というか、さもありなん、と言うべきか? 黒金のディモーだった・・

封印の手錠を付けられ、手錠と繋がった封印の細鎖(細鎖)まで腰に巻かれてディモーに握られたレイミは素知らぬ顔をしていた。

そのまま軍に持っていかれたら敵わないと、カトラスとネフィートも同行していた。


「もっとじっくりたっぷり内臓の隅々まで治療したかったんだけど・・」


名残惜しそうなザルビオさんは内心は知らないが、レイミの罪状に関してはどの場面で顔を合わせても一切口に出さなかった。

そんな人もいる。


「もう十分だ」


取り敢えずレイミには敬遠されていたがっ。


「カトラス、頼んだよ?」


知り合いらしいゼンミン3係長。


「握り潰すには目立ち過ぎましたね。それに今後もニーベルング対応は続きます。まぁ最初からその想定」


「軍だけで問題無しっ!」


「・・諸説あるところです」


わりとセットで登場しがちだが、ディモーは得意ではない様子のカトラス。


「何か、熱烈なお別れは?」


ネフィートが表情を変えずに言ってきた。


「チッ」


久し振りに聞いたな、舌打ち。


「レイミ、一輪車、乗ってくれるんだろ?」


「ああ、まぁ」


「俺もとっておきのファジーネーブルのレシピ、教わっとくからな!」


「そうか・・・ケンスケ」


「ん?」


「またな」


レイミは苦手そうに微笑んでみせた。



俺に対する処分は来月一杯まで休暇、だった。因みに俺はリーラ州ギルド本部の密命で国の諜報部と連携してレイミの監視、監督、誘導を担当していた凄腕のルーキー。ということにされてしまった。

復帰後、話合わせるの地獄だな、と・・

とにかく暇になった俺は一週間程実家に帰り、何も事情を知らない家族に、


「ケンスケあんた、ニーベルングとかいう化け物が暴れて大変だったらしいのに何してたの? ギルドに就職したんでしょ? どっかで警備でもしてたの??」


なんて言われたりした。

俺はニーベルングなんかと関係無い、台風で破損していた実家の屋根の修理をしながら、


「そんな感じ」


とだけ応えといたよ。



骨休めを済むと、俺は久し振りにファジーネーブル市に繰り出し元職場のバーベキュー屋に、非番のオロロさんとユッチェさんと、それから普通に謹慎食らってたロドリーとノイノイさんとドルタマと向かった。


「料理もこれくらいシンプルな方が返っていいかもしれないねぇ」


「ノイノイさん、肉焼けてますよ?」


「ありがとぉ~」


「ケンスケ! 食事の後は腕立てだぞっ!」


「いや、吐いちゃうんで・・」


「はい! 秋の終わりの荒野は吉ですっ」


「なんの話だよ??」


それなりに盛り上がり、後日、懐かしのロンリーデインでファジーネーブルのレシピもゲットした!



ファジーネーブルの次は、興味があるらしい非番のカリントさんとヤッポちゃん、それから別に休みじゃないけど付いてきたエビィユーとカナヒコと、アンダーピープルの拠点、ミュ103に向かった。

俺も乗るのは初めての中層へのエレベーターに乗る。


「ほほぅっ、骨董だけど電動! ミスリル合金製かぁ」


「チュウベェさんも来たら良かったのにね」


「ディープフィッシュがおるせいで魚人系種族は難しいみたいやなぁ」


「ディープフィッシュって怖いんだよね? ヤッポ、嫌だよ」


「こんな顔やでぇっ?!」


変顔してヤッポちゃんをキャッキャッと喜ばせるカリントさん。


「・・地下でイチャイチャしてたんじゃないのぉ?」


エビィユーが囁いてきた。


「なんでだよっ?」


などと言ってる内に中層上部の簡易拠点に着き、エレベーターのドアが開くと、


「おーいっ!」


「待ってたぞっ?」


「新しい茸ありますよっ」


デンバにジョモーンにキノコ熊先生に、搭乗型ゴーレムに乗って「歓迎っ! 地上人どもっ!!」と横断幕を掲げたバガチョとアズミンと手下達が迎えに来てくれていた!

それなら1日大宴会になり、翌日はなぜかまた地下探検するハメになり、当然のように現れたディープフィッシュ群と交戦したり、もう休暇どころじゃなかったな・・



やはり非番のボウトゥーメさんとネッサリアさん、ディンとフルッカさんと一緒に釣りに出掛けたりもした。


「ケンスケ! 釣りで勝負だっ。勝った方がフルッカさんをお食事に誘うからな!」


「いや、俺と関係無く普通に誘えよ・・」


なんだかんだでディンと釣り対決になってしまった。

とある山村内の釣り場だった。特に観光地でもないけど、東方遊撃班の分室のあるブラウンモルト村に近く、近距離だから安い転送門も有り、穴場だった。


「ここは落ち着きますねぇ。読書がはかどりますねぇ」


釣り場に来たけど岸辺に置いた折り畳み椅子で、魔本ではなくただのミステリー小説を読んでいるフルッカさん。

タイトルは、湖畔の虐殺慕情、・・スリラー小説?


「くっ、ザリガニばかりだ! グランブレッシングを使ってもいいですか?」


なぜかザリガニばかり釣って不満気なネッサリアさん。


「ダメダメ~、作業になっちまうだろう?」


不正を認めないボウトゥーメさん。


「ケンスケ」


「はい」


「釣りは釣りしかしないからいいんだぜ?」


「・・ッスね」


どうも俺を休ませたいんだな、という意図は汲めた。俺、そんな疲れてるのかな??



非番のヒロシさんとアマネさんとドラドッジさんには再調査の結果、新しい探索エリアが出てきたアルター遺跡の深部に誘われた。


「ここじゃの。ケンスケ!」


案内されたのは古代のレリーフだった。


文字は俺には読めなかったが、そこに刻まれた画は、穴の底から日差しの先を飛ぶ鳥達を見上げる岩のような人の画から始まって、異形の神に祈り、供物を捧げ、異形の鳥が遣わされ、岩のような人同士の争いがあり、鳥を求め、光を恐れながら、岩のような人々が穴から出てゆく筋立てになっていた。


「学者の見解待ちではあるが、これは最初のニーベルングだ。彼らはアンダーピープル達の世界に暮らす、岩その物の種族だったらしい」


ヒロシさんが語りだした。


「地上に憧れた古代のニーベルング達は相当な対価と引き替えに、同族で争いながら、地上でどうにか暮らせる新しい身体を手に入れた。だが、それも不十分で、何より地上の種族達と争いになった」


「彼らはこのレリーフから地続きで物語を進めていた。でもいくつか枝分かれした小さな物語が、違う結末を導いていった。・・やり方は間違っていたんだろうけどね。彼らは、鳥に憧れた穴の底の人々だったんだよ」


アマネさんは哀しげにレリーフに触れていた。



俺が休暇に飽き飽きする頃、レイミの身柄は解放されたが、融和しない跳ねっ返りのニーベルング対策にまた駆り出されるようになった。

だが面会の許可は中々下りず、居場所もわからなかった。


俺はファジーネーブルのギルドの訓練所で自主練に明け暮れていた。謹慎明けのノイノイさんは事後処理が忙しく、訓練所にはいない。

今日は同じく謹慎明けだが、ノイノイさんとは予定が合わず、気が乗らないとサボりがちなロドリーに訓練に付き合ってもらっていた。


「ケンスケ、トリッキーな搦め手に頼り過ぎだぜ? もっとドーンと来いよ、ドーンとっ!」


「・・・」


大雑把な教官だなぁ。

疲れ知らずのロドリーとの訓練にうんざりしてきた俺が、切り上げようかと考えていると、砂地の稽古場にネフィートが無言で入ってきて、そのまま無言で歩み寄ってくる。


「・・独特な間合いの詰め方で来たぞ?」


「あ~、ネフィート! どうした? レイミになんかあったか?」


「特に変わりはないですが、面会の許可が取れましたよ?」


関心薄そうにそう告げてきた。



一番近い転送門から結構距離があった。普通にモンスターが出る荒野の一角だ。

次は自腹で飛行系の魔法道具を買ってこよう、と心に誓いながら、野良モンスターを退けつつどうにか魔除けの効いた古びた家に着いた。

ここに繋がった転送門への移動も手間取っていたから夕方になってしまった。

どう呼び掛けるべきか? というかドルタマの占い半端ないっ、等と俺が考えてると、


キコキコキコッ


謎の金属音が気配と共に近付いてきて、門が開けられ、敷地の外に一輪車に乗った動き易い格好をしたレイミが出てきて俺の周囲を周り始めた。


「子供の頃とはバランスが違い、最初は困惑した。ネフィートが最初に用意した車体は最新の上等な物で落ち着かないからこれにした。もうすっかり慣れた。見るがいい、ケンスケ」


レイミは事務作業か何かをするような何気ない調子でスピンしながら乗り回したり、左右に片足乗りだしたり、前後にホッピングしだしたり、サドルに片手を突いて逆立ちして見せたり、サドルに腹這いやうつぶせになって車体を走らせたり・・


「ぶはははっ!!」


「ん?」


俺は膝から崩れ落ちるように爆笑させられたっ。

レイミは安定する為に車体を軽く前後に漕ぎながら困惑した顔で俺を見下ろしている。


「拍手する物ではないのか? 性的な妄想を抱いた者もいたぞ?」


「性的てっ、ぶははっ! レイミっ、勘弁しろ!」


「笑い過ぎだっ。もういい」


レイミは不機嫌になって車体から降りてしまったが、俺は暫く笑っていた。



・・ファジーネーブルは簡単なカクテルだ。グラスに氷、ピーチリキュール、オレンジジュースを投入し、混ぜる。それだけ。

俺はケチらず厳選した氷河の氷と、スターピーチのリキュールと、キングネーブルオレンジの果汁を合わせ、教わった通りに慎重に混ぜ、一輪車コスチュームから極東風のいつもの格好に戻ったレイミに出した。

レイミの仮住まいの家は殺風景だが、清潔ではあった。よく見ると観葉植物等も置かれている。


「ファジーネーブルでございます」


「ほう」


レイミはわりとグイグイと呷った。


「ふぅ・・」


「どう?」


「眠くなる」


「えー?」


どういう評価?? だが、レイミは2杯、3杯とお代わりをオーダーし続け、酒ばかりはよくないと、俺は摘まみも作ることにした。

ふと見ると、グラスを手にレイミが声を圧し殺して泣いているのが見えた。


「・・・」


俺はそこら辺の優男ではない。バーベキュー屋精神に基づき料理に集中し、哀しみも鍋の中にしまった。

読んでくれてありがとうございました!

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