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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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希望の里 前編

教会の尖塔の上で 短杖(ワンド)型の風の魔道具を振るうニーベルング族は掲げたワンドの先に旋風を圧縮し始めた。

既にレイミにあちこち魂ごと切り裂かれ、昼間の日差しに身体を焼かれ続けて再生も儘ならない様子で、これが最後の一撃だろう。


「エアブレッシング!! レジスト! プロテクト! アイツ、相討ち上等だぞっ?!」


巨鳥(きょちょう)に変化し尖塔近くの街の上空を旋回するレイミの背に乗る俺は、補助魔法を重ね掛けして呼び掛けた。


(いつもの手でいくか?)


テレパシーで応えるレイミ。


「あ~・・ちゃんとキャッチしてくれよ?」


(いい加減、浮遊魔法くらい覚えろ)


「特性の違う相手と次から次に戦うから対応した補助魔法覚えるだけでカツカツなんだよっ」


(・・まぁいい。いくぞ!)


「ちょっ? おおっ!!」


レイミは急降下を始め、風の魔力を纏って錐揉み回転を始めた! 俺は慌ててゴーグルを下ろし、必死で巨鳥のレイミの背にしがみ付くっ!


「うぎぎっ」


補助魔法を盛ってなかったら鼓膜と頭の血流がイッてるとこだっ。


「レイミっ! 汚い裏切り者っ!!! 死ねばいいっ!!」


激昂し、圧縮された旋風の塊を投げ付けてくるニーベルング族っ!

それに正面から激突する巨鳥のレイミ!!

降下と回転の勢いと纏った風の魔力で相殺してゆくっ! 飛び散った烈風が教会や周囲の街を引き裂いていったっ。


「ケェエエンッッッ!!!!」


吠えて仰け反りながらもっ、レイミはニーベルングの風の玉を打ち消した!!

で、こっから俺の仕事っ!


「おぉー!! メイルっ!」


俺はレイミの背、首、頭と駆けて宙に飛び出しながら収納魔法の空間から聖骸(せいがい)の剣と聖骸の盾を取り出して装備っ!

レイミが羽ばたき、風の魔力で俺を崩れそうな尖塔の上のニーベルングに向けて撃ち出す!!


「雑魚人間めっ!!」


鼓連剣(つづみれんけん)っ!」


撃ってきたカマイタチの連打は剣の連打技で打ち消し、接近すると俺は大きく盾を構えたっ。


「なっ?!」


銅鑼(どら)打ちっ!!」


盾の魔力障壁で打ち据える技で突進する俺! 咄嗟に風の魔道具で張ってきた風の障壁を尖塔の屋根ごと吹き飛ばし、相手を後方の宙に投げ出してやった!

そこへ弾丸のように飛び込んできながら鳥人(ちょうじん)の姿に変化するレイミっ!


「散れ!!」


レイミは交錯しながらニーベルング族を風の魔道具ごと八つ裂きにした!!


「・・おーい、レイミ! こっちだ」


俺は屋根を無くし、崩れかけの尖塔の壁面に剣を突き立ててぶら下がっていた。


「キャッチする必要は無さそうだな、ケンスケ」


「いやあるだろっ、この塔、もう崩れるわっ!」


風を纏って浮き上がったまま回収をもったいつけるレイミとしばらく問答していた。


地下から抜け出してから3週間が過ぎていた。もう夏も終わりだ。

俺とレイミはニーベルング族の中でも冥王教団から魔道具を持ち出した個体や特殊な進化の兆候を見せた個体をまずは優先して狙い、さっきので20体を撃破していた。

最初の頃は国軍の断罪派の連中に狙われたりもしたが、戦果が明確になると連中の手出しも表立っては無くなってきていた。

勿論、無罪放免になったワケではないが・・


鳥人の姿のレイミに抱えられた間抜けな格好で地上に降りると、尖塔が崩れると同時にネフィート(ミュ103で初顔合わせした諜報部の若手)が物陰からぬっと姿を表した。


「お疲れ様です。ギルド中心に避難誘導を行いましたが教会や街の被害はそれなりに出ました。面倒になる前にとっとと街を去った方が良いでしょう。北の谷近くの野営地跡に連絡員を配置しています。そちらへ」


淡々と急かしてくるネフィート。


「次のターゲットは? 準備にせめて2日はくれよ?」


「ある種のカルト集団を形成しているようです。準備は考慮します」


「カルト集団?」


ニーベルング族が??


「詳細は連絡員に。ただ久し振りに東方遊撃班との連携になりそうですよ?」


「マジでっ?」


「どーでもいい」


「んだよ」


温度差がある中、


「レイミと人質奴隷の男だなっ!」


早くも街のガンランスを持った警察隊の連中が集まりだしたっ。つーか、人質奴隷の男って酷いな・・


「事後処理はしますが、私は直接の担当ではありません。それじゃ」


ネフィートはあっさり物陰から物陰へと素早く立ち去っていった。


「アイツ、雑いとこあるよな」


「いいから離れるぞ。撃ち手から近過ぎるな、防具も警察仕様で弱過ぎる・・少し走って建物の陰まで入るっ!」


片手だけ巨鳥化して一扇ぎして起こして烈風で牽制し、レイミはもう片方の腕で俺をヒョイっと抱えると教会の塀の裏手に向けて走りだした。


「いやっ、抱えなくていいよっ?」


「人質設定があるだろう?」


ニッと笑ってくるレイミ。


「う~・・」


カッコ悪いなぁ! なんにせよ、裏手に回って教会を弾除けに使えるようになると完全に巨鳥化して俺を背に乗せ、レイミは地上から飛び去っていった。



・・事前の工作チームが苦労して作った周囲を覆う結界を越える為の短距離転送門に空間転移してくると、奇妙な霧の立ち込める林の中だった。


「こっちでやす!」


林の陰からワーフィッシュのチュウベェさんが顔を出した。カリントさんとこのサポーターだ。


「うわっ、チュウベェさん久し振り!」


「そうでやすねぇ。えーと、姐さんも、どうも」


取り敢えず頭を下げるチュウベェさんだったが、


「・・・」


レイミはつーんっ、と無反応だった。


「レイミはいい感じに会話できるまで時間掛かるタイプだから! それより案内頼むぜ?」


「へい! ここは転送門がバレないように迷いの術を掛けられてるんでやすが、即席なもんで誰構わず迷わしちまうでっ、キノコの目印を頼りに抜けてゆきやす! 付いてきてくだせぇ」


「わかった。レイミもっ」


「・・キノコか」


お? キノコ熊先生思い出してるな。俺はスコっと忘れてたがっ。

とにかく俺達は霧の林に点在した赤いキノコを見ながら歩くチュウベェさんの後を追い、どうにか目当ての里の城壁が見える所まで出られた。


「もう大丈夫でやす! あっしはここまででやすが、カリントさんとヤッポ嬢ちゃんは既に潜入してやす。諜報部の連中と、現地ギルドと州軍は手筈通りで!」


「ありがとう、チャウベエさん」


「御苦労」


案内のワーフィッシュのチュウベェさんは殿様対応の、まだ変化していない極東風の衣を着たレイミに面食らいつつ来た道を戻っていった。


「この間のヤツは街中で暴れだしたからそれどころではなかったが、今回のヤツから、母、のことを聞きだしてやる。脳から直接な! クククッ・・」


片手を鉤爪化してほくそ笑むレイミ。2人になると急に饒舌になったが、さては緊張してたな?


「また敵の幹部みたいになってんぞ?」


「・・チッ」


鉤爪を引っ込めるレイミだった。


俺達はニーベルング族の中でもメインターゲットは大型繁殖個体、母、と定めていた。

レイミが復活させた大型繁殖個体は雌雄1対の個体だったが、どうも雌雄は父と母の2個体に分裂したらしい。

好戦的で動きの目立つ父は国軍中心で対応していて、結果的に俺達は母個体を狙うことになった。

何しろ倒さないとニーベルング狩りが終わらないどころか増えちまうからさ!


結界がある分? 案外簡素な造りの城壁を抜けて目的の隠れ郷の入った。


「ここが希望の里、か。ただの陰気な僻地郷だな」


霧は深く、人気(ひとけ)は少なかった。簡素なフード付きの僧服のような者を着た様々な種族の人々・・

この里を牛耳るニーベルング族はカルト集団の教主の座に収まっていた。

郷はこのカルトの聖地となっている。

連中の教義によれば苦しみから解放され、明日を信じられるようになるそうな。

まぁよくある洗脳と薬物を使ったカルトにも見えるが、何しろ教祖が魔道具か特殊進化した力を持つニーベルング族だ。

ただでは済みそうにない。


「言うね。資料通りなら近くに3階建ての建物がある。屋根に登ろう。霧で見通しは利かなくても、全体の確認くらいはできんだろ?」


「入る前から思っていたが、飛んだ方が早そうだが? 霧もある」


「霧の頭上を謎のデカい鳥の影が飛んでたら騒ぎになる」


巨鳥化はいつも離脱と戦闘と長距離移動にしか使ってないからピンときてないな。


「デカい鳥という言い方は好きじゃない。やめろ」


「・・大きな鳥さんがねっ」


「チッ」


ここで小競り合いしててもしょうがない。俺達は霧の中、取り敢えず3階建ての屋根に登っていった。霧のおかげで普通に移動する分にはそこそこ大胆にできる。

屋根から郷を一通り見渡せたが、霧の底の郷は夢の中のような景色だ。悪夢の方な。


「う~ん?」


双眼鏡を使い資料と合わせればざっとはわかるが、厳しいことは厳しい。


「探知系魔法は・・使わない方がいいか。レイミ、見えるか?」


俺のヘタクソな探知魔法は探知していることを探知され易いのだ!


「問題無い」


レイミは目元だけ猛禽類のそれに変化させて周囲を見回した。


「・・手筈が問題無く進んだ目印は全て確認できた。郷の形状も資料通り。だが、教主の館に生命の集約が見られる」


「生け贄か?」


意外と失踪者の報告は少ないようだが??


「・・悟られるリスクがあるからあまり強くは見れないが、それに類することを行っているな。冥府教団の真似のつもりか? ククッ」


「別に面白くないぜ?」


気が滅入るわ。


「まずはカリントさん達と合流しよう」


「回りくどいな。それ程の者達なのか? ケンスケ何人分の実力だ?」


「俺、何人分とかいう単位作らなくていいから!」


まぁ今の俺20人分くらいのパワーがありそうな2人と合流しに、俺達は霧の中、改めて移動を始めた。

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