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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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地上へ 前編

地下拠点ミュ103から地上まで約1キロメートル。エレベーターは維持コストの関係で上層、中層、下層の3段階に分かれる。

直通の転送門は過去の地上との抗争の経緯から無いが、下層上部と中層上部の簡易拠点には1ヵ所ずつ短距離転送門が設置されていた。

地上からは東方遊撃班から3名。国軍から7名。国の諜報部から2名降りてくる。

ミュ103運営は短距離転送門を使ったショートカットを認めなかった。


「アマネさんとドラドッジさんとフルッカさんは話がわかる人達だが・・」


「国軍と諜報部がダメだろ? 甘くねぇ」


「レイミさん」


「私の考えは変わらない」


「今のところ、吉と見た未来に変わりもないようですが?」


「お前は占いにかこ付けて誘導しているところがあるっ!」


「ふっふっふっ・・」


俺達は下層エレベーターの前でミュ103の自警団や運営スタッフと地上から使者を待っていた。

アズミンとバガチョも搭乗型ゴーレムに乗り込んで待ち構えていた。曰く、


アンダーピープルの武力を見せつけたるっ!!


とのことだ。

デンバとジョモーンはミュ103の運営1人と共に下層上部の簡易拠点に、案内と事前交渉の為に上がってくれていた。商売もあるんだろうが、世話になりっぱなしだ。


「来ます!」


エレベーターの深度進行(しんどしんこう)表示のランプが近付き、運営スタッフの1人のアンダーピープルが告げると、全員に緊張が走った。

気配と震動と駆動音が下り、静止した。

開閉ベルが鳴ると、ミュ103の運営スタッフが駆け寄り、安全柵を開ける。

続けてかなり大型のエレベーターの扉が開いた。

先頭はデンバとジョモーンだったが、


「っ!」


フルフェイスの兜をした国軍兵達は4連装のガンランスを装備。諜報部らしい陰気そうな2人は案外顔を晒し、比較的軽装だった。

そして、


「ケンスケっ!」


「ケンスケ君っ!」


「しぶといのぅ」


アマネさんとフルッカさんはこちらに駆けてきて、ドラドッジさんも続く!

国軍兵は動かず、諜報部の2人は鉄面皮(てつめんぴ)を通し、レイミを見ていた。


「アマネさんっ、フルッカさんっ、ドラドッジさんっ。無事でよかったッス」


「こっちの台詞だわっ」


「ホントによかったです・・」


「うむうむ。ノイノイ達もよく頑張ったの」


お、知り合いだっけな? ま、キャリアや立場からすると不思議ないか。


「いえ、皆で。アンダーピープルの皆さんも。それに・・」


ノイノイさんはレイミを振り返った。未だ封印のベルトを付けている。


「あんたがレイミね」


アマネさんがレイミに歩み寄り出し、氷属性の短杖(ワンド)を構えた。


「アマネさんっ」


間に入ろうとしたらドラドッジさんに肩を掴まれた。岩のように動かない。

魔力を込め、レイミにワンドを突き付けるアマネさん。レイミの体表がわずかにではあるが凍結してゆく! 動じないレイミ。


「話はざっと聞いた。いつかは誰かが暴発したんだろうけど、他でも無い、自分が、やらかして、それが済まずに拡がり続けてる、ってわかってんの?」


「罪は理解している。罰も受けよう。だが、我々が我々の回答を求めたこと。それその物に、何も後悔は無い」


これに国軍兵達が反応し、次々と発砲しだした!


「魔女めっ!」


「ぬけぬけとっ!」


最初の数発はアマネさんが拡大させた氷の障壁で防ぎっ、すぐに間に入ったドラドッジさんとロドニーとノイノイさんがそれぞれの武装で弾きだした!


「プロテクト! ブレッシング!」


俺は味方全員に補助魔法を掛けるっ。フルッカさんも今は完全に制御できるらしい黒頭巾さんな魔本を開いて周囲に鎖を展開させだした。


「おう? なんだぁ? 鳥女を引き渡すんじゃないのか??」


「やるんだったらやるわよっ?!」


搭乗型ゴーレムの2人も交戦の構えを見せ、デンバやジョモーン、ミュ103の運営や自警団は困惑してるっ。めちゃくちゃだ! と、


「は~いっ、やめやめっ!! なんですか? 学生じゃないですよねぇ?」


年長の方の諜報部らしき男が声を上げ、もう1人の若年の方の女が国軍兵の隊長? の男の喉元にミスリルナイフを突き付けてガンランスを下げさせ、全員の銃撃を止めた。


「申し遅れました、レイミさん、地下の方々、護送をしてくだすった方々。わたくし諜報部のマド・カトラスと申します」


カトラスは形だけ、丁寧に頭を下げてみせた。


「名乗りも必要か?」


喉元にナイフを突き付けられていた隊長らしき男は、意外と高い声で言うとおもむろににミスリルナイフに砂糖菓子のように握り潰した。


「下がれ、小娘っ」


一括された若年の方の諜報部員は特に反応も無く、一足飛びでカトラスの側に下がった。

隊長らしき男がフルフェイスの兜を取ると、どうやら女だった。極端に体格のいい女だっ。ゼンミン3係長の方がよほど華奢だ・・


「私は国軍少尉のガウラン・ディモーだ。私刑しに来たワケではないが、討伐の権限は持っている。忘れるなっ!」


ディモー、ロドニーとは違うタイプの脳筋か。

ここでレイミが口を開いたが、


「まずは取り調べだね! あたしらギルドの取り調べにそっちの人間の同伴は認めるけど、そっちの取り調べにもこっちの人間を同伴する。拒否は認めないわっ!」


ディモーとカトラスに対しアマネさんが宣言した。


「冒険者ギルドの素人尋問等信用なるものかっ!」


「あら~? 国軍内の所属先もはっきりしない自称少尉、のミス・ディモーさんに信用なんて言われてもねぇ」


「何をぅっ?!!」


「はい、もう結構。2度目ですよ? ディモー氏。我々諜報部員は活動の詳細なレポートを日々政府に提出していることをお忘れなく」


ナイフを突き付けたりはしなかったが、カトラスが間に入った。


「くっ・・」


「ノーザンロードさん。その条件で結構です。ですが、貴女方の意向がギルドの総意とも思えませんが?」


「それはお互い様でしょ?」


「ふっ」


カトラスはわずかに笑い、頭上から降り注いでいる日の光を見てから、レイミを見た。


「その綺麗な肌、日の光も克服しているのですね」


「これは、呪いだ」


レイミは淡々と応えた。



取り調べはギルド、国軍、諜報部の順で行われたが、国軍の取り調べ時によほど腹に据えかねたのか?


「ざっけんじゃないよぉっ??!!!」


とアマネさんが氷塊で取り調べに使っていた部屋を破壊してしまうアクシデントもあったが、なんとか場所を移して全て終えた。

諜報部の取り調べは、既に掴んでいる情報の照合と一部深掘りをしてゆくスタンスで質問項目は多いが案外事務的に進行したようだった。



午前中から始まった取り調べが済んだのは夜中だった。

レイミもさすがに疲れていたが、ドラドッジさんやフルッカさんのように交代せずにずっとレイミに張り付いていたアマネさんもグッタリしていた。

俺達はミュ103の公共宿泊施設のギルドメンバー用の部屋にいた。備え付けの魔工ラジオからジョモーンと、遂にゲスト出演した優越会の2人のラジオが放送されていた。


「はい、モグモグモグーン番外編! 今夜は誠に不本意ながら、特別でもないゲストを」


「だぁーっ! アンダーピープルぅぅっっ最高ぉっっ!!!!」


「アズミンですわぁああーっ!!! 聴いてる? はぁい、じゃあここからはアズミンの」


「うぉいっ! ここから、とかないぞぉっ? 構成無視ゆるさないんだぞっ?!」


「なんだぁっ?!」


「生意気よっ!」


ラジオは酷いことになっていた・・

デンバの方は運営や自警団と連携して国軍と諜報部の部屋の様子を伺っていた。

取り敢えず、ラジオのボリュームを下げ、俺はアマネさん達に向き直った。


「どうでした? 国軍と諜報部は?」


「ケンスケ。あたし達がレイミに味方する前提で話してるね」


「いやその・・」


ソファでポーションを飲んでいたアマネさんはため息をついた。


「まぁいいわ。2人、あとよろしく」


疲れ過ぎて、ドラドッジさんとフルッカさんにパスするアマネさん。


「どうもディモー氏は国軍の中でも強硬派の勢力から派遣されておる。レイミの能力はまだ値踏みしておるにせよ、機会があればすぐにでも始末するつもりだろうの」


「カトラスさん達は状況確認に終始していましたが、むしろ受け答えでレイミさんが協力可能な人物か見ていたように感じました」


倫理的というより諜報部の方が実利優先の指示を受けている、かも?


「地上は今、どうなってんだ? 地下で聞いた分じゃ、だいぶ混乱しているようだが」


ロドニーが聞くと、


「詳しい方、来ました」


ドルタマが不意に言い、


「ああ? バレましたか? 凄い精度ですね。スカウトしたいくらいですよ」


「っ?!」


突如、部屋の通気孔から声と気配がして、蓋が外され、中からカトラスが部屋に降りてきた!


「アンメイル!」


蓋を置き、身体についた汚れを収納魔法の空間に捨てるカトラス。


「さて、さっぱりしたところで・・レイミさん。現場判断ではありますが審査も一通り済んだので、貴女に依頼があります」


アマネさんがワンドを手にソファから立ち上がった。俺を含め、レイミ以外の全員が構える。


「なんだ? 罰は受けると言っているだろ? 何度言わせる?」


座ったままうんざり顔のレイミ。


「レイミさん。罰というのは1つの権利でしょう? 権利を行使するには義務を果たしてもらわないと」


「屁理屈を言いに来たのか?」


カトラスは肩を竦めた。


「逐次情報提供はしましょう。レイミさん、ニーベルングを滅ぼしませんか? あるいはこれ以上の罰が、他にあるでしょうか?」


カトラスは口元だけ笑みを浮かべて言った。

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