ミュ103
範囲攻撃か? レイミへの致命打か? どっちにしろやらせる筋合いじゃない!
ノイノイさんはニーベルング単体に対して熱線砲を撃ち、アズミンとバガチョは搭乗しているゴーレムの最大火力でモンスター群と甲殻種達に機銃と榴弾を撃ち込んだ。
「ぐっ?!」
怯むニーベルング! モンスター群は5割、甲殻種は3割は吹っ飛んだっ。
ニーベルングは勢いは衰えても渦をまだキープしているっ。俺とロドニーはグレネードガンで放電弾を撃ち込んで感電させ、さらに怯ませた!
レイミはウワバミのポーチから取り出したポーションと魔法石の欠片で自身の回復を行い、デンバとジョモーンは閃光玉を残存モンスター群に投げ付けて牽制し、ドルタマは耐久性の高い甲殻種達にアッシドクラウドの魔法を掛け強酸ガスで外骨格を弱体化させた!
「くっそっ! 雑魚どもっ」
「短慮が過ぎたな!!」
一時的に渦を殆んど維持できなくなったニーベルングにレイミが突進し、右の鉤爪で渦を6割方消し飛ばしっ、左足の鉤爪で魔剣を持つ右腕を切断した!
斬り飛ばされた腕は即座に冥翼王の力で白骨化して消滅し、魔剣のみが荒らされた草地に突き刺さって僅かに水を発生させていたが、腕の付け根の傷口は冥翼王の死の力とニーベルングの再生力が相殺し合って激しく蒸気を上げだしていた。
ニーベルングは残って4割の水を引き寄せて刃や槍に変えてレイミに応戦しだすっ。
再装填を終えたバガチョとアズミンは再びモンスター群と甲殻種に砲火を集中させ、モンスター群を残り1割に減らし、甲殻種は3割まで減らした。
だが、この段で生き残りのモンスター群と甲殻種達は散らばった上、的が大きく火力のあるバガチョとアズミンのゴーレムにトゲの射出や水魔法等による遠距離攻撃を連発して反撃しだし、2人を慌てさせたっ。
ノイノイさんは一旦、ニーベルングは置き、厄介や甲殻種の生き残りの数を減らしに掛かり、ドルタマは比較的大型で散らばっても狙い易いモンスター複数体にマナボムを撃ち込んで仕止めていた。
デンバとジョモーンは身軽に動き周りつつボウガンを構え、バガチョとアズミンを狙う遠距離攻撃個体達への牽制を始めている。
「ロドリー! ドルタマがそろそろヤバいっ」
まだバレてないが、ドルタマが一番守りも回避もザルいっ。
「わかった! ケンスケあの魔剣拾っとけっ」
「おおっ?」
ロドニーはエアステップで跳び上がっていった。
それもそうか、レイミが付いてるニーベルングはともかく人型を一応保ってる甲殻種達はアレ使えそうだもんな!
「よっしゃ、ブレッシング!」
俺は念を入れて祝福魔法を重ね、岩場から飛び出して、日の光の下で乱戦になりつつある濡れた草地に飛び出していったっ。
「どいた! どいた!!」
斬り合ってられないっ。俺はグレネードガンで炸裂弾を撃ちまくりながら魔剣に突進していった。
既に結構水溜まりを作っていた。闇の属性は強いが、それ自体が毒や呪いではないようだ。しかし地に刺さっただけで水を生むなんて相当な魔法道具だ。
「回収させてもらうぜっ?!」
俺は魔除けの札10数毎を投げ付けて魔剣の力を封じたっ。水溜まりと札数枚は弾け飛んだが、なんとか収まった。
「ボックス! アンメイル!」
ちょっと変則使用だが収納魔法で魔剣、水底の樹をしまい込んだ。
合わせて突進してきた外骨格がボロボロの甲殻種1体に炸裂弾を撃ち込んで仕止めた。
「さてと」
素早く確認する。地下のモンスターは残7体程度。甲殻種は15体ってとこか? バガチョとアズミンはゴーレムが中破して降りてボウガンを撃ってるが随分ヘタクソだ。
デンバとジョモーン、ロドニーにフォローされたドルタマは手堅い。ノイノイさんもスーツの武器をだいぶ消耗しているようだが、まだ大丈夫そうだ。
レイミはニーベルングの左腕も破壊し、纏った渦も2割程度に減らしていた。だが、レイミ本人も暴走しそうな危うさがあった。
「こっち、だよな!」
グレネードガンの代わりにミスリルの盾と剣に持ち代え、超高速で争っているレイミとニーベルングの方へ走り出した!
「レイミ!」
「っ! まだ早いっ」
「遅いくらいだぜっ!」
「雑魚未満のカスがっ!!」
酷い言われような上にニーベルングは渦の1割を使って、無数の水の矢を放ってきたっ。
「うおおーーっっ!!!」
俺は躱せるだけ躱し、斬り払えるだけ払い、残りは、
「銅鑼打ちっ!!」
盾の突進強打技で無理矢理突破した! 盾が砕かれ、あちこち怪我させられたが、
「プラスヒーリングっ!」
脱水気味になるが、回復して突進続行っ!!
「コイツっ?!」
「余所見をしてっ」
残り1割になった渦を右の鉤爪で斬り散らし、ニーベルングの胴を深々と背から生やした鋼のような片翼で斬り裂くレイミ!
「がぁっ!」
仰け反るニーベルング! 俺は詰めたっ。
「岩断ちっ!!」
レイミが付けた傷口をなぞって剣で斬って、ニーベルングの胴を両断してやったっ!
「ごぉおおっ?!!」
日の下に2つに分かれて落ち、青い炎で焼かれだすニーベルングっ。
「太陽か・・ハハッ。裏切り者よ、冥府の兵は我々ニーベルングだっ! 断じて貴様ではないっ。我々こそが真のニーベルングだっ!!! 勝利するぞっ、勝利っっ、ハッ、ハハハッッ!!!!」
ニーベルングは笑いながら燃え尽きていった。
「個の確立がまだ甘かったのだろう・・」
変化を解いたようだが、戻りきれない様子のレイミに聖水の小瓶を投げてやり、自分はポーションを飲むことにした。
「まぁなんとか凌げたさ」
モンスターは全て駆逐され、最後に残った甲殻種3体はロドリーの投擲槍とノイノイさんのスーツの拳打とデンバとジョモーンの矢で仕止められていた。
ドルタマは既にバテていて、アズミンは昏倒したバガチョを背負って慌てて岩陰に隠れているところだった。
ギリギリだったな・・
状況の進行からすると当然なのかもしれないが、俺達は最終日にして最も手強い相手を退け、ミュ103拠点に到着した。
そこは日の降り注ぐ、大穴の底の大型拠点だった。緑も多い。拠点というより街、だな。
拠点の運営にニーベルングが手勢を率いてここを狙っていたことは報せておいた。改めて守りの強化と各拠点の水晶通信網の強化、地上の人々との連携の確認を行うそうだ。
バガチョは速攻病院送りになり、アズミンはボロボロになったゴーレムの修理に掛かりきりになった。
俺、ロドリー、ノイノイさん、ドルタマはデンバとジョモーンにレイミを預け、4人だけで規模のあった公共宿泊施設の個室で今後の方針を話し合うことになった。
まだ、ここならばすぐに繋がる通信を地上と取っていない。
「軍や、国の諜報部よりかはマシだろうけど、ギルドにレイミを渡すとそれなりのことになると思うの」
「そもそも始末しろとか言われてなかったっけ?」
「やっぱりキープしろとも言われましたね」
「・・相当な罪で、被害もまだ止まってない。だが、レイミ達にそうさせた俺達の世の中、つーか、世界にもそれなりに非はあったとは、思わないではない、つーか・・」
言い訳じみてるな。参った。
「理由があったらメチャクチャしていいなら誰だってなんでもするぜ? でも、しないだろ? 今でも大人しくてる混血のヤツらもいるだろうし」
「大人しくしていて変わらなかったから起きてしまったんじゃないかな?」
「ノイノイさん、同調し過ぎですよ? ケンスケもだが、レイミが思ったよりいいヤツ、とか。償いの意識がある、とか。ニーベルング達に有効な力を持ってる、とか。被害を受けたヤツや遺族に関係無いぜ? 法もレイミを守らないだろうし」
「それでも、・・今日のニーベルングも言ってたけど、ただの戦力じゃなくて、レイミはもっと根本的な、この状況に必要な何か、なんじゃないか? ここで余所にパスして、任務完了で終わらせられるのか?」
ロドリーは腕を組んで黙り込んだ。
「あまり、詳しいことは話してくれないけれどね。レイミはレイミ達の答えの途中なんだと思う。私はそれを尊く思っちゃうな。ダメなのかな?」
「・・ドルタマ、何か見えるか?」
「鳥が飛んでゆくと吉。ケンスケも飛べばさらに吉。と出てます」
「なんだそりゃ? 2人で穴から飛んで逃げろって? 大雑把だろ・・」
俺は途方に暮れてしまった。
「回りクドいな。どうせロクなことは言いいやしないだろうが、本人にも聞いてみっか?」
ロドリーがそう言い、それ以上のアイディアは出なかった。
で、本人とデンバとジョモーンも個室に呼んでどうしたいか聞いてみると、
「お前達は何を言っている? 何も考える余地等無い。始末できないならギルドに私を引き渡せ。そこでどう扱われても、それが私にあるべき扱いだ。今さら逃げ隠れする思考は私に無い」
あまりにも予想通りの回答で、俺達はため息を吐くしかなかった。もうテコでも動かないのは確実だった。
俺達は腹を括って、アンダーピープル達の地上の交易用の拠点に仮設されていた冒険者ギルドの支部に連絡を入れた。
連絡後、そう言えば到着後に行っていなかったトイレに俺が向かうと、
「ケンスケ」
ロドリーが足早に追ってきた。なんか、俺よりちゃんとしたこと言うつもりだな。もう、めんどくせーな。と投げやりに考えていると、
「おらよ」
小石? かなんかが詰まった小袋を俺に無理から渡してきやがった。
「あ? なんだよっ?」
「連絡入れる前にデンバとジョモーンに買わせた宝石類だ。俺とノイノイさんとドルタマのカンパだ」
「はっ? 話違うだろっ?」
「道理は道理だろうがっ? お前はアホだから一通り言っといてやったんだよっ」
「はっ?」
「ああっ?」
暫く、睨み合いになったが俺の方が折れた。
「レイミは動かないぜ?」
「それにしたってだ。地上から降りてくるギルドの担当者がどんなヤツらかによっても状況違ってくるだろ? いいから持っとけっ。俺はさっきクソしたからじゃあなっ」
くるっ、と反転して廊下を去ってゆくロドリー。
「さっきクソしたからとか報告いらねーだろ?」
「業務連絡だろうがこの野郎っ」
「・・・」
俺は掌で意外と軽い小袋を浮かせてキャッチして確認した。
「借りとくぞっ、ロドリー!」
「7割方ノイノイさんだっ! 間違えんなよっ?!」
「金持ってねーのかよ。ったく」
とにかく、軍資金だけは手に入った。問題は当のレイミにまったくその気が無いことだな。
はぁ~っ、どうすっかなぁ・・




