邪血 後編
到着したミュ071では優越会の連中と宴会をするハメになっていた。
地上直通拠点に近い071の食事はほぼ地上と変わらない。淡水魚と藻が多いってくらいだ。美味いっ。
「ハッハッハッ! 引き続き明日は圧倒的運搬力を見せ付けてやろうぅっ!!」
「我々の優越性を証明しますよぉっ?! ホホッ」
手下達はどうにかミュ071に置いてゆかせることになったが、2人は搭乗型の魔工ゴーレム2体をチューンナップした上で俺達の運搬役をすると言って聞かない。
撃退された上に助けてもらった。ではなく、移動に関して大いに活躍した。という体でマウントを取れる形を維持したいらしい。
「遠間りしなきゃならなくなったし、まぁいいんじゃないか」
浅い領域の食事が口に合わず、ゲンナリしているデンバ。浅い領域にも甲殻種のディープフィッシュや手強いモンスター群が出張ってきたから1日踏破日程を伸ばす話もあったから、助かることは助かる。
機体に籠も付けてくれるらしいしな。
「運搬はいいけど、この後のラジオには出さないんだぞっ?」
警戒するジョモーン。ゆく先々でゲスト出演している。
「何ぃっ?!」
「狭量ですねっ」
優越会の連中が凄い文句を言い出していた。
ロドリーは食事もそこそこにノイノイさんに、地上に戻ってからのパーフェクトなデートプラン、を必死でプレゼンしていた。ブレないなコイツ。
・・俺はレイミに見た。もう右肩から下の右半身以外は傷1つ無い人間族に見える体になっている。
隣の席のドルタマが遺跡攻略から続く連日の強行軍に眠り足りないらしく、だらしなくレイミに寄っ掛かって爆睡していたがレイミは構わずにいた。
「身体はなんともないのか?」
「前より軽い。古傷の痛みも無い」
「・・乗っ取られたりしないのか?」
レイミは鼻で嗤った。
「そのつもりならすぐにできたろう? これは余興のような物なのだ。ヤツは私を滑稽だと思っていたからな」
滑稽か。
「その割には随分あんたに構ってる」
「いや、私がヤツに構い過ぎたんだろう。あの茸熊と変わらん」
茸熊てっ、レイミは自分のまっさらな左手と岩のような特徴のある右手を見比べた。
「私は、アレの空虚さに勝手にシンパシーを感じて、アレに真っ当な焦燥を思い出させてしまったのかもな」
「なんか難しいな」
「そうか」
「舌打ちしないんだ」
「・・うるさい」
ここから、もう話し掛けるなオーラを出されちまった。
地下の旅6日目! ミュ071を朝一で出発した俺達は、ルート変更をした遠回り移動の都合上、川のようになった地下水脈の1つをどうしても越える必要があった。
モンスターはともかくディープフィッシュ達は厄介で、警戒したがドルタマの占いで所持品等を水脈に落とさず小一時間以内であれば問題無し、と出たのでそのまま優越会コンビのゴーレムを飛行モードにして水脈を越えてゆくことになった。
「深部の監視拠点の連中が少し心配だな・・」
闇の向こうに流れてゆく水脈を見ながらデンバはポツリと呟いていた。
水脈を越え、さらに進むと、すぐに遮光ゴーグルを掛けながらジョモーンが叫んだ。
「見るんだぞ!」
洞窟の先の天井から光が差している! ルナレイや陰火じゃない! 寒色の無い白い光!! 地面に草花も生えているっ。
「日光だっ! 日光ッスよノイノイさんっ」
「ほんとだねっ、眩しいね!」
「レイミ、地上の光だ」
始末云々はもう考えていなかった。ギルドに引き渡す、ことになるんだろうな・・
「ああ」
「・・・」
レイミだけでなくドルタマも微妙な顔をしていた。なんだ?
「・・ここでわたくしとアンダーピープルの4人は待機した方が良いと出ています」
「何? どうした??」
「この先で避け難い強敵・・これは、レイミの力に近い・・」
「ニーベルングかっ?!」
「・・おそらく。水脈を通りショートカットして、拠点、ミュ103に向かっているようです! モンスターやディープフィッシュ達らしき気配も連れていますっ」
俺達は日の差す場所でゴーレムを止めさせた。目の前の日差しの下がちょっとした野原になっている。草花の匂いなんて久々な気がしたが、それどころじゃないか。
「ドルタマ、確かなのかよ?」
ロドリーだけでなくレイミ以外はニーベルングと直に遭遇したことはなかった。
「はい、こんな強い気配は間違えません」
「私も少し感じる。だが、私が交戦した繁殖個体の気配じゃない。仔だろう」
「ニーベルングも日に弱いのか?」
デンバも聞いた。撤退も考えているようだ。
「そのはずだ。混血の我々も直射日光に長くは当たれば冬の日差しでも酷く消耗させられた」
「ミュ103と連絡は? スーツの通信は届きそうにないみたい」
既に試してはいたらしいノイノイさん。
「文字通信だけでも携帯水晶じゃまだ遠いな」
「最初の攻撃する意思と力にわたくしとアンダーピープルの4人は耐えられないようですが、ここで待ち構えるのであれば! 勝機がありますっ」
「なんだ? ニーベルング??」
「地上で暴れてるってヤツらですか?」
優越会の2人は困惑していた。
「・・やれる、か?」
俺は懐かしい温かい光の差す、相当な深さのある天井の裂け目を目を細めて見上げた。
ドルタマとアンダーピープルの4人を地上の光の差す場所に残し、俺、ロドリー、ノイノイさん、レイミの4人でしっかり武装し、補助魔法も掛けて暫く先へ進むと、
「来る! 確かだっ。右手の壁の向こうっ! 突っ込んでくるぞ!!」
「っ!!!」
俺達にもすぐに気配がわかった。レイミや冥翼王と同系統の闇の気配!
「皆、気をしっかり!」
ノイノイさんが言った直後っ、右手の壁は多重に斬り裂かれた上でぶち破られ、奇怪な剣を持った岩の肌を持つ男が現れた!
「これがニーベルング」
資料の通りの姿ではあったが、現実感は薄かった。既に絶滅したはずの種だ。
「・・ああ~? ドブ臭い混血の気配がすると思ったら、お前か。この裏切り者めっ!!」
生物であるかのように形態を変化させる剣でレイミに襲い掛かってくるニーベルング!
レイミは1発ボウガンを射ったが奇怪な剣に弾かれ、即座にボウガンを捨てて冥翼王の力で変化して応戦を始めた。
速い! 手出しし難いが、ニーベルング本体よりもその背後から遅れて殺到してきた地下のモンスター群と甲殻種のディープフィッシュ達が始末に負えなさそうだっ。
「ケンスケ君!」
「すいませんっ」
俺は急いでノイノイさんのゴーレムスーツの背部にしがみ付いた!
「ケンスケ! 変なとこ触んなよっ?」
「触ってねーしっ」
「行くよ! レイミもっ」
ノイノイさんはゴーレムスーツを加速させて来た道を戻りだし、ロドリーはエアステップのスキルを利かせて高速で後を追ってきて、レイミもニーベルングと争いながら続いた!
モンスターと甲殻種達も追いすがるっ。
「なんだっ? 罠にでもハメるかっ?! ハハッ! 思考が雑魚だな! 半端な血の出来損ないがっ」
煽るニーベルング!
「私はもう混血のニーベルングとも言えないっ、冥翼王に滑稽な呪いを受けた者だ!」
右半身も完全に鳥の怪人の姿に変わるが理性は保っている様子のレイミ!
「気に入らない! 俺達は見ていたっ。雑に復活させられたっ! 下等の蟲の卵のような中からな! 己は哀れだとっ、君の悪いヤツ!! 氷の冥翼王の意図がまるでわからないが、お前はっ! 明確に! 地上の者どもよりも我らに大して侮辱的な存在だ!! その虚ろな借り物の姿っ! 何者かになるつもりかっ?! 我らより高等だと?! 絶対に許さんっ!! 今日、贋物のその血の全てを持って死ねっ!!!」
拡大させた奇怪な剣でレイミを斬り付けるニーベルング! 無傷で済まず、全身から出血するレイミっ。
「プラスヒーリング!!」
水分までは戻らないだろうが即、回復してやった!
「ああっ? 地上のヤツらと馴れ合いやがって! ウォーターランスっ!!」
ニーベルングは数十の水の槍を発生させて先行する俺達に放ってきた! 迫る水の槍っ。
「うおおっ?」
「避けるからっ」
「当たるかよ!」
ノイノイさんとロドリーは必死で回避しながら通路を駆け、光差す場所まで抜けた! せっかくの地下の草地も水の爆撃でメチャクチャにされたが、全て凌いだノイノイさんとロドニーは判定して迎え討つ構えを取った。
俺もくっ付いてると邪魔な上にロドリーに怒られるから素早くノイノイさんの背から飛び降りて、近くの岩場に転がるように飛び込んだ。
チラっと確認すると、アンダーピープルの4人とドルタマは予定通りこの空間の高所の岩陰に待機していた。よしっ。やってやる!
間を置かず、
「日の元なら俺達に勝てるとぉっ?!」
ニーベルングとレイミが争いながら通路を抜けてきた! 背後からモンスター群と甲殻種達も溢れ出すっ。
ニーベルングと甲殻種、モンスター群の一部は体表を日光で多少は焦がされていたが、怯む様子は無い!
「雑魚の思考だっ! 魔剣、水底の樹よぉっ!!」
ニーベルングは魔剣を中心にウォーターランスの魔法の着弾であちこちに発生した水溜り等から水分を掻き集めっ、宙に激しく渦を巻き起こし始めたっ!!




