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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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邪血 中編

少々気まずくなってしまったがミュ034でクリフと別れ、それから地下の旅4日目の拠点ミュ058に俺達は到着していた。

ジョモーンとデンバが今の状況でのルート取りに慣れてきたのと、相変わらずドルタマの占いが冴えていて4日目はディープフィッシュとの交戦も無く、まともな戦闘を一度も行わずに到着できていた。

アンダーピープルの拠点特有の宿屋代わりの共同体運営の宿泊施設(どちらかと言うと入浴施設がメインで拠点の共同浴場を兼ねているようだ)で風呂に入り、少し早めの夕食になった。


「美味っ」


レイミとアンダーピープルの2人以外の地上組の俺達はミュ058の食事の美味さに感動していた!

穀類や肉の乾物が多くなってきているのに加え、生野菜やフルーツまであるっ。量は特盛ではなくなっていたが塩気が付いてきていて、そんなに辛くもなかった。


「浅い領域は地上と食べ物が似ているからな。俺達からするとちょっとしょっぱいし、辛さも足りない気がする」


デンバはげんなり顔をしていた。ジョモーン共々、特に味の濃い煮込み料理等は避け、辛味のミックススパイスを振り掛けて食事を取っていた。


「レイミはどうだ?」


聞いてみる。


「腹を壊さない物ならなんでもいい」


「おお、ワイルドだな」


「・・・」


もう話さないオーラ、を出されてしまった。う~む、手強い。


「レイミ、クリフのヤツは当分、ミュ034で茸の解析だかなんだかをしてる。水晶通信で、なんか詫び入れとけよ」


急に正論入れてくるロドリー!


「私は悪くない」


「おまっ」


ロドリーが怒り出しそうだったが、隣のノイノイさんが肩に手を置いて止め、レイミに向き直った。


「急にたくさん話し掛けられてビックリしちゃったよね? 文字通信でいいから気が向いたら今、旅をしていることを書いて送ってみたら?」


「旅、じゃない。護送だ。地上に着けばすぐに処刑されればまだマシ、といったくらいだろう」


言い終わるなり席を立とうとしたから、右隣に座っていた俺は咄嗟にレイミの札の貼られた左手を取って止めちまった。

ピリッと札が内部で高まった魔力で火花のような現象が起きた。


「食事、まだ残ってるし、もったいないぜ? 牛乳を使ったババロアも後で出るみたいだ」


目が、合ってる。刃物のように険しい目付きだが、目の奥が随分幼くて困惑させられた。


「ミルク料理が吉と出てますっ! ここで食べないと部屋に戻ってから延々ノイノイさんに気にされるとも出ておりますっ」


「・・チッ。食べればいいんだろうっ?」


レイミは俺の手を振りほどき、席に着についてややヤケクソ気味にガツガツと食べ始めた。

この後、レイミはノイノイさんとドルタマとジョモーンの監督の元、なぜかミュ058のババロアの味の品評文をクリフに送り付け、程無く「僕もババロア好き」と返信が来ると「私は特にババロアは好きではない」と憮然としていた。


ま、レイミの件はともかく、夜、俺達は地上の様子に関してこの拠点でわかる範囲で情報を整理してみることにした。

まずレイミの話通り復活していたニーベルング族は成長してリーラ州を中心に各地て暗躍を始めていた。

いずれの固体もレベル25前後。意外と低い。小規模隊でも撃破可能な程度だが夜戦に完全適応し、治癒能力もあり倒し難いそうだ。

また個体数が非常に多く個々の自我に従ってバラバラに行動し、冥王教団の意に必ずしも従わないので予測不能なところがあって対応し辛い。厄介!

軍やギルドはまず大量にニーベルング族を産み出す大型繁殖固体の行方を追う方針を固めていた。

俺達への指示はギルド内にレイミの処分優先派と交渉材料優先派に分かれだしていて、当座移送に専念しろという物に変わっていた。

そんなホイホイと殺せ、殺すな、話変えられてもな・・



うんざりさせられつつ翌朝、ミュ058の離脱用転送門でショートカットした俺達はミュ071の地下拠点を目指し移動を開始した。

地上との交易による各拠点の発達や闇の属性の低下の影響でモンスターは少なく、強壮な個体も少なくなっていた。

移動は快調だったのだが、


「はいストップです。この先のドーム型の空間」


ドルタマが止めてきた。


「またディープフィッシュか? 勘弁しろよ」


辟易した様子のロドリー。


「いえ、間抜けな気配が2つ・・それに引っ張られるより脆弱な意識の個体群・・地底優越会ですね」


「もうっ、めんどくさーい。迂回できないかなぁ」


「できるぞ」


「遠回りだがそれがいい。ヤツら拠点から遠いとメチャクチャなことしてくるから」


「何してくんだよ・・」


迷惑過ぎるっ。

俺達は付き合ってられないと、迂回しようとしたが、


「あっ!」


またドルタマが何か探知した。


「ドルタマ、今度はなんだよ?」


「異様な・・ディープフィッシュ? いや甲羅があるような・・」


甲殻種(こうかくしゅ)のディープフィッシュかっ?!」


「こんな浅い領域にっ??」


動揺するデンバとジョモーン。


「甲殻種ってのは?」


「より凶悪で、意志疎通が全くできないヤツらだぞ?!」


「そいつらが優越会のヤツらの方に向かってます。ドーム型の空間には通路の穴が多くて、そこから四方八方取り囲んで襲う思考の流れですね。相当空腹です! 知性が高いのに虫のような思考で、相容れませんっ」


「それは・・全滅するな」


「しょうもないヤツらだけど、可哀想だぞ?」


「放っておけ。夢から覚めて死ねるなら上等だろう」


手厳しいレイミ!


「う~、ドルタマちゃん。勝算あるかな?」


「護りを固めた上で、レイミの冥翼王の力を使えば勝てるでしょう。ん~、レイミにケンスケを付けるとより吉、と出てます」


「俺?」


「必要無い」


カチンときた。


「長引くと暴走しないか? それ」


「問題無い」


「・・あるっ!」


「チッ」


結局、俺がレイミに付く形で俺達を待ち構えているであろう優越会の連中をレスキューしにゆくことになった。不条理ではある・・



大急ぎした結果、連中が甲殻種とやらに襲われる前にドーム型の空間に到着できた。

既に全員にブレッシングとプロテクトは掛けている。


「おおっ?! なんだ? 何を急いでいるっ? ちょっと待てっ・・アズミン!」


「わかってますわよっ」


バガチョとアズミン達優越会の連中はティータイムに興じていたようだが、慌てて、側に停めていた相当旧式の搭乗型改造魔工ゴーレムに乗り込みだした。

起動するゴーレム達!


「コイツらこんな物持ってたのか・・」


「コネと資金だけはあるからな」


冷めた顔のデンバ。


「あーはっはっはっ! 見よっ、圧倒的な地底優越会の最新戦力っ!!」


「汚ならしい邪血の女を連れた地上人どもっ、今度こそ思い知らせてやりましょうっ!!」


「・・こんなヤツらを助けるのか?」


相手が単純な分、煽り耐性低めなレイミ。


「ゴーレムに全員乗れた時点で被害は減らせましたが、物量と、状況が悪いです。早く場所を変えるが吉です!」


「バガチョ! アズミン! ここに甲殻種のディープフィッシュが迫ってるんだぞ? 袋叩きにされるから場所を移すんだぞっ?!」


どよめく優越会っ!


「なんだと? ジョモーンっ!」


「いやっ、バガチョ! これは罠だわっ。嫌でも私達にDJの座を渡さないつもりですよ!」


「今、ラジオ関係無いんだぞっ?!」


「ええいっ、者どもっ、突撃ですわっ!!」


「おいっ、アズミン?!」


バガチョの方はいくらか冷静だったが、オーディションの恨み? があるアズミンは7割方の手下を引き連れて搭乗型ゴーレムで突っ込んできた!!


「あーっ、運命が錯綜し過ぎて読めなくなっちゃいました!」


頭を抱えるドルタマっ。


「ドルタマは甲殻種の探知に専念っ! デンバ達はバガチョを説得っ、誘導! 残りでアズミン達を取り敢えず止めようっ、こりゃ脱出する所までは持ってけそうにない!」


「だなっ!」


「やってみようっ!」


「力は使わないぞ? 手加減し難い」


アズミン達のゴーレムの武器は遠距離は回転式機銃と大砲。近距離は巨体による体当たりと踏みつけ、鈍器型の左手による打撃だ。いずれも精度は低いがパワーはそこそこある!


「くっそっ」


ジョモーン達のバガチョ達の説得は上手くいった感じで、甲殻種が来ないはずの俺達が来た通路に誘導を始めていたが、俺達はやっつけるワケにもゆかず手こずってしまった。そうこうしてる内に、


「来ますっ! 来た通路以外全方位っ!!」


ドルタマが言った直後! 気配を消して接近していた異形の甲殻種ディープフィッシュ達がほぼ全ての横穴や通路から飛び出してきた!! 100体以上はいるっ。甲殻類ベースの亜人! 1種ではなく複数種が入り混じり「キシキシキシッッ」と耳障りな声を出していた。


「わぁーっ?! 甲殻種っ???」


驚愕するアズミン達!


「だから言ったろ?! さっさとバガチョ達と合流して立て直せっ」


「う~っ、地上人のクセにぃーっ!」


悔しがりながらもアズミン達はバガチョ達の方へと大人しく後退していった。


「まず減らそうっ!!」


ノイノイさんが熱線砲を撃って1割は減らしてくれたが、連射はできず、何しろ完全に囲まれてるっ!


「加減の必要は無いな!」


レイミはウワバミのポーチにボウガンをしまい、左腕の冥翼王の力を解放したっ。


「ケンスケとか言ったな? 私に付いているんだろ?!」


挑発的に言って、甲殻種達に魂を砕く鉤爪で襲い掛かるレイミ! 一気に蹴散らしてゆくっ。


「甘くみんなよっ!」


俺も必死で追い付いて取り零しを斬り伏せていった。

戦況は一時混乱したが、レイミの超火力と、ロドリーの支援を受けたノイノイさんの大技、ドルタマの援護も受けた合流後の優越会の連中の集中砲火で5割は削り、どうにか安定してきた。だが、


「グルルッッ」


冥翼王の力を振るうレイミの様子がただ事じゃない! 左半身全てと頭部全て、右肩まで変化が及び、意識が飛び掛けているように見えたっ!


「レイミ! 限界だろっ? 聖水を使うっ」


「グルッ・・まだだっ、コイツらは硬く攻撃性も高い! お前達は脆弱だっ」


絞り出すように応えるレイミ。


「そんな守ってくれるキャラだっけ?」


「・・恐ろしいのだ」


「え?」


「私はもう教団幹部でも混血の探求者でもない。社会への復讐者でもなくなってしまった。私はコイツらに近い。魂を引き裂いた時、わかる。コイツらは暗闇の底で悦びと安寧の中にいる。善悪の人の軸を棄て、混沌に身を委ねて解放されている。私は、これらに近い。楽になりたいのだ。その恥知らずさが、恐ろしい」


俺は岩断ちのスキルで、蟹だか貝だかよくわからん亜人を真っ二つにした。残り4割ってとこか。

俺は迷わず聖水の瓶を3本、後ろからレイミにぶちまけた。


「がぁっ?!」


強制的に変化を解かれた衝撃で一瞬白眼を剥いて仰け反るレイミ。即、甲殻種達が殺到したが、俺が抱えて飛び退いた。横目で見ると、ロドリーとノイノイさんは乱戦中だ。となると、


「ドルタマっ!」


「見えてました! マナボムっ!!」


魔法石の欠片3つを対価に溜めを終えていたドルタマが爆破魔法を十数発纏めて発動させて、追い縋ってきた固体群を消し飛ばした。あと、3割5分ってとこだ!


「・・なんの、つもりだ?」


「プラスヒール」


腕を離し、魔法石の欠片1つを対価に自分とレイミに回復魔法を掛ける。ついでにウワバミのポーチから取り出した弾倉取り付け済みの自分のボウガンを投げ渡した。


「あんま深刻ぶるなよ? 人ならみっともないのは皆そうさ。どっかちょっとでも俺らに寄っ掛かてきてるなら、悪い気はしない」


「私の罪は」


「それはそれ、これはこれだ! 来たぞっ、レイミ!」


「・・早く解除し過ぎるからだっ」


文句言いつつ、援護はしてくれた。それから、それなり苦労はしたが、どうにか被害は出さずに甲殻種達を撃退できた。

当然、ミュ071への迅速に移動する為に優越会の連中のゴーレムの肩や背や頭に乗せてもらった。


「地底優越会の圧倒的運搬力を甘受させてやろう!」


「運搬後も私達の優越性は不変ですがねっ! この件は美談としてラジオで話すとよいでしょうっ。ホホホホッ!」


とかなんとか言っていたが、まぁ全員でスルーしてやったさ。あ~、すげぇ疲れたぜ・・

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