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将来有望冒険者ケンスケっ!!  作者: 大石次郎


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カグチ火山へ

オパル基地の戦いから4日後、俺はブラウンモルト村からみて南のイズガン浮遊平原(ふゆうへいげん)の州軍基地に来ていた。

イズガン浮遊平原は浮遊石(ふゆうせき)の多い平地で、州軍基地も浮遊石の集合体である浮遊島(ふゆうとう)の1つにあった。


「プラスヒーリングっ!」


ユニコーンの杖を手に、講堂を利用した仮設病棟で中位治癒魔法で応急手当の済んだ患者を回復させる。

重傷者なのですぐ全快とはいかないが、まぁこれで大丈夫だろう。

俺はこの4日の間に今回のクエスト本体では支援役だなと割り切り、プラスヒーリングの習得と苦手だったキュアポイズンとマナフローの練度アップに専念していた。

そりゃ2ヶ月後にメチャ強ボスと再戦だっ! くらいのスケジュールなら戦士として修行しまくりたいところだが、相手はたった数日でガンガン成長するっ。

自分の持ち場を全うするさ。


「杖、魔力が切れてきたから交換お願いします」


手近なワーフォックスの看護師さんに魔力切れのユニコーンの杖を渡した。


「わっちに任せな」


「ん?」


看護師はエビィユーだったっ。


「ケンケケっ、ケンスケ! 治療班に回されてんの?」


「いいだろ別にっ、あんたも輸血パックをチョロまかすなよっ?」


「ケンケケっ! 杖の換えをすぐ持ってきてやるっ。お国の予算もようやく利いてきやがったかんなっ」


看護師の格好をしたエビィユーは素早い身のこなしで、慌ただしい仮設病棟を駆けていった。


「ったく、人手足りないんだろうけど人選ってもんがあるぜ」


俺は杖が届くまでいつの間にかゴチャついていた自分の範囲の医薬品等を整理しだした。



風の属性の冥翼王はこのイズガン浮遊平原の颶風(ぐふう)のピラミッドを2日前に占拠していた。

浮遊島に設置されたリーラ州の鳥人(ワーバード)族の聖地だ。

風のマナの集まる場所ではあったが、大量の風の素材が備蓄されているワケではなく、ワーバード達による警備が厳重なのでギルドや州軍も後手に回ってしまった。

ギリギリ襲撃直前に情報がどうにか入って、非戦闘員は離脱できたが200名あまりの警備担当者や居合わせた戦闘対応者のワーバード達が不十分な備えで迎撃に当たり、玉砕してしまっている。

10歳児程度の姿に成長していた風の冥翼王は、たった2日の違いで火や土の幼体と段違いの魔力を有していた。

随伴する冥王信奉者達も単なる指示役ではなく戦闘員で、オパル基地の時とは何もかも違っていたようだ。

同日、やはり成長していた水と雷の冥翼王も各地を強襲しており、リーラ州の冒険者ギルドと州軍は大混乱になった。

俺達東方遊撃班を含む東方エリアのギルドメンバーは火と土の冥翼王戦で持ち道具や装備、戦闘用素材等を消耗していたので支援に周り、風の冥翼王は南部ギルドと中央ギルドが担当。

雷の冥翼王は西部ギルドと北部ギルドが担当。水の冥翼王はリーラ州周辺州のギルド選抜連合が担当となり、今日3所一斉に反転攻勢となっていた。

州軍基地のある飛行島をギリギリまで近付けてる颶風のピラミッドには今、第5陣が投入されている。今治療しているのは第3陣の人達。直に撤収を始めた第4陣の人達に差し代わるはずだ。


「・・・」


杖を使っているとはいえ、ちょっとフラついてきた。もう杖の交換も10本は越えている。そろそろポーション飲んどくか。

俺はウワパミのポーチからポーションの瓶を取り出して飲もうとしたが、


「はふんっっ」


急にそう遠くない場所で、場違いなセクシーな声がして、ザルビオ・モモイーさんが昏倒してしまった。


「あっ、問題無いですぅっ! ちょっと過労ですのでぇ~っ」


ユッチェさんがどうにか冷や汗混じりの笑顔でごまかし、モモイーさんを抱えて慌てて退室していった。

モモイーさん、治療フェチだかんな。こんなに大勢の重傷者、彼女のキャパを越えちまったんだろう・・


「東方遊撃班、アレだな」


俺は気まずく呟き、血と薬品の臭いが入り交じる仮設病棟でカフェイン入りのポーションを飲んだ。


それから最終の第8陣でも倒し切れず、インターバルの長かった第1陣と第2陣の混成の第9陣を投入し、ようやく風の冥翼王を打ち倒せた!

水と雷の冥翼王もそれぞれ相当に苦労し、どうにか今日の内に、討ち取れたようだ。

残るは氷と木の冥翼王の2体のみだが、一連の戦いで、リーラ州のギルドと州軍はすっかり損耗してしまった・・



翌日、ブラウンモルト分室で、それぞれ持ち場で活動し休息が足りず据わった目をしている俺、アマネさん、ドラドッジさん、オロロさん、カリントさん、ヤッポちゃん、チュウベエさんはヒロシさんに会議室に集められていた。


「3係長は過労でな、ちょっと休んでもらった」


ザワつく俺達。


「問題無い! ・・冥翼王も残り2体だ。だが、リーラ州で隊員自体の損耗がほぼ出てないのは最初に対応に当たった俺達東部エリアのギルドだけだ」


「風当たり強くなってるよね?」


うんざり顔のアマネさん。


「ああ、まぁな。特に3係はな・・係長もツラいところだ」


「誰が担当してもこの規模の攻勢はどうしよもあらへんって、ゼンミンさんも気にしはらんでええよ」


「・・ありがとうカリント。だが、行動で示していかないとなっ」


ヒロシさんは投影宝珠を起動させリーラ州の全体図を映した。


「諜報部の調べでは連中、再生力の高い木の冥翼王を州都リーラティアラにぶつけるつもりらしい」


「マズいのっ、避難させんと! 人口が多い」


「それは勿論だ。これまでの交戦で冥翼王の犠牲者は七百数十名といったところだが、諜報部の調べでは拉致や信徒を提供する等して交戦とは別に千数百名は犠牲になっている。相当なもんだが、さらに一桁増えたら目もあてられん」


「ヒロシ、州都には州軍と国軍が集まりだしてるとも聞いたが?」


オロロさんは州軍出身でツテがあるみたいだ。


「そっちは国軍と州軍で対応する。さらに進化しているだろうが、これまでのデータもある。対応は可能だろう。だが、これは露骨に連中の陽動だ」


「本命は氷の冥翼王ですかい?」


さっきからストローで何杯も水を飲んできるチュウベエさん。まず、サポーターが会議に呼ばれることが早々無いから緊張しているらしい。


「単に適材適所といったところなんだろうが、氷の冥翼王は信奉者達の拠点にいる。連中は被害が最大になったタイミングで負の奇跡の実行を行うはずだ」


「何、する気なんッスかね? 天変地異、とか?」


想像がつかない。そもそもなんで冥王なんて信奉するかがわからなかった。


「いや、今回一連の騒ぎを仕込んだのは冥王信奉者の中でも急進的な、ニーベルングの混血者達だ。これまで調べからも、ヤツらの目的はただ1つだろう。それは」


「純血のニーベルング族の復活。あの人達は他の人間や亜人族を怖がって、憎んでいるから。・・でもきっと、甦った純血のニーベルング族はあの人達のことを認めないのに」


ずっと黙っていたヤッポちゃんが悲しげに言った。



それから数時間後には耐熱装備で固めた俺達は、先日オパル基地で討ち取られ火の冥翼王を警戒されて完全封鎖されていたリーラ州南東の端にあるカグチ火山の転送門にテレポートしてきた。

すぐ動けて対応できそうなのが俺達だけだった。

俺の守護兵としてのレベルは18。この間からそんな上がってないが、魔法習得の特訓のお陰で魔力や精神力の評価は上がっていた。物理スキルの馬力はかなり上がってるはずだ! だがここは、


「あっつっ?!」


ドライサウナかと。


「最悪だわ、速過ぎた初雪って言ってるじゃんか・・」


「日干しになりそうでやす・・」


転送はカグチ神殿の敷地内にあったが、既に暑いっ、と言うか熱い!

神殿は火山内部にある。普通の火山なら頭オカシイ配置だが、ここ火神(かじん)の祝福を受けた聖地だ。火神の祝福を受けたリーラ州の火神教会の総本山!

よっぽど火神の機嫌を損ねない限り、活動エリアを間違えなければ火山活動で被害は受けない。

ただし神殿の屋外と、外気や地熱と隔絶されていない場所は程度の差はあれ高温だっ!

氷属性のアマネさんとワーフィッシュのチュウベエさんがヤバいので、俺達は急いで屋内に避難した。

中へ入るとすぐに大神官のところに通された。年輩の竜人(ワードラゴン)族だった。まずワードラゴン自体があまり俗世間と関わらない。ちょっと前までただの料理人だった俺はこんな間近でワードラゴンを見たのは初めてだった。


「せめて昨日の内に伝えてもらえればこんな強行をさせなかったんだが・・」


ワードラゴンの大神官は複雑そうだった。


「申し訳無い。相手の出方が急な上、各方面の調整が二転三転しておりまして。今回の太古火の矛(たいこかのほこ)の回収も、ほぼ我々東方遊撃班の独断です」


大神官は小さな炎の溜め息をついた。


「早きは短慮なれど遅きは多くを失うともいいます。よいでしょう、我らが火の神も冥王の増長を見過ごしはしません。協力しましょう・・グランブレッシングっ!!」


強力な祝福が俺達全員に付与された。


「求められ品々は一通りは用意させました。されどカグチ火山の禁域(きんいき)は魔物の巣窟となっております。くれぐれもお気を付けて」


嫌な予感しかないこと言われつつ、俺達は神殿で用意してくれた強力な氷属性の護りと大気の護りを身に付け、そして、


「これはっ、骨董品のようですがっ?!」


全力で冷や汗をかくチュウベエさん! 神殿の隠し通路の先の水の無い船着き場のような場所には1隻の、煌めく水を纏う金魚のような形の魔工飛行挺が浮いたまま係留されていた。


「実際骨董ですが、炎への耐性は一級品ですよ?」


水の無い船着き場担当の神官は事も無げ言うっ。


「これで、行くのかぁ・・」


俺達は戦々恐々とするしかなかった。

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