第四章 5話 陸路
そして船は何事もなく、ノルマン人達の根城である港へついた。
ハシムが港に待たせていた従者達に荷物を下ろさせている間、行きの駄賃としてモモタウロスは、ノルマン人達に葉っぱと蜂蜜と葡萄酒を渡した。
ワインすらあまり見たことが無い彼らに、蒸留した葡萄酒を渡し飲んでみるように勧めるモモタウロス。
彼らからしたら、ブリテン島で奢ってもらった蜂蜜酒のたぐいなのだろうと樽に詰まったその酒を蛇口から直に飲んでみた。
その葡萄酒の飲み口は、辛くて焼けるようだが、香りは奥深くスモークともフルーツとも言いようが無いとても芳醇な香りのする初めてづくしの酒。
美味すぎて思わずガブ飲みしてふーっと息を吐いて立ちあがろうとすると転けてしまった。
これまたビックリする位にその酒は酔うのである。
「がぶ飲みするんじゃないわよ!貴重なのよコレは!
作るの大変なのにー」
モモタウロスは、ノルマン人の言葉で嗜めたあと改めて彼らに礼を言って別れた。
船着場から荷を積み終わり、準備万端なハシムとその従者達と共に一路カルタゴ軍が駐屯するシチリア島を目指した。
この時初めてモモタウロスは、カルタゴの隣国ヌミビアからわざわざ取り寄せた赤茶の肌した非常に体躯が良い馬を見た。
ハシム曰く、「道中の荷物持ちと、到着したら売り込みをするんだよ。コレも目玉商品だからね、売れるぞー。」
とニヤニヤ笑い、馬の尻を摩りながら皮算用するハシム。
何とも商魂逞しい限りである。