行いの末路
クリスタルとルーグは食肉加工施設を出て、次の施設に向かう。
区域の様子は変わらず荒れている個所が多い。
街灯が割れていたり道路の舗装も剥がれていたりと、何処も修復が必要そうである。
「思ったより手が回っていないな。治安維持に限界が来ているな。」
「ここの治安維持は誰もやりたがらない。当たり前だが、生前前科持ちの奴ばかりだからな。だが、手は打たないと俺達の失態だ。ルーグ、次の施設を見たら城に戻って、早急に対策を練るぞ。」
「了解。」
喧嘩が建物から聞こえる。
あちこちで食料を求める人がいる。
それらを無視して、二人は駆け足で施設に向かう。
この国で、一番非道とも言える施設に。
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「ヴぁあああああああああああああ!!!!」
「止めてくれッ!! 止めてくれぇぇぇぇぇえ!!!!!!」
施設の内部は、名状しがたい悲鳴や断末魔で満ちている。
その発生源は、機械に繋がれた大勢の人々。
全員手足を拘束され、自害出来ないように口には『処置』がされている。
そんな彼らを、二人はただ『当たり前の事として』見ていた。
「ここは『異常なし』だな。自害者もいない。」
「自身の起こしてきた出来事の被害者の『追体験システム』も正常に起動している。魔力搾取も問題ない。」
二人は機械や魔法式のチェックを進めていく。
その間ずっと聞こえる悲鳴や断末魔が耳に刺さる。
クリスタルが眉を寄せて煩わしそうに言う。
「『追体験システム』は性格の修正に良いが、これだけの悲鳴やら何やらを聞くのはちょっとうるさいな。何とかしたいところだな。」
「さすがに声帯除去は手間だし、人体損傷は出来る範囲でやりたくないからな。防音・消音方法を考えて、今度実践してみようか。」
二人は機械を弄り、設備を整え何事も無かったように去っていく。
既に非人道的ではあるものの、それでも出来る範囲で工夫して人体に被害を出したくはない。
そのための設備を考えつつ。
ここの人間達は、ここでの生命活動を終えるまで、普通の生活は許されてはいないが。