魔力搾取者と特殊労働
『魔力搾取者』と言われる身分の者の住まう区域に来た、クリスタルとルーグ。
そこの区域と『特殊労働』の様子の視察は・・・。
魔力搾取される身分
・生前の自身の行いで苦しんだ者の追体験をしたり
貴族の視察を行った数日後。
クリスタルとルーグはいつも視察で着ている旅人風の服を着て、とある場所に来ている。
場所は城からも貴族街からも離れた、断崖絶壁の盆地。
侵入方法は空を飛んで入るか、移動魔法を使うしか手立てはない。
二人はクリスタルの『空間移動』の能力で区域に入る。
もとは美しかったのが分かる、レンガ造りの建物が並ぶ。
しかし、それも見る影は無く。
ゴミは放置され、建物の壊れた箇所は放置され、割れた窓は板で打ちっぱなしである。
建物内の窓を覗けば、殴り合いこそないが、胸ぐらをつかんでの喧嘩が行われている。
それを見たクリスタルがぼやく。
「相変わらず、ここは治安が良くないな。」
「仕方がないだろう。ここの『魔力搾取区域』は、生前の行いが特段悪かった連中しかいないんだから。」
『魔力搾取地区』。
ここは『生前の行いが特に悪かった者』が『魔力を対価に住まわされる地区』である。
一日一回、生きるのに支障がないまで魔力を奪われ、その上で『特殊労働』というものをさせられる。
そのうえで生前の行いに反省の色が多少ある者が、この地上での生活を多少ながら送れる。
それでもこの有様である。
ルーグがクリスタルの後ろに回り、軽く後ろを見渡す。
先の喧嘩がヒートアップしたのか、物が後ろから飛んでくる。、
それを手で撃ち落とし、クリスタルに物が当たらないようにする。
「ここは急ぎ足で行くぞ。治安改善をしないとまずいが、それは後にしよう。」
「そうだな、物飛んでくるのはアウトだろ。さっさと『特殊労働』の視察に行くか。」
少し遠くにある、大きな建物。
其処へ二人は速足で向かう。
何人もの擦れた様子の人とすれ違う。
それが、今の区域の様子の象徴の様のようであった。
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たどり着いた建物では、区域の者が『特殊労働』をしていた。
魔力を使いながら彼らは牛や豚などの家畜の処理をしている。
今回の視察の『特殊労働』である。
血まみれになりながらも仕事をこなす彼らを、マジックミラー越しにクリスタルとルーグは眺める。
「働いている様子は変わりないな。さすがに食肉加工のメンバーは真面目な奴らが多いな。」
「ここは『魔力搾取者』の中でも『生前の行いに反省のある者』が集まっているんだろう。だからじゃないか?」
「ふむ・・・・。こういう奴らの為にも、何とか住宅街の修理や治安をどうにかしないとな。」
腕を組みつつ悩むクリスタルに、持っているペンで自身の頭をつつくルーグ。
この辺りの区域の仕事を任せても問題なく、また受注してくれる業者は相当少ない。
「出来る範囲で業者を手配してみよう。それか、城の魔法使いの部隊に直してもらおう。」
「それも手だな。本当は業者手配して経済回したいところだが、この際仕方がないな。」
魔力を奪われつつも、作業の手を止めない彼らを眺める。
国に住まう者達の為に、何を優先するべきか。
それは経済か、早急な対応か。
国をまとめる者として、二人は共に頭を悩ませる。
「ルーグは早急に業者の手配できるか、手配を進めてくれ。その間、俺はこの区域の修繕の見積もりを出しておく。」
「了解。・・・・、なぁ、視察が終わったら真っ先にこの案件を進めてもいいか?」
「構わん。お前の必要とする優先順位でやってくれ。」
ルーグにも思うところがあるのか、その目は少し遠い。
クリスタルも彼の様子を分かって、意見を承認する。
何とも言えない様子のルーグを連れて、クリスタルも一通り建物内の作業スペースを見て回る。
この建物や『特殊労働』に異常が見当たらない事を確認して、二人は建物を後にした。
向かう先は、ここでも生活出来ない程の者達が居る場所だ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は以前お話に上がっていた『魔力搾取者』について、そして『特殊労働』についてのお話でした。
この身分の者でも、反省をしていれば生活は出来ます。
皆がやりたがらない仕事(今回は解体作業)を行えば、荒れた区域でも生きていけます。
次回は『魔力搾取者』の中でも『生活を許されない者』にピックアップしたお話です。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!