死者の国へようこそ
レイレード王国における、『入国者』の入国時の様子。
彼らは始めにどのような待遇を受けるのだろうか?
周りには、様々な種族の者が大勢いる。
彼らは騒然としていた。
皆先ほどまで『居た』場所とは違う所に居るからだ。
背後には遠目に見た事のないレンガ造りの家が立ち並ぶ。
そして目の前には、見た事もない程の大きさの、青みががった水晶で出来た城がある。
城は左右対称な造りで、その素材と相まって幻想的だ。
「ここは何処か。」
「何故自分は『生きているのか』。」
皆その事でざわついていた。
その最中、城の中から兵士が20名程出てくる。
最後に出て来た老兵が騒然としている人々に声をかける。
「皆さま、私がこの状況をご説明いたします。どうぞ、お静かに。」
皆「何事か」と思いつつ、少しずつ静かになる。
老兵が静かな声で人々に話しを始める。
「御承知か分かりかねますが、皆様は『お亡くなりになりました』。ここは『死者の国』。皆様は死者になったために、ここにお越し下さる事になりました。」
人々が再び騒然となる。
今度は騒ぎも起きている。
兵士が優しく取り押さえるのを眺めつつ、老兵は話を続ける。
「混乱するのも無理はございません。亡くなる事を自覚されないまま此処に来られる方もございます・・・・。」
老兵は『亡くなった人々』に静かに歩み寄る。
「此処で皆様には『カウンセリング』と『生前の行いが分かる魔法』を受けて頂き、その後『国での過ごし方』を説明させて頂きます。どうぞ、こちらへ。」
老兵は城の横にある大きな別館へ誘導する。
『亡くなった人々』の大半は、一先ず大人しくついて行く。
中には説明を受けて暴れる者もいるものの、兵士に半ば連れていかれる様に誘導されている。
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「皆様、少々落ち着かれましたでしょうか?」
老兵はとある一室に集まった『彼ら』へ声をかける。
ここは宿舎の一室であり、入室時の入り口以外に二か所ドアがある部屋だ。
一週間ほど宿舎に泊まった『彼ら』は、カウンセリングを受けていた。
「最初にこの国に来られた際にご説明いたしましたが、貴方方は亡くなられた方。『死者』であり、この国『レイレード王国の入国者』でもあります。貴方方はここで第二の人生を送る事が出来ます。拒否権もございますので、ご安心ください。」
適時カウンセリングを受けたからか、辺りに居る者達は落ち着いている者が多い。
それでも気分が落ち込んでいる者がいたり、まだ興奮冷めやらぬ者がいたりもする。
「皆様、まだ気分が不安定なのも無理はございません。ですがカウンセリングでもお話いたしましたが、まず『ここで暮らすか否か』を決めていただく必要がございます。『居住希望者が何名いるか』を確認せねばなりません。」
老兵は『入口以外のドアのひとつ』を指す。
「『居住希望者』はこちらへ。」
そして反対にある『もうひとつのドア』を指す。
「『居住を希望しない方』はこちらへ入って下さい。」
殆どの者は『居住希望者』のドアをくぐる。
中には『希望しない者』のドアをくぐる者もいる。
全員がそれぞれドアをくぐったのを見て、老兵は『居住希望者』のドアに入り、そこで待機している『居住希望者』に案内をする。
「では今から身分を決めさせていただきます。皆様、そのまま待機をして下さい。」
『身分』という言葉に、一同はざわつく。
『レイレード王国は、差別のない国。』
それが有名な話だからだ。
「『差別が禁止の国』で、身分制度が存在しているのか?」
「どういう事だ?」
皆のざわめきを一度落ち着かせてから、老兵が何かの魔法をかける。
各自の体が淡い光に包まれている。
殆どの者の光は青色だ。
老兵が魔法を唱え終えると、ざわめきの回答をする。
「我が国の『差別禁止』とは、『生まれながら持ったものに対しての差別』でございます。只今皆様にかけた魔法は、『生前の行いが分かる魔法』でございます。それによって、この国での身分を決めさせて頂いております。青い光は『一般市民』の身分でございますね。」
その質問に対して、声をあげる者がいた。
興奮が冷めやらぬ様子の者だ。
「ちょっと! 私の光、赤色だったのだけれども? これはどういう意味かしら!?」
「俺もだ。赤色は、『一般市民』じゃないってのか!?」
「そうでしたか。では説明いたしますので、赤色の方は別室へどうぞ。」
老兵は『一般市民』の身分の者達に向き直る。
「光が青色だった方は、そのままお待ちください。部下が参ります。」
そう言い、『赤い光の者達』を別室へ連れていく。
間もなく部下らしき兵士達がやって来る。
「お待たせいたしました、『一般市民』の身分の皆様。我が国での生活をお教えいたします。当面の生活につきましてもお話いたしますので、どうかご安心を。」
兵士達は『一般市民』にその場にある椅子に座ってもらい、パンフレットを渡す。
「では説明を始めます。最初に___」
「あの、すみません。」
説明の前に、一人の男性が手を上げた。
「先の『赤い光の方達』は、どうなるのですか? どの身分なのですか?」
兵士は静かに答える。
「後に身分制度のお話で答えさせて頂きますが、彼らはこの国で一番下層の身分の者達でございます。」
その言葉に、兵士以外に言葉を発せる者はいなかった。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『新規住民』の入国時の様子をお届けしました。
そしてここで『身分制度』というものが『生前の行いによって決まる』事も分かったかと思います。
次回はクリスタルとルーグの視察の様子から、『身分制度』にピックアップしてをお届けします。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!