ルーグのストレス解消法
旅から帰って来たクリスタルとルーグ。
立て込んでいた仕事を片づけていると、ルーグに限界が・・・。
クリスタルとルーグが帰国し、約1週間。
「あー・・・・、めんど・・・・。」
「一体誰のせいだと思ってんだよ・・・・!」
二人は溜まっていた山の様な書類仕事を片づけていた。
机にこれでもかと積まれていた書類は殆ど片づけられてはいるものの、まだ少し残っている。
室内にはインクと紙の独特の匂いがする。
クリスタルが羽ペンを置き、少しまくり上げていた袖を戻す。
「もう今日は止めだ。仕事が捗らない。」
「お前、本当になぁ・・・・。だが、確かにそろそろ俺も休みたい。」
卓上ランプの明かりを頼りに時計を見れば、時刻は21時。
誰も部下はおらず、二人がいつも食事を取っている時間はとうに過ぎている。
「軽食食べて、手早く風呂に入って寝るか。」
「クリスタル、俺寝る前に『ストレス解消』したいんだが・・・・。」
クリスタルがルーグをよく見れば、彼の顔は心なしかげんなりとしている。
これにはクリスタルも少々驚く。
「・・・・珍しいな。お前、顔にまで疲労出てるぞ?」
「だから、一体誰のせいだと・・・・!」
「悪かったって。だが、『ストレス解消』より先に寝たらどうだ? 明日は今日より仕事は少なくなるだろうし。」
クリスタルが珍しく素直に謝りルーグの体調を気遣うが、彼は首を横に振る。
「いや、このままだと寝れなさそうでな。少しストレス何とかしないと、明日が辛い。」
「俺だけ先に寝ると、護衛がいないしな。」
腕を組み少し悩むクリスタル。
自身は正直寝たいが、相棒がここまで訴えるのは、本当に彼が限界である証拠である。
「なら、お前が『ストレス解消』している間、俺は同じ部屋で少し寝ておく。ストレス解消出来たら、俺をベッドに運んでくれ。」
「すまないな、助かる。ソファで寝ててくれ。」
「この際仕方ない。」
二人は仕事を切り上げ、まずは軽食を取るため食堂に向かった。
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寝る準備をした後、二人がいる場所は寝室の横にある『ルーグの作業部屋』。
彼が趣味である『裁縫』をしている部屋だ。
『裁縫』と言っても、かなりハイレベルなものである。
クリスタルは部屋にあるソファで横になって目をつぶっている。
ルーグは袖をまくり、作業を始める。
「さて、まずは糸作りからするか。確かまだ素材はあったはずだしな・・・・。」
自国の特産品の動物の毛を倉庫から取り出し、設置している糸車の前に座って白い糸をつむぐ。
部屋にカラカラと糸車の音が鳴り響く。
それ以外には二人の呼吸音だけしか聞こえない。
時間が経ち、糸車の音が止んだ。
「・・・・これで糸は足りるかな。次は布作りか。」
ルーグは出来上がった糸の山を持ち、今度は機織り機の前に座る。
糸を手早く機織り機で布にしていく。
バタン、バタン、と定期的な音が響く。
それがまたクリスタルの眠気を誘う。
「ねむ・・・・。」
「寝てていいからな。」
ルーグは作業の手を止めず、会話とも言えない会話をして機織りに集中する。
程なくして、ソファの方向から寝息が聞こえてくる。
クリスタルの方を見れば、案の定寝ている。
彼女に自身の上着をかけ、ルーグは再び作業を再開する。
護衛の為、今度はあまり集中しない。
バタン、バタン、バタン、___
30分程経った頃。
そろそろ彼も限界がき始めていた。
ルーグはあくびを一つして、クリスタルを横抱きにする。
そしてそのまま寝室に運び、そのままベッドに寝かせる。
そして自身もベッドに潜り込む。
「次のドレスのデザイン、どうしようか・・・・。」
そんな事を呟き、考え、次第にルーグも寝息を立て始めた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回はルーグの趣味が『裁縫』である事がわかるお話でした。
度々ストーリーに『ドレスがルーグのお手製』である事は書いていましたが、糸から作る事までは書いておりませんでしたので、ここで紹介させて頂きました。
次回は『死者の国』であるこの国への、『死者達』の入国時の様子をお届けします。
また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!