迷子の帰還
襲い掛かって来た『バーニングドラゴン』を元の世界に帰すことに。
クリスタルは『バーニングドラゴンの元の世界は何処か』探し始めている・・・。
『バーニングドラゴン』が居た元の世界を『空間管理』で調べるクリスタル。
本人から元の世界の話を聞くために、甲板に出たまま情報を元に調べを始めている。
『バーニングドラゴン』は戦艦と並列して飛び、自身の世界の情報を話す。
「本来火山地帯にいる『バーニングドラゴン』が、ただの乾燥地帯に居たんだな・・・・。これは手かがりになるかもな。食事は何を食べていた?」
〈『ボエダ』を狩って食べていたな。〉
「『ボエダ』? 見た目はどんな生き物だ?」
〈足が6本あって、角が生えている。こげ茶色の硬い毛皮をしている。〉
「わかった。調べてみよう。少し待て。」
外で調べ物をしていると、クリスタルにガスマスクが差し出された。
差出人はルーグだ。
彼もガスマスクをつけている。
「艦長から差し入れ。『ドラゴンを止めてくれたお礼』だそうだ。」
「そうか、そりゃどうも。」
ルーグは並走している『バーニングドラゴン』を一瞥し、クリスタルに問う。
「何でコイツまだいるんだ? 何か事情でも?」
「『依頼』だ。コイツを元の世界へ帰す。迷子でこの世界へ来ちまったから、帰せばこの戦艦にもう問題は起きないだろう。」
クリスタルから事情を聴き、ルーグは何度か納得するかの様に頷く。
「そういう事か。艦長、というより艦内が『何事か』ってざわついていてな。俺は事情を話して鎮静化をするから、そっちはそっちで調べものを頼む。」
「任せたぞ。」
そのままクリスタルは調べ物を進め、ルーグは艦内に戻る。
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調べ物を始め、1時間ほど経った頃。
とうとう成果が出始めた。
「・・・・これか? N200040-AK47惑星。乾燥地帯で『ボエダ』らしきモノも多く生息してる。『バーニングドラゴン』も数多く存在しているな。」
〈本当か!? 違っていてもいいから、連れて行ってくれないか!?〉
『バーニングドラゴン』の表情が明るくなり、喜びが隠しきれていない。
尻尾をブンブンと振り回している。
クリスタルが「尻尾は振り回すな」と釘を刺す。
「世界が違っていても環境は近いから、その近辺の惑星の可能性もある。希望はあるだろうな。」
そんな話をしていると、ルーグがやって来る。
手には自分たちの荷物。
「調べはついたか? 一応、何時でも出立できるように荷物だけ持って来た。艦内の鎮静化は出来ている。」
「ナイスタイミング! 丁度それらしき場所見つけたわ。」
「それは上々。ガスマスク返してくるか。」
クリスタルからガスマスクを預かり、ルーグは一度艦内に戻り、また甲板に出てくる。
少しガスにむせているようだ。
「それじゃあ、今からでも向かうか。 バーニングドラゴン、お前の背中に乗せて貰うぞ。」
〈それは構わない。帰られるなら、協力しなければ。〉
「いい心がけだ。あ、興奮して炎は出すなよ? 俺フリーズドラゴンだから。」
〈・・・・善処はしよう。〉
クリスタルとルーグが『バーニングドラゴン』に飛び乗る。
案の定、ただ鱗と接しているだけで熱く、クリスタルは胸元を開けて熱を逃がそうとしている。
「熱い。体温下げろ。」
「無茶言うな! ドラゴン、コイツが我儘言って悪いな。」
〈体温を下げるのは無理だが、『フリーズドラゴン』という種的にこの体温は厳しいのだろうな。早く出立をしよう。〉
汗だくになっているクリスタルが、遠隔で大きな『空間の切れ込み』を入れる。
不思議な現象に『バーニングドラゴン』は目を丸くしている。
「迷子のドラゴンさんよ、アレの中に突っ込め。レッツゴー!」
〈何アレ・・・・。〉
「まぁ『空間移動魔法』みたいなものだ。」
〈それにしては奇怪な・・・・。だが、アレに入れば帰られるのだろう?〉
「そうそう。いいから行った行った!」
〈・・・・乱暴な。〉
一呼吸し覚悟を決めた『バーニングドラゴン』は、『空間の切れ込み』に突入する。
そして二人と『バーニングドラゴン』が、このガスの惑星から旅立って行った。
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〈本当にありがとうございました! うちの子を帰してくれて、感謝の言葉もありません!〉
「いえ、そういう『依頼』だったので。」
「テンション上がって服燃やされたがな。」
クリスタルとルーグは、何度も頭を下げる『バーニングドラゴンの親』にそう言う。
ルーグは『ドラゴンの言語翻訳』の魔法で何とか会話をしている。
移動先の惑星は、『バーニングドラゴン』の故郷の惑星で間違いなかった。
久しぶりの故郷を見た『バーニングドラゴン』が興奮したのは言うまでもないだろう。
そのせいで体温が上がり、周囲の熱が上がり、二人の服が多少焦げたのだが。
「そうそう、『対価』を貰わないとな。今回は『依頼』だったからな。」
〈そうですね・・・・、何かご希望はありますでしょうか?〉
『バーニングドラゴンの親』は首を傾げてそう質問する。
クリスタルは「そうだな、」と少し悩み、答える。
「では『自然に抜けた鱗』を幾つか貰おう。今生えている鱗では『対価が大きすぎる』からな。生え変わりで抜けた鱗をくれ。」
〈私ので良ければ、5枚ほどございます。小さ目な鱗ですが・・・・。〉
「じゃあそれをくれ。あまり大きい物だと運ぶのが大変だから、小さいので助かる。」
〈ありがとうございます。ではこちらを。〉
人間大の大きさの、赤が美しい鱗を5つ二人は受け取る。
『受け取る』と言うより『目の前に置いてもらった』が正しいが。
「サンキュー。『対価』は確かに貰ったぞ。」
「もう迷子にならないようにな。」
〈気を付けます。今回は本当にありがとうございました!〉
〈私からもお礼を。ありがとうございました・・・!〉
二人は自宅へ戻っていく親子を見送る。
そして目の前に置かれた、人間サイズの5枚の鱗を見る。
鱗だけとはいえ、相当の熱を放っており、こちらにも熱が伝わってくる。
「クリスタル、これ城に帰って保管しないか? 旅しつつコレ持っていくのは無理だろう。」
「そうだな。それに結構旅に疲れたし、帰るか。」
クリスタルは再び『空間の切れ込み』を入れ、二人で空間の先の倉庫へと運び入れる。
そしてそのまま、二人は城へ戻る事にした。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は迷子のバーニングドラゴンを送還するだけのお話でした。
ドラゴンが無事に帰る事が出来て何よりです。
次回からはまた本編が進みます。
国へ帰った後の二人の様子をお届けします。
また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!