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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
SS 『とある世界』での旅 その2
47/58

『主人公』とは?

クリスタルとルーグが去った後の世界。

『転生者』が集まっている世界は、どうなったのか・・・。

 クリスタルとルーグが世界を出立して数か月後。

『転生者』達の世界は、生き物の姿が殆ど見えない世界になっていた。


荒れ果て、もう植物の育たない畑。

骨だけしかない、生き物の痕跡。

瓦礫の山と化した、ギルドの街。

数多の防具や武器の残骸。

底の見えない、穴だらけの大地。

常に汚れた雨しか降らない、黒い空。


 以前の様な人々や動物の生き生きとした様子は見る影もない。

少しばかり生き残った動物は僅かな緑が残る『森だった林』で餌を争っている。

同じく残っている人間は、僅かに残った民家に身を寄せ合って暮らしている。


「ねぇ、きょうはごはん、たべられるかな?」

「ごめんなさい・・・・。今日もお水だけで我慢してね・・・・。」

「『転生者』なんていなければ、こんなに荒廃しなかったのに。」

「彼らには恩も確かにある。だが『主人公』だか何だかを決めるだけの為に、何故ここまでの争いを行ったんだ・・・・!」

「あんな奴らがいなければ、こんな生活をしなくとも良かったのに。」

「いなければ。」


「「「『転生者』なぞ、いなければ良かったのに。」」」


 次第に『転生者』は迫害されていった。

『荒廃させた責任を取れ』と。

 しかし誰も『世界を修復する責任は、自分にはないし不可能だ』と責を押し付け合う。

そして食糧難のために『転生者』達はその力で住民を脅し、食料を奪っていく。

それを見て『転生者』としての評判を落としていく。


 最悪の悪循環が出来上がってしまっていた。

_________


 ある日。

緑すら完全に無くなった世界。

『転生者』は皆、自ら達が荒した世界を見捨て、何処か他の世界に旅立って行った。


 そんな世界で久しぶりに赤子が生まれた。

周りの住民や親は憐れんだ。

『こんな世界で生まれてしまい、可哀そうだ』

『7歳までは生きれまい』

赤子の将来を想い、憐れんだ。


 しかし赤子は周囲の不安を跳ね除け、何とか育っていった。

そして10歳を迎えた日、子供はある事を言いだした。


「自分は生まれる前の記憶がある。」


そう言ったのだ。

つまり、子供は住民にとって『悪』となった『転生者』であったのだ。

 住民は子供を迫害した。

その子供の親は子供を擁護した。


「この子はたまたま『記憶のある子供』であるだけ。」

「ここに生まれただけで、どうしてこの子は酷い目に合わされるのだ。」


 そう言い、子供と共に親は住民たちの元を去り、新たな居住地を探す旅を始めた。

行けども行けども、居住地は見つからない。

その現状に限界が来た子供が、親に涙ながらに訴えた。


「自分を捨てて、どうか元の居住地に戻って欲しい。」


 それを聞いた親は、それはそれは怒り狂った。

今まで子供に向けた事のないくらいに、親は叱りつける。


「どうしてお前が『転生者』というだけで、私たちがお前を捨てると考えた!!」

「私達自身よりお前の方が大切なのに、どうして大事なお前を捨てられようか!!」


 子供は泣いた。

それはそれは泣いた。

親の確かな愛情を受けて。

子供の目から出た雫が頬を伝い、枯れ果てた地面に零れ落ちる。


 その瞬間、雫が落ちた場所から何かの新芽が芽吹く。

ずっと泣き続ける子供、そこから流れ落ちる雫がさらに緑を広げ始める。

親は大層驚き、子供を泣き止ませ、地面に広がる色を見せる。


「お前の涙から、奇跡が起きたんだ。」

「やっぱりお前は、私達の素晴らしい子。」


 子供の目から、また涙が溢れた。



 その日から、世界は緑に包まれ始めた。

生き物は次第にその数を増やし、子供と親を迫害した住民は手のひらを変えて歓迎し喜んだ。


「この子こそ、真の『主人公』だ」と。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


今回は二人が去ってからの世界の様子でした。

『主人公』を求めた者は何も得られず、そうではなかった者は『主人公』を得られました。

きっと『主人公』は、なるべくしてなる存在なのでしょう。


次回はある世界で生活する戦艦の集団の様子をお届けします。



また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。

感想・レビューもお待ちしております!


改めて、読んで頂きありがとうございました!

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